第12話 王女の失踪
城門をくぐったミナとカイ。
門を抜けると城内は、周りに広がる不思議な静けさに戸惑いを感じていた。
「静かね。」
ミナは横目でカイを見ながら小さくつぶやく。
まるで時間が止まったかのような静けさが、二人の心をざわつかせていた。
庭園の中央には、美しい噴水がある。
そしてそのさらに奥の方、一人の女性の姿に気づいたミナは、カイに目配せをした。
「あれ、見て、カイ。あそこに人がいるよ。話しかけてみようか?」
カイはしばらく黙って女性を見つめ、それからゆっくりと頷いた。
「うん、そうだね。でも、気をつけよう。何が起こるかわからない。」
カイの言葉にミナは笑って頷き、二人はゆっくりとその女性に近づいていった。
その女性の背後からそっと声をかけるミナ。
「す、すみません・・・。」
女性は驚くことなく、ゆっくりと振り返る。
「こんにちは、お二人さん。」
にっこりと微笑んで、女性は答えてくれた。
「本当は、ここに子供は入ってはいけないのだけれども・・・。
門番も出払っているから仕方ないか・・・。」
女性は、小さくつぶやいた。
「どうしたの?何かお困りごとでも?」
女性は微笑み、その声は優しく穏やかだった。
戸惑いつつも、ミナは女性に向かって素直な疑問を口にする。
「えっと、ここってお城の中ですよね?
でも、なんでこんなに誰もいないんですか?」
ミナの素朴な質問に、女性は少し考えた後、ゆっくりと答え始めた。
「それはね、レナ王女が行方不明で、
お城のみんなは、レナ王女を探しに行っているのよ。」
女性が説明すると、二人の表情は驚きで硬くなった。
「レナ王女がいなくなって、もう三日も経つのよ。」
「あっ、ありがとうございます。お、お忙しいところ失礼しました。」
ミナは、緊張しつつお礼を言った。
そして、女性の目が二人のアクセサリーに留まった。
「ちょっと待って。」
女性は、少し考え込んだ後、二人に向かって話し始めた。
「申し遅れました。
私の名前は、エレニア。
そして、ここは、リブスティア王国のリブスティア城、近くに王都の街があるわ。
実は、あなたたちに頼みたいことがあるの。」
エレニアの言葉に、二人は緊張した顔でエレニアを見つめ、そして続けた。
「街にある冒険者ギルドへ、手紙を届けてもらえないかしら?」
「手紙を?でも、私たち、ただの子供ですよ?」
ミナが問い返した。
「心配しないで、危険なことはお願いしないわ。
それに、あなたたちなら、きっと大丈夫。」
エレニアは微笑み、近くのベンチを指差した。
「私が手紙を準備する間、ここで待っていてね。」
そしてエレニアは、二人を残して去っていった。
二人は、とまどいながらもエレニアが戻ってくるのを待つことにした。
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