第3話 元カノを助けました
「別にいいじゃん誰も連れいないんでしょ? 君、可愛いしさ全然俺たち奢ってあげるから」
「いや、本当に結構です」
一応、近づいては来たものの俺は一体どうするべきなのだろうか? そもそも、渚ああいうのの対処なれてるし加勢しない方がいいまであるんだよなぁ。付き合ってたころはそれで失敗したし。別れたばかりの今なら尚更...。
それに今だって、堂々かつ余裕
そこで俺は渚の体が少し震えていることに気がついた。滅多に表情を表に出さないはずだが今はどこか苦しそうだ。本当にどうしたんだ? 渚の奴...。
「なぁ、もういい加減にしろよっ。誘ってやってんだから、素直に喜んで頷いてろって!」
「っっ!! は、離し——」
「離して貰えますか? その人、俺の彼女なんで」
男の1人が怒鳴り声を上げながら渚に掴みかかったのを見た途端、今までの余計な考えは消し飛び俺の体は自然に動いていた。
「あ゛っ?」
「聞こえなかったですか。その人は俺の彼女だっ、って言ってんですよ俺は!」
まぁ、付け足すなら元だけどな。
「か、楓くん?」
「渚、言いたいことは分かるけど今はこのまま俺の手に掴まってくれ。逃げるぞ」
「ちょっ、待てや!」
俺は強引に渚を手を取るとやはり震えているのか、固まってしまっている渚の体を引っ張り男達から逃げ出した。
そして渚も特に拒否することもなく走ってくれた為、無事逃げ切ることが出来たのだった。
...ちなみに、渚は俺より足が速かったりするので途中からは俺が引っ張られており、最早どっちが助けに来たのか状態だったがまぁいいだろう。いや、やっぱ少し凹むぞ俺。
*
「はぁ、久しぶりにこんな走ったな」
「...」
とまぁ、男達から無事に逃げられたのは良かったのだが、さっきからこの通り渚は無言である。何故か、手で顔を覆って見せてくれないし..本当に渚は大丈夫なのだろうか? さっきからずっと様子がおかしいのだが。
「なぁ、渚——」
「...なんで、なんで助けてくれたのよっ。私、昨日あなたを結構酷い感じで振ったのに」
俺が渚になにかあったのかと聞こうとしたところで渚がようやく口を開いたかと思えば、そんなことを尋ねてきた。
「そりゃあ、普通にあの状況で同じ学校の奴見捨てるわけないだろ。それに俺まだ渚のこと好きだし」
確かに別れてるし、昨日結構酷いこと言われたのは自分でも分かっている。でも、それでもやはり俺は渚のことが好きなのだ。
「...そうなの」
しかし、渚はどうも俺の返事が気に入らなかったのかまたフイッと顔を俺から背けてしまった。
「も、もしかして、さっきの手握ったの怒ってるのか? た、確かに元カレの手に触れられたら嫌かもだけどあの場ではあれしか思いつかなかったんだ。もし、不快に感じたならごめんっ」
「...別に一切気にしてないわ。それに...ありがとうって気持ちしかないから」
「えっ」
俺としては昨日の渚の様子なら「手助けなんていらなかった」くらい言われるかな、と思って覚悟していたのだが予想外の感謝に少し戸惑ってしまう。
「だから! ありがとうって言ってるのっ、分かった?」
「わ、分かった」
すると渚は珍しく声を張り上げそんなことを言うので、俺は即座に頷いた。渚がここまで感情的なの何気に初めて見るような?
「というか、なんか渚顔赤くないか? 大丈夫か?」
それと同時に俺は今の渚の顔が茹でタコもびっくりの真っ赤具合なことに気がついた。
もしかして、今日の様子が色々と変なのもさっき震えてたのも体調不良か?
「だ、大丈夫よ。なんでないわ」
「いや、それにしては赤すぎるような...」
しかし、渚は即座にそれを否定してくる。体調が悪いことくらい隠さなくてもいいと思うのだが。まぁ、渚らしいと言えば渚らしいか。
「ちょっと、心配だから今日だけ家まで送らせてくれないか? 勿論、俺が元カレなのは分かってるけど今の渚を放っておくのは怖い」
とはいえ、心配なことに変わりはないので無理だとは分かりつつも、そう尋ねてみる。
「お、お願いしていいかしら?」
「そうか、じゃあ親御さんに連絡して——って、え?」
最早、断られることを前提として条件を持ち出そうとしていた俺だったが、まさかの了承どころかお願いに変な声を上げてしまう。
「じゃ、じゃあ、そういうことなら」
とまぁ、そんなわけで俺は昨日振られたはずの元カノを家まで送り届けることになるのだった。いや、自分から提案しといてなんだけど本当にどんな状況だよこれ。
ちなみに渚はあの後何故か自分を責めるかのようにうずくまってしばらく動かなかった。
本当に大丈夫なのだろうか? まぁ、多分次はもう関わることないだろうし俺が気にすることでもないか。
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次回「先輩! 慰めに来てあげましたよっ」
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