第2話 電車の中

電車は風景を描くようにゆっくりと駅を出発し、窓の外には田舎の美しい風景が一面に広がっていた。

ミナとカイは向かい合わせに座り、それぞれの世界にふけっていた。


ミナの目は窓の外を見つめ、心の中では激しい戦いが繰り広げられていた。

剣術の全国大会で戦った時のように、心臓がドキドキするような戦いだ。

それは現実の戦いではなく、ミナが大好きなアニメキャラクターとの想像上の戦いだった。

ミナは、妄想癖もうそうへきがあるのだ。


一方、カイは読書に熱中していた。眼前がんぜんにはミステリー小説の世界が広がり、そこには知的な解決法や科学的な手法がりばめられていた。


カイはミナの視線が窓の外ではなく、遠くを見つめていることに気づいた。


「ミナ、またアニメのキャラと対戦してるの?」


カイの問いに、ミナは現実に戻り、にっこりと笑った。


「うん、そう。新しい技を考えてたんだ。

 あの剣道の全国大会で戦った時のように、心臓がバクバクするけど面白いよ。」


カイはミナの想像力に感心しながら、うなずいた。

カイは笑顔を浮かべながら言った。

「それはすごいね。

 ミナが、全国大会で準優勝できたのもそのおかげかな?

 僕にはそんな想像力がないよ。」


ミナはカイに向かって自信満々に微笑んだ。

「それなら、カイも一度私の妄想の世界に一緒に来てみる?

 新しい視点が見えるかもよ。」


カイは少し驚きながらも、興味津々きょうみしんしんに頷いた。


「それは面白そうだね。

 今度ミナの妄想の世界をのぞきにいこう。」


そして、電車は二人をゆっくりとミナのおじいさんの家へと運んで行った。

その一日への期待感と興奮が二人の間にただよっていた。

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