第5話 またも元カノとの望まぬ邂逅...運命さん、もしかして俺のこと嫌い?
「おーい、今日は俺も部活ないし一緒に帰らないか? 色々と話したいこともあるし..な?」
今日はさながら某初代デュエルマスターの主人公のような髪型の涼太(サッカー部)が、STが終わるなりそんなことを言いながらこちらへと駆け寄ってきた。
「悪いな、今日は
「そっか、じゃあちょっと残念だけどまた明日な!」
「あぁ、また明日」
俺の返事を聞いた涼太は一瞬落ち込むような態度を見せたものの、すぐに顔をあげると元気よく手を振って教室から出て行ってしまった。
一日の始まりから終わりまでずっと元気なんだが、あいつの体力ゲージは一体どうなってるんだ? いや、ダメだダメだ。
今日は伊織に会ったせいか思考がどうもゲーム寄りになっている。
もし、こんなこと他人と話してる時に出たりなんかしたら変なやつと思われる可能性があるな。意識して抑えないと。
俺はといえばそんなことを考えながら、招集のかかっている場所へと向かうのだった。
よっし、少したるさはあるけどここは気合い入れてちゃちゃっと終わらせますか!
*
「...」
「...」
俺が到着するとそこには1人の女子生徒が立っていた。いや、別に女子生徒なことは問題ではない。普通に会話は出来るし。だが、問題なのは....。
「...赤田くん、私呪われてるのかしら?」
「奇遇だな、俺もそうとしか思えなくなってきた」
なんで、なんでっ、よりにもよって渚なんだよおおおぉぉぉ。
いや、というかこれは普通におかしいだろ。これで3回目となる清掃委員としての仕事だが、これまでは里田さんという同じクラスのもう1人の清掃委員とペアを組んでやっていたはずだ。
なんで、急に渚になってるんだよ。そりゃあ、まだ好きだし嬉しい気持ちもなくはないけど渚からしたら凄い嫌だろうし、俺だって嬉しい以上に気まずいからっ。
「いやぁ、赤田くんと里田さんには本当に申し訳ないと思ってるんだけどね、ちょっと今日ね
すると、俺と渚の隣に立っていた清掃委員の担当である間宮先生が申し訳なそうにそんな補足をしてくれた。
「は、はぁ」
しかし、渚が誰かと揉める場面をどうやっても想像出来ない俺は曖昧に相槌をうつしかない。ただ、渚がなにも口出ししないことからにわかには信じがたいが本当なのだろう。
いや、本当に信じられないけど。別れる前なら多分全力で理由を聞いていた案件だ。
「まっ、ペアが変わっただけで特に活動内容に支障はないと思うから今日もよろしくね、これゴミ袋。やる場所は十六夜さんに伝えてあるから。じゃあ!」
「えっ、あっ...」
そして間宮先生はそんなことを言うと、余程忙しかったのか一瞬でどこかへと走っていってしまうのだった。
「えっと、よ、よろしく?」
「...よろしく」
いや、今のところ支障しかなさそうだけど!? 大丈夫なんだろうか、これ。というか、運命さん実は俺のこと大嫌いだろ。
まぁ、それを言うなら渚のことも大嫌いなのかもしれないけど。...多分、内心俺以上に嫌がってるだろうし。
*
「...はぁ」
清掃をする場所へと移動中、俺の前を行く渚は何度もため息をついては肩を落としていた。表情こそ見えないものの余程憂鬱なのが俺にも伝わってくる。
まぁ、普通に考えたら振ったばかりの元カレと2日続けて会うってどんな拷問だよ、って俺が渚視点なら思うしな。
だが、ここまで露骨に避けられると流石に傷つく。少しでも会話がないと俺のメンタルが持ちそうにない。
もう、カレカノに戻ることは出来ないのは分かっているが友達くらいにはどうにかして戻れないものだろうか?
「な、なぁ、渚——」
「っ、近寄らない——あっ」
「危なっ——」
中庭を歩いていた時、俺がこの重い空気感に耐えきれなくなり渚に話しかけようとした瞬間、俺から離れようと走り出した渚だったがバランスを崩してしまう。慌てて渚の手を掴んで持ち上げようとする俺だったが、
「あっ」
渚の勢いが良すぎた為か、はたまた俺の筋力がなさすぎた為か、渚を支えきれず2人一緒地面に倒れこんでしまった。
「いてて、渚大丈——」
「...あっ、あぅ」
思った以上の衝撃に体を痛めつつも目を開けて、渚の無事を心配した俺であった目の前には近すぎるどころではない距離感に真っ赤に染まった渚の顔があり、状況を理解出来ずに俺は固まってしまう。
落ち着いて考えろ。俺と渚はさっき倒れたはず...それでどうしたら渚の顔がこんな近くにあるんだ?
そして、そこで俺はようやく気がついた。俺が現在、渚を半ば押し倒しているような状態にあることに...。
「えっ、あっいやっ、本当にごめん。すぐ
慌てて俺はとりあえずその場から離れようとするが、
「...あれ?」
何故か、動くことが出来ない。不思議に思い、よく見ると俺の手がしっかりと渚の手によって押さえられていることに気がついた。...恐らく、倒れた際にそうなったのだろう。
「な、渚、悪いけどその手をどけてくれないと離れられない...」
「...」
なんとか理性を保つ為にも俺は一刻も早く離れるべく、渚にそう告げるが渚は黙り込むばかりで一向に手をどけてくれる気配はない。
そればかりか、むしろより一層力が入っているようにさえ感じられるのだった。
なんで!? 本当にこれどうなってんの!?
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次回「元カノの暴走が止まりません」
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