[完結]彼女にこっぴどく振られた俺だけど彼女から好き好きオーラが出すぎて気まずい

タカ 536号機

第1話 彼女にこっぴどく振られまして


「私達、別れましょう」

「はい?」


 ある日の放課後、彼女である十六夜いざよい なぎさに呼び出された俺に告げられたのは思いにもよらない言葉だった。


「えっと、それはどうゆう..」

「...どうゆうもなにもそのままよ。単純に付き合うのをやめましょうってこと」


 しかし、あまりに突然のことに思考が追いつかない俺はなにかしら勘違いしているじゃないかと聞き返そうとするが、俺のそんな淡い期待を渚はあっさりと砕いていった。


「えっ、なんでなんだ? もしかして、俺なんかやらかしたのか!? それとも気に入らないことが...? もしなにかあるなら言ってくれっ。絶対改善して見せるから」


 だが、俺の渚に対する想いはそんな簡単に「はい、そうですか」と割り切れるほど軽くない。俺はどうにかしてまだ渚の彼氏でいられないかと模索する...が。


かえでくん、あなたじゃ無理よ。...正直に言うわね、私本当に好きな人が出来たの。ぶっちゃけ、あなた邪魔だから別れてくれないかしら?」

「そんな...」


 渚の意思は相当固いようでつけいる隙はなく、ついには邪魔とさえ言われてしまった。

 俺の視界はその瞬間に真っ暗に染まってしまう。


「なにか、勘違いしているようだから言っておくけど楓くんと付き合ってあげたのは単なる暇つぶしよ。本命が現れたんだから捨てるのが当たり前と思わない?」


 そしてなにを言っていいのか分からずその場で立ちすくむことしか出来ない俺に、更に追い討ちをかけるように渚からそんな言葉が飛んできていよいよ俺は限界を迎えつつあった。


 俺と渚が付き合い始めたのは1ヶ月前。渚にいわゆる一目惚れをした俺は、無謀とは分かっていたものの当時告白29連続断り、氷の女王とと呼ばれスタイル抜群、整った顔立ち、万能な成績とまさに完で壁な彼女に釣り合わないとは知っていても我慢できず、正面から告白した。

 結果としては、まさかの即オッケー。思いにもよらぬ結果に若干の戸惑いは覚えつつつも、俺は渚と付き合うことが出来たのだ。

 そして思った以上に良好な関係を築くことができ、これから恋人らしいことにもドンドンとチャレンジしていけたらなぁなどと考えていた。...今日、この日、この時までは。


「わ、分かった。別れよう、それでいいんだろ?」

「まぁ、元々楓くんに選択権はないのだけど。...それじゃあね、元カレの楓くん」


 渚の目を見て冗談を言っているわけでもなく本気で言っていることにようやく気がついた俺は、もはや打つ手がないことを悟りやや、やけっぱちな気持ちを含めながらそう口にするが、今までの渚からは考えられない言葉を受けより一層絶望を噛みしめることになる。

 そして、渚はしばらく俺を眺めた後に軽く跳ねるように、スキップをしながら去って行ってしまうのだった。


「....」


 そして1人残された俺はと言えば、その場から動くことが出来ず固まっていた。


 元々、釣り合ってないのは分かっていた。顔、運動、勉強、全て平々凡々な俺に渚はあまりに出来すぎた彼女だった。

 それでも本当に俺でいいのかと渚に尋ねると、少しそっぽを向きながらコクリと頷いてくれた。それがあの時の俺は死ぬほど嬉しかった。

 今にして思えば、俺と渚の付き合い方は他のカップルと比べ薄かったように思う。

 手を握るのは渚からNG出されてたし。

 でも、俺はそれでも良かったんだ。渚と付き合えているという事実だけで嬉しかったのだから。焦ることはないと思っていた。


 でも、恐らく渚にとっては違ったのだ。さっきの渚の言葉が本当なら俺は渚にとって暇つぶし要員でしかない。だから、渚にとっては暇つぶしの男と手を繋ぐ理由がなかった、ということになるのだろう。


 別に考えていなかったわけじゃない。いつか、俺よりなんでも出来て性格のいい奴が現れて渚を奪っていってしまうのではないか、なんて何度も考えたことだ。

 それでも、それでもっ、ここまで残酷な振られ方は想定していなかったので色々な思いが溢れて止まらない。


 分かってる。分かってるんだ。もう、俺は渚の彼氏じゃない。俺もくよくよせずさっさと前を向いて歩き出すべきだって...。

 でも、少しでも渚のことを思い出すと泣きそうになってしまう俺は、しばらくその場から離れられないのだった。







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 次回「振られたことは一瞬で広まってました」


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