第9話 噂の真相〜十六夜 渚の悶絶〜


 三人称視点です。


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「なんでっ、こんなことに....なってるの!」


 学校内で実は十六夜 渚の方が楓に振られたのではないかという噂が流れ、みんなの話題がそれについてもちっきりとなる中、昼放課となり空き教室でお弁当を食べていた当の本人である十六夜 渚は心からの叫びを口に出していた。


「明らかに昨日の渚の発言のせい」


 しかし、そんな渚の絶叫に対し渚の唯一と言っていいほどの友人である浜崎 しずくは、目の前で顔を覆って落ち込む渚に淡々とそう告げた。


「み、身に覚えがないわ」


 すると、しずくの言葉を受けた渚は少し気まずそうに目を逸らした。


「でも、どっかの男子に楓くん?を馬鹿にされてブチ怒ってた」


 だが、雫はそのまま淡々と渚へと追撃をする。


「そ、そんなことあったかしら? というか、私が言うのもなんだけどクラスメイトの名前くらい覚えておきなさいよ。伊藤くんよ」

「本当に渚が言うことではない」

「と、とにかく、おかしいのよ。私が振ったのになんでこんなことになるわけ!?」

「実は私ですら半分それ疑ってるから他の人達が思ってもしょうがない」

「なんでよ!?」


 雫の思いにもよらない発言に渚は驚きを露わにする。まさか友人にすら裏切られるとは思ってもみなかったのだ。


「だって、普通自分が振った相手をちょっと馬鹿にされたからってあそこまで怒らない。というか、渚が怒ることなんてないと思ってたからその時点で驚いたし。それくらい好きなのかと勘ぐってもおかしいことじゃない」

「...す、好きじゃないわよ、もう」

「その妙なはなに?」


 ジト目の雫の口撃を受けてドンドンと追い詰められいく渚。だが、ここで言い負けるわけにはいかずなんとか反論を繰り出そうとする、


「それにっ、怒ったって言っても本当にちょっとだけ」

「...思い出させてあげようか?」


 そして、尚も認めようとしない渚に雫は呆れたようにため息をつくと、そう口にした。


「ちょっ、ごめん。待っ——」


 雫の言葉に慌てた渚だったが止めるにはあまりにも遅すぎた。口を塞ぐ間も無く雫は口を開いた。


「『なんで、楓くんをなにも知らないアナタがそこまで馬鹿に出来るのかしら? 脳ミソ湧いてるの? 普通にブン殴るわよ? いいかしら、1つ聞きなさい。楓くんはね、とても優しいのよっ! 自分自信が醜く見えてしょうがないほど優しいのっ。困ってる人の為なら自分のリスクなんて関係なしに手を差し伸べられるそんな人なの。笑顔も素敵なのよ? 普段あんまり笑わないけど時々フフッて笑った時の横顔が凄く可愛いの! 本当の本当に可愛いのよ!? 私が保証するわ。とーにかく、楓くんのことも一ミリも知りもしないアナタが彼を馬鹿にするのはとても不愉快よ。反吐がでるわ』これのどこがちょっとなの?」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」


 思い出したくもない渚史上1番の黒歴史を堂々と口に出されてしまい、あまりの恥ずかしさからか渚は絶叫すると机へと突っ伏した。

 しかし、雫はそんなレアすぎる渚の様子を見て内心かなり喜んでいた。なにせ、普段の渚と言えば無表情、無表情、無表情。まさに氷の女王という名に恥じぬ姿である。

 そんな彼女がここまで感情を露わにする。それは9年間友人をやってきた雫でさえ、見たことのない光景だったのだ。

 普段からもっと渚の色んな表情がみてみたいと考える彼女にとってみればたまらない瞬間であった。

 最早、雫は「楓くん、ありがとう。本当にありがとう。心の底からありがとう」と楓に心の中で深く感謝する域にまで達していた。


「というか、普通にまだ好きでしょ、楓くんのこと。なんで、別れちゃったの?」

「す、好きじゃないわ! 好きじゃなくなったから別れたのよ」


 ウキウキな雫は更に追い討ちをかけようとそんなことを口にするが、机に突っ伏していた渚がそれだけは否定せねばとなんとか恥ずかしさを我慢し顔を上げると反論を繰り出した。


「無理ありすぎ」

「っっ、そんなことないわよ!」


 ここで折れるわけにはいかない渚は必死に否定する。すると、その瞬間に雫はニコリと微笑んだ。


「じゃあ、私が楓くんに直接聞きに行っても問題ないということ?」

「へっ?」


 雫の言葉に渚の思考は完全停止し思わず間抜けな声が漏れてしまう。


「昼放課だし時間あるから探せばいるはずだからちょっと行ってくる」

「えっ、あっ」


 そして、雫は固まっている渚の返事を聞くことなく笑顔のまま空き教室を去るのだった。




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 次回「元カノの友人に昼飯を誘われた...なんで?」



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