第50話 レッドのやり直し

朝の光が王城の壁に反射し、光が眩しさを増していた。

赤髪の男、レッドはその光景を静かに眺めていた。

レッドは、自分がどこにいるのか、そしてこれから何をしようとしているのか。

それを十分に理解していながらも、なぜか遠くへと逃げていくような感覚を覚えていた。


レッドは、かつて自分が導いてきた騎士団へと足を向けていた。

門番はレッドの姿を見つけると、すぐに敬意を表して頭を下げる。

レッドの栄誉と功績は、身分証を提示せずとも門を通ることができた。

しかし、レッドは無言で、身分証を門番に差し出した。


その行動は、過去の栄光を背にして、再び下から登り始めようとする心情を物語っていた。

レッドの心の中には、愛する家族を失った悲痛が刻まれており、その傷はレッドの思考の中を渦巻いていた。


城内へと入ると、レッドは人事担当のアルフレッドに面会を求めた。

アルフレッドとは過去に何度か顔を合わせており、アルフレッドはレッドの過去を知っていた。

だからこそ、レッドが再び自分の前に姿を現したとき、アルフレッドは驚きを隠せなかった。


レッドがアルフレッドの事務室に通されるまでの間、彼は無言で待っていた。

人々が話しかけてくるのを避けるように、レッドは孤独に身を包んでいた。

その眼差しは、心に傷を背負った男の悲しみと絶望を物語っていた。

レッドは、ミナとカイに出会ったことで、それを乗り越える勇気を持ちレッドを強くする源ともなっていた。


今のレッドは、過去の痛みを背負いながらも、前を向いて歩く力を持っている。

そしてレッドは、新たな決意とともに騎士団に戻る覚悟を固めていた。

その覚悟の重さは、レッド自身との戦いであり、他の人には理解できないものだった。



レッドは、事務員に案内された先で、人事担当のアルフレッドと、騎士団の副団長であるガラードと目が合った。

特にガラードは、いつもは無表情な顔にも感情が浮かんでいた。


「レッド、久しぶりだ。なぜここへ来た?」

アルフレッドが声を発した。


その落ち着いた調子にレッドは微かに頷いた。


「また騎士団に入団したい。」

レッドの声は深く、かつての剣戟けんげきと同じように力強かった。


アルフレッドは一瞬驚いたが、すぐに真剣な表情になった。

「お前が戻ってきてくれて、本当に嬉しい。

 だが、騎士団長の座を交代させるのは難しいぞ。」

アルフレッドは冷静に言った。


ガラードは一瞬黙り込んだ後、言葉を発した。

「レッド、よく戻ってきてくれた。」

その言葉は、ガラードがレッドの心情を理解していることを示していた。


レッドは無言で頷いた。

その眼差しは、再び騎士団に戻ることの意味を十分に理解していた。

そしてレッドは、新たな挑戦を始める覚悟を固めていた。


アルフレッドとガラードもまた、レッドの心情を理解し、それを尊重していた。

再び騎士団へ入団することは、レッドにとって困難であるかもしれないが、レッドはその道を進むことを選んだ。



アルフレッドは、目の前のレッドを見つめながら語った。

「ガラードよ。レッドには、どのポストが相応しい?」


ガラードも深く考えながら言葉を紡いだ。

「レッドなら、副団長クラスからだろうな。」


その表情は、心からレッドの能力を理解し、認めていることを示していた。


しかし、レッドはただ静かに頷き、言った。

「一兵卒からお願いしたい。」


その瞳は、決意に満ち溢れており、同時に何かを捨てる悲しみも隠していた。

それはレッドが、過去の自分に別れを告げ、新たな生活を始める覚悟を示していた。


アルフレッドとガラードは、レッドの言葉を黙って受け入れた。

二人はレッドの意志を尊重し、その選択を認めることにした。


レッドは再び騎士団の一員となり、そして自分の道を歩み始めることを決めた。

その胸中は、過去の痛みと向き合い、それを受け入れ、そして新たな自分を探す旅を始めていた。

その旅は、きっとレッドにとっては重く、困難な道のりとなるだろう。

しかし、レッドは、その道を自分の意志で選び、そして自分の足で歩むことを決意していた。


「レッド、副団長として命ずる。」

とガラードの声が室内に響く。

普段は無口なガラードだが、命令を出す時は声は違っていた。

「王女が行方不明だ。それはお前も知っているだろう。

 我々は南方の森を捜索しているが、ある部隊と連絡が途絶えてしまった。」


ガラードの視線がレッドに突き刺さった。

かつてレッドはガラードの上官だった。

だが、このときは明確にレッドの上官のそれだった。

「そこにちょうど、新たに部隊を派遣することになっている。」

ガラードの視線は一瞬もレッドから外れず、終始真剣そのものだった。


「お前にその部隊を率いてもらいたい。明日、朝早くからの出発だ。」

続けてガラードはレッドに求める形で告げた。

それは命令であり、同時にレッドへの信頼の表明でもあった。


レッドはしっかりとガラードの眼差しを受け止め、少しの間を置いた後で、


「承知しました。お任せください。」


と騎士団の正式な礼をとって答えた。

その表情には冷静さがありながらも、決意の色が強く宿っていた。


過去の自分と向き合い、新たな道を歩き始めたレッドだったが、彼の中には常に国や民を思う心があり、そのためならどんな困難も乗り越えていく覚悟があった。


その夜、レッドは部隊をまとめ上げ、明日への準備を始めた。

彼の心中は、挑戦への緊張と期待、そして責任感で満たされていた。

しかし、レッドはその全てを受け止め、新たな任務へと身を投じる決意を固めていた。

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