第49話 レッドの家

レッド、ミナ、カイは、下りの運河を通って、グランドフェルズから王都へ向かっていた。

ミナは目を輝かせ、船の揺れを楽しそうに感じていた。


「こんなに早く王都に来られるなんて!」

とミナは声をあげる。カイもミナに続いて頷いた。


レッドは前を見つめながら、話した。

「下りだからな。

 逆に運河でも、王都からグランドフェルズへ行く時はもっと時間がかかるぞ。

 グランドフェルズへ行く時は徒歩だったからな。

 それと比べれば、やっぱり運河を使った方が早いがな。」


三人は、運河を伝って王都にたどり着いた。

運河は、王都の中へと繋がっているのだ。

それだけ、ドワーフの都市グランドフェルズと王都の関係には、深い繋がりがあることを示していた。

グランドフェルズは、このリブスティア王国にとっても重要な都市なのだ。


レッドは、そんな二人を見て、笑いながら次の目的地を話す。

「まずは冒険者ギルドへ行くぞ。」

レッドは、ミナとカイが成長していること、そして、この二人はもっと大きな可能性があることを感じていた。このまま冒険者ランクEから這い上がって来るにはあまりにも時間がもったいないことを感じていた。


冒険者ギルドの門をくぐり、三人は内部へと足を踏み入れた。

冒険者ギルド内では多くの冒険者たちが集まり、情報を交換したり、酒を飲んだりしていた。


「久しぶりね。」

ミナは、つぶやく。

ミナとカイは、ギルドの中を見渡す。

以前と変わらず様々な種族や職業の冒険者たちがいる。

ミナとカイは、まだ、冒険者登録してまだ何の依頼も達成していない。

つまり何の成果も出していないのだ。

もうこちらの世界に来てずいぶん経つが、グランドフェルズにいた時間の方が長い。

新しい武器も手に入れた。

そして、これからが、本当の冒険が始まると二人は感じていた。


その中に混じり、レッドは「相談窓口」にいる女性、ルーシーへと書類の束を渡した。


「これを審査してくれ。」

とレッド頼む。これは、レッドが、グランドフェルズでミナとカイが成し遂げてきたものをまとめたものだ。

審査が通れば、冒険者ランクが上がることがある。

それもまた、上位の冒険者であるレッドの役割であった。

埋もれる若い才能を引き出し、それを正しく導くことだ。


ルーシーは微笑みながら

「かしこまりました。お預かりします。」

と言って、書類を奥の方へ持っていった。



レッドはミナとカイに向かって言った。

「うちへ来るか?」

と誘った。

カイは、レッドの家がどんな場所なのかに興味津々だった。

それに対し、ミナはただ単純に楽しみにしている様子だった。


レッドは二人を自宅へと招き入れた。


ミナとカイは、レッドの家の前に立った。

それは、高い古木に囲まれた大きな屋敷だった。

レッドは大きな扉を開け、二人を家に招き入れた。

内部には、誰もいなかった。

しかし、その空間に広がる空気は新鮮で、ここに誰かが住んでいることを感じさせる温かさがあった。

部屋の中は綺麗に片付けられており、家具も壁も隅々まで埃一つなく清潔に保たれていた。


レッドが長い間不在にしていたはずだが、その痕跡は全く感じられなかった。


レッドはソファに座りながら、説明した。

「グランドフェルズに行っていた間に、綺麗に片付けておくように、冒険者ギルドに依頼をしていたんだ。」



「実は、かなり散らかっていたんだ」

レッドは苦笑しながら、恥ずかしそうに話した。


レッドはミナとカイに自宅の鍵を渡した。


「ここを好きに使ってくれ。」

とレッドは優しく言った。


そして、レッドは再び話し始めた。

「以前少し話しただろう。俺の家族は、もうこの世にはいないんだ。」

と。

その言葉は淡々と語られ、レッドの目には深い寂しさが宿っていた。


「ここを使ってくれた方が、俺にとっても嬉しいんだ。」

と続けるレッドの声には、新たな家族への期待が込められていた。


レッドは、広々とした部屋を案内した。


カイに一部屋、ミナにも一部屋、それぞれ案内した。


部屋にはそれぞれ、一つの机と椅子、そしてベッドと収納が備わっていた。


「レッド、ありがとう。本当にここに住んで良いんだよね?」

ミナは確認するようにレッドに尋ねた。


「ああ、好きに使ってくれ。」


そんな中、お腹が鳴る音が響き渡った。それはミナのお腹だった。

「そろそろ夕食にしよっか。」

ミナが恥ずかしそうに言い、ミナを先頭に三人は食堂へ足を運んだ。


レッドは言った。

「あぁ、まだ、食材とか何も買っていないぞ。」


「大丈夫。私が用意するから。」

ミナはアイテムボックスから、香ばしい匂いのする料理を取り出した。

それは、ドワーフの都市であるグランドフェルズでミナが買い込んで来たものだった。


レッドは感心しながら言った。

「ミナのアイテムボックスは、便利だなぁ。」


そして、レッドは、キッチンの奥からお酒を取り出し、三人はテーブルを囲んだ。


「料理はおいしいし、部屋も素敵だし。明日から、また新しい冒険が待っているんだね。」


ミナが期待に満ちた目で語り、レッドは頷いた。


「そうだな。」


レッドはミナとカイに向けて微笑んだ。

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