第18話 早速、揉めてます
「あ、あのー、掃除はいいですけど...自己紹介とかってどうしますか?」
「いいね。17時までやったら休憩の意味あいも含めて各々自己紹介をしよう」
あれから黙々と掃除をしていた俺たちに伊織がそんなことを言うと、浜崎さんもそれにウンウンと頷くとそれに続いた。対して、黙り込むしかない俺と渚。するとお互いに目と目が合っていることに気がつき慌てて目を逸らす。土曜日の件もあってか本当に気まずい。俺はどう接したらいいんだよっ。
しかも、渚の方もなんか前より俺を避けてる感じあるし...やっぱり無理あるって!
結果、俺は部活は始まってまだ30分だというのに早くも限界を迎えていた。
渚はどこか恨めしげに空を見上げているが、部活の話を安易に受けた俺が悪かったのか? いや、でもこうなるなんて予想出来るはずもないし...。
そんなこんなで俺が色々と複雑な思いを抱えて掃除をしているといつの間にか17時になっており、自己紹介の時間が幕を下ろすのだった。いや、普通に考えて絶対気まずいだろ!? ...まぁ、普通にこれから活動していくって考えたら当たり前なのは理解している、理解はしているが!ってやつである。
*
「い、1年 酒井 伊織って言います。趣味はゲーム。好きな食べ物はポーション。好きな偉人の言葉は「引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ」です。最近ハマっていることは...先輩で遊ぶ——先輩と遊ぶことです! よろしくお願いします」
「パチパチパチ」
ついに自己紹介が始まり、一応部長という立場もあってか一番手を務めた伊織だったが早速色々と変だった。特に最後の件に関しては緊張の為に噛んでしまったと信じたいところだ。というか、浜崎さん真面目な顔して口頭で「パチパチパチ」言ってるんだけど。
さっきから少し思ってたけど、この人もちょっと変わってる人か? てかなんか、俺の周りこんな人ばっかじゃない!?
「じゃあ、次は副部長である私が」
「副部長は先輩のですよっ!」
そして伊織の自己紹介が終わると、浜崎さんがそんなことを言いながら手を上げた。
「うん、私は伊織ちゃんの先輩。よってなにも間違いはない」
「そ、そういことじゃなくてですね...」
「さっきの発言は取り消せない。つまり、私を副部長と認めなければ伊織ちゃんは大大大嘘つきということになる」
「なっ!? 伊織は嘘つきじゃないですっ。なにがあっても嘘だけはつかないです」
「じゃあ、私が副部長ということで」
「ぅぅぅ」
そして浜崎さんの言葉に正面から噛み付いでいった伊織だったが、浜崎さんに軽く捻られていた。やっぱりなんかこの人、口論強くない?
「せ、先輩の大事な副部長が伊織の...伊織のせいでっ」
「いや、元々そんなその役職に俺なんの思い入れないから。そんな気にしなくていいぞ?」
そして何故かオーバーにも程があるほど落ち込む伊織に俺は一応フォローを入れる。
こいつ、本気で俺が副部長になりたくてこの部活入ったとでも思ってたのか...?
伊織の中で俺どんだけ子供なイメージなんだよ。
「ってことで、どうも2年の浜崎 雫です。ゲーム部の副部長です。よろしく。じゃあ、次どうぞ」
「よろしく」
「み、短くないですか!?」
俺が内心そんなことを思っていると、突然浜崎さんが思い出しかのようにそんなことを言う。い、今ので自己紹介終わりなのか...実はこの人伊織より変わり者だったりしない?
なんか伊織も
まさかここまで短いのは予想外だがこれは有り難いかもしれない。
「2年、楓と言う。趣味は色々。よろしく」
なにせ、俺も短く済ませることが出来るからな。なるべく渚とは目を合わせないようにしてちゃっちゃっとこんなイベント終わらせてしまおう。
「楓くん、それは短すぎ」
「浜崎さんがそれを言うのか!?」
と思ったのだが、まさかのここで浜崎さんからダメ出しをくらってしまう。いや、まだ伊織とかが言うならなら分かるんだけどな。
「まぁ、いいや。最後は渚の番」
思ったよりもアッサリと引き下がった浜崎さんは次は渚へと順番を回した。心なしか横にいる伊織の目が急に鋭くなった気がする。
そういや、何故か伊織妙に渚のこと嫌ってる感じあったな。基本的に関わりなんてなかったはずなんだが...案外、俺と渚より伊織と渚の方が危険なのかもしれない。考えすぎか?
「私は2年 十六夜 渚。趣味はランニング、好きな食べ物はハンバーグかしら。そして最後に一言だけ...楓くんとは一切関わるつもりはないわ。例え用事があっても話しかけてくるのもやめて頂戴...気分が悪くなるわ」
と、俺がそんな不安を抱いていると渚は俺とは逆方向を向きながら自己紹介をし終えた。
「せ、先輩になんてこと言うんですか!? そもそも、自分勝手な理由で振っておいてなんでそんな偉そうなんですかっ。今すぐに先輩に謝ってください。そしてすぐに今の言葉を訂正してください」
が、伊織が渚の言葉に噛み付くと見たことのない怒気を孕んだ形相で渚に詰め寄る。
「いえ、訂正するつもりはないわ」
「こ、このっ」
しかし、渚は一切表情変えることなくそう言い切った為に伊織が更に怒りを増したような表情となり、現場にはまさに一触触発といった雰囲気が流れるのだった。
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次回「先輩は黙っていてくださいっ」
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