第16話 ゲーム部始動です!


「先輩!先輩いますか!」

「いる。いるからもう少し落ち着いてくれ。目立ちすぎだアホ」


 授業を終えSTも終わった直後、廊下からやけにハイテンションな伊織の声が響き俺は思わずそう返していた。ほらみろ、クラスメイトが何事かと注目してるだろうが。俺は目立つのは好きじゃないんだよ。

 というか、涼太は止めろ。「毎日学校に来て大勢を前にしても声を出せるようになるなんて...成長したなぁ」じゃないんだよっ。

 いや、そうなる気持ちが全く分からないわけではないが...だとしてもである。


「荷物は荷物の準備は終わりましたか!? 終わったら早く行きますよ!」

「終わってない、終わってないから自分から聞いといて返事を聞かずに無理やり連れて行こうとするのはやめてくれ!」


 とまぁ、伊織とそんなやり取りをしつつも俺はなんとか荷物を支度すると、伊織に引っ張られるようにして教室を出るのだった。

 ちなみにここ3日間くらいで伊織が教室に出入りするのには見慣れてきた様子のクラスメイト達だったが、伊織のこの異常なテンションには面を食らったらしくそのせいか俺はとてつもなく注目を浴びながら出たわけだが...まぁ、最悪である。


「なにをちんたらしてるんですか。早く行きますよ、ホラ」

「俺、場所知らないから伊織の後ろ歩いてついていくしかないんだが...。というか、今更なんだがよく本当に通ったな、ゲーム部なんて部活」

「そりゃあ、この伊織が直々に先生に頼みましたからね。伊織は先輩と違ってテストの点もよく優等生ですから」


 すると自慢げにそんなことを言う伊織。


「いや、優等生だけはないだろっ。学校来ずにゲームして、学校来てもゲームしてる奴のことを優等生とは呼ばん」


 しかし、それだけは見逃すことの出来なかった俺は即座にそんなツッコミを入れる。


「いやぁ、それほどでもありませんよ」

「いや、褒めてないから」


 すると何故か少し嬉しそうに鼻をさする伊織。


「まぁ、真面目な話するとですね。正確にはゲーム部じゃなくてゲーム同好会なんですよね。だから部費はおりないです」

「まぁ、だろうな」


 大方予想通りの内容に俺は頷く。普通に考えて2人しかいないしかもゲーム部なんてものは部活動としては認められないだろうな。


「でも、空き教室は部室として使わせて貰えるそうです」

「なるほど」


 それなら伊織がここまでテンション高い理由が分かった。


「まぁ、でも本当は伊織としては放課後は学校全体を部室として、部費は日本の国内予算ぐらい欲しかったですけど」


 しかし、伊織は突然今までのはしゃいでいる様子から一変。不満を吐き出すようにそんなことを言う。


「強欲の塊! というか、そもそも空き教室貸して貰えるだけでも大分運いいんだから」

「いやー、実はその代わりに伊織部活動の時間以外での学校でのゲームダメになっちゃいまして」

「いや、そもそも学校でのゲームは元々許されてないんだが」


 俺は伊織にはそんなことを言いながら心の中で色々と納得していた。学校側からすれば、伊織が学校でゲームを使うことを制限出来るのなら空き教室を貸すくらいどうってことないという判断なんだろう。むしろ学校側からしてみれば願ったり叶ったりというわけだ。


「とはいえ、よくそれでお前も了承したな。てっきりお前ならそれでゲームの時間減るくらいなら部活なんてしないと思ったんだが...なんか理由でもあるのか?

「ま、まぁ、そうですね」


 伊織は俺の言葉に少し頰を赤らめながらはぐらかすようにそんなことを答えた。急に照れてどうしたんだ? こいつ。


「あ、あっ、ちなみにあと2人増えたら一応部活として認められるので他の部活に比べ少量ですが部費もおりるみたいですよ」

「いや、あと2人も入らないから安心しろ」


 あからさまに話を逸らすようにそんなことを言う伊織だが俺は敢えてのってやることにした。...せめすぎると朝みたいな微妙な空気になりそうだからな。


「いや、伊織は大人気なので全校生徒が押しかけてくるはずです」

「そんなことはあり得ないから安心しろ」


 というか、それだと全校生徒が一つの空き教室でゲームをするとかいう地獄絵図になるんだが。


「あっ、着きましたね。この教室です、使っていいのは」


 と、そんなやり取りをしていると伊織がとある教室の前で足を止めた。そして窓から軽く内部を除いた俺は...。


「...へぇ、どこの王室かと見紛うほどに綺麗で美しい所だな」


 と呟いた。


「先輩、現実逃避はやめましょう。先輩のしばらくの活動は部屋の掃除と片付けです」

「先輩の、ってなに!? 伊織、お前もやるんだからな!?」

「じゃあ、早速中入りますよー」

「無視するなっ」


 流石に冗談だとは思うが伊織なら完全に冗談とは言い切れないのが恐ろしい所だ。というか、もし本当にそうなら退部することにしよう。


「一応、ここらへんは多少綺麗でスペースもあるので荷物はここら辺に置いておきますか」

「だな」

「ゲーム同好会ってここですか?」


 扉を開けて中に入った俺と伊織がそんなことを言いながら荷物を置いていると、廊下からどこか聞いたことのあるような気がする声が響いた。

 というか、もしかしてまさかの...。


「「新入部員!?」」


 伊織も同じことを思ったのか横で俺と同時に驚きの声を上げていた。そして俺と伊織はお互いに顔を見合わせると一瞬の静寂の後に頷いた。

 そしてその瞬間、俺と伊織は扉に向かってダッシュするとすぐさま扉を開けた。


「は、はい、こちらゲーム同好会——」

「はい、私は2年の浜崎 雫と言います。ゲーム同好会の見学に来ました。こちらは同じく十六夜 渚」

「はっ?」

「えっ?」


 伊織は緊張の為か相手の顔を見ることなく必死に説明をしようとするが、それどころでなない俺は思わず変な声をあげていた。...まぁ、どうやら変な声をあげたの俺だけじゃないみたいだけど、


「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」


 そして一呼吸置いて俺と渚は顔を見合わせると絶叫するのだった。



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 次回「ゲーム部始動です...?」


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 あと渚のイラストですhttps://kakuyomu.jp/users/KATAIESUOKUOK/news/16817330665375269835

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