第4話 先輩! 慰めに来てあげましたよっ


 一昨日に昨日と、色々な疲れる日が続いて迎えた今日。俺がいつものように教室に向かうと...。


「あっ、先輩ようやく来ましたか!」

「...俺、入る教室間違えたっけ?」


 そこには、俺の席にまるで我が物かのごとく居座りピコピコとゲームを弄る後輩であり涼太の妹でもある酒井 伊織いおりの姿があった。こいつ確か最近学校来てなかったはずだが...一体どうしたんだ?



 *



「それで、どうして伊織がいるんだ?」

「そりゃあ、先輩を慰めに来てあげたんですよ」


(ない)胸を張ってフフンと自慢げな様子の伊織。


「...じゃあ、今お前が手に持ってるものはなんだ?」

「あっ、これですか? これはただの3D◯です」

「3D◯かよっ」


 なにをどうしたら学校にさも当然かのように3◯Sを持ってこれるんだ。


「先輩、3D◯をバカにしてないでください。そりゃあ、今の時代はスイッ◯ばっかりですし機能は劣るかもしれません。ですがっ、3D◯には3◯Sの魅力があるとこの伊織は思うわけです。例えば、今回のように外でやる場合にはスイッ◯はでかすぎます。その点、3◯Sはコンパクト! 確かに最新機種もいいですが時には古いものに目を向けてみるのも悪くないと伊織は思いますよ」

「長々と熱弁してるけど争点そこじゃないからな? そもそも、学校にゲーム機を持ってくるなって話だから」


 なにを勘違いしたのか3D◯の魅力を説明し始めた伊織に俺は冷静に指摘を入れる。というか、クラスメイトの奴らも拍手を送るんじゃない。お前ら全員3◯Sの民か?

 こいつがドンドン駄目な子になるだろうがっ!


「はぁ、それならそうと言ってくださいよ。全く、これだから先輩は」

「なんで当たり前のことをわざわざ説明せにゃならないんだよ。というか、涼太。そこでボッーと見てないでなんか言ってやってくれ。こいつお前の妹だろうが」


 俺はさっきから自分の席で俺たちを遠目に眺めている涼太にそんな声をかける。


「伊織が伊織が学校にいる。それだけでお兄ちゃん嬉しいよっ!」

「その妹、今物凄い勢いで俺に迷惑かけてるからな!? そこは兄として止めてくれない?」


 ダメだありゃ。完全にシスコンが発動しちまってやがる。なんか涙ぐんでるし。


「んで、実際のところ本当にどうしたんだ? お前が自発的に学校に来るなんてことなかった気がするんだが」


 大抵は学校に来るとは言っても涼太がなんとか引っ張ってくるといった感じだったからな。今回はそういうわけでもなさそうだし。


「だから、言ってるじゃないですか。先輩を慰めに来てあげたって」

「いや、そんなゲームを弄りながら言われてもな」


 本当にそうなら悪い気がしなくもないが説得力皆無である。


「本当ですって。じゃなきゃ、伊織はわざわざ学校なんて来ませんから」

「その気持ちは嬉しいんだが、普通に学校は来てくれないか?」


 自分から学校に来る唯一の理由が兄の友人が振られたからってそれはうら若き高校1年生としてどうなのだろうか?


「ところで、その彼女さんとはどんな感じで別れたんですか?」

「お前に配慮とかの気持ちはないのか?」


 直球にもほどがある伊織の言葉に俺はそう尋ねてみる。


「そのパラメータはまだ伸ばしてないので」

「もしかして、自分をRPG基準で考えてる? まぁ、いいや。話してやるよ」


 やはり伊織のペースに乗ってはダメだと思い返した俺は余計な口は挟まず話を進めようとする。


「先輩、そんなに伊織に別れ話聞いて欲しかったんですか? しょうがないなぁ〜」

「本日の受付は終了いたしました。これ以降は一切対応の方は受け付けませんのでご了承のほどよろしくお願いします」

「嘘です、じょ、冗談ですから。話してください。この通りですからっ」


 俺のセリフに慌てたのか軽くだが頭を下げる伊織。


「あの伊織が頭を下げただと!?」

「先輩、それは失礼すぎますよ!? 伊織をなんだと思ってるんですかっ」


 そして俺はそのあり得なすぎる行動に一種の感動すら覚えていた。伊織がそれに対し、なにやら言っていたが無視。だってリアルに見たことなかったからな。


「それで話を戻すとだな、その相手の方に本当に好きな人が出来たって言われて振られたって感じだ」

「...へぇ〜」


 すると話を聞いた伊織は不機嫌さを露わにした。

 珍しいな、伊織が不機嫌なるのなんてゲームで負けた時と嫌いなものを食べる時と親に怒られた時くらいなのに...いや、やっぱそんなに珍しくなかったかも。


「じゃあ、そんな感じで別れたならもう先輩は一度もその人とは会ってないって感じですか?」

「えっ、あっいや。昨日は一緒に帰った」

「なんでそうなるんですかっ!? えっ、別れたんですよね? しかも、そんなこと言われて」

「お、落ち着け。確かにそうだけど理由があってだな...」


 途端に前のめりになって勢いよく話す伊織に気圧されつつ、俺はなんとか説明をし伊織をなんとか自分のクラスへと帰らせるのだった。あ、朝から疲れた。





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 次回「またも元カノとの望まぬ邂逅...運命さん、もしかして俺のこと嫌い?」


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