第51話 エルフの少女

朝日が窓から差し込み、鳥たちのさえずりが聞こえる中、レッドの家では新たな一日が始まった。

ミナは一番早く目覚め、自分の部屋からカイの部屋に向かった。


「カイ、起きて!」

ミナは、力強い声でカイを呼んだ。


「うーん、もう少し寝させて・・・。」

カイのベッドの横には、アリスから受け取ったレポートが置かれていた。


「冒険に行くよ!早く準備してよ!」


「でも、アリスさんから預かったアクセサリーのレポートを読みたいんだ。」

カイは、ミナにそう訴えた。


「仕方ないわね〜。」


ミナは、1階のリビングへ向かう。

レッドは、何やら深く考え込んでいた。顔には決意のような表情が浮かんでいた。


「レッド、どうしたの?」

とミナが尋ねた。


「何でもないよ、ミナ。」

とレッドは一言答えたが、その表情は相変わらず硬かった。


「表情が硬いよ、レッド。」

とミナはレッドに言った。


「笑顔!笑顔!」

とミナはレッドに笑いながら言った。

ミナの言葉に、レッドは苦笑いを浮かべ、少し緊張が和らいだ。


「ありがとう、ミナ。」


「ミナ、今日は帰りが遅くなるかもしれない。

 もしかしたら、そのまま、出かけることになるかもしれない。

 ここは、好きに使ってくれていいからな。」

とレッドが話をした。


その声にはいつもと違う硬さが感じられ、何か重大な決意を秘めているように聞こえた。

それを感じつつも、ミナはレッドに突っ込んで聞くようなことはしなかった。


「了解、レッド!気をつけてね!いってらっしゃーい!」

と、ミナは元気いっぱいに応えた。

明るく送り出してあげることが、レッドにとって一番嬉しいことなんじゃないかとミナは思っていたのだ。


レッドが家を出た後、ミナは少し考えた。

「今日は、どうしようかな・・・。」


でも、やりたいことは変わらなかった。

ミナの頭の中はそれしか思いつかないのだ。


「カイ、私、冒険者ギルドに行ってくるよ。」


「りょ〜か〜い、ミナ。でも、何かあったらすぐに連絡してよ。」


「もちろん、大丈夫だよ!」

とミナは明るく答えた。



ミナが冒険者ギルドの扉を開けると、ルーシーがミナに微笑みかけた。


「ミナさん、お待ちしておりました。身分証を提示していただけますか?」

ルーシーの口調は優しく、落ち着いていた。


「あ、は〜い!」

ミナはすぐに身分証を取り出してルーシーに渡した。


ルーシーは手早くそれを確認し、手続きをした後でミナに返した。

ミナが身分証を受け取り、目を通すと、そこには新たに「冒険者ランクC」と記載されていた。


「え、ランクCに上がったの!?」

と、ミナは驚いた顔でルーシーに尋ねた。


ルーシーはにっこりと笑って、ミナに話した。

「そうですよ。レッドさんが提出した書類審査が無事に完了しました。

 その結果、ミナさんとカイさんの昇進が決まりました。」


ミナは、それを聞いて目を輝かせた。

「本当!よ〜し。これからももっと頑張るぞ!」

と元気に言った。



ミナは、依頼の掲示板を見つめていた。

だが、ランクCの依頼の中には、討伐依頼のような戦闘の色気はなかった。


「なんだかなぁ、全然やり甲斐のある依頼がないよ。」

とミナはつぶやいた。


「この王国、平和すぎるんじゃない?」


その時、ミナの横に小さな影が忍び寄った。

振り返ると、そこには一人のエルフの少女が立っていた。

彼女の目は、緊張と期待で揺れ動いていた。


「あの、すみません・・・。」

彼女は恐る恐るミナに声をかけた。

「うん?どうしたの?」


彼女の緊張した表情にミナは気になった。


「はじめまして、私の名前はミナ。君の名前は何ていうの?」

ミナは彼女の瞳を優しく見つめて、微笑んだ。


「フィルニアと言います。」

少女は勇気を振り絞り、それでも声は小さく震えていた。


そして、フィルニアは続けて言った。

「頼みたいことがあるんです。」


その表情は、彼女が持つ勇気を全て振り絞ったものだった。


「そう、フィルニアさん。

 私に頼みたいことってなに?その話、聞かせてくれる?」

ミナは、明るく、そして真剣な表情でフィルニアを見つめた。


フィルニアは深呼吸をして、頷いた。

その後、緩やかに口を開き、ミナに伝えた。

フィルニアは涙をこらえながら話していた。

フィルニアの故郷は、強大な魔物に襲われていると。


フィルニアは涙を抑えつつ、続けた。

「私、もともとはギルドに依頼しに来たんです。

 でも、そのお金を途中で騙し取られてしまいました。」

その頬は、恥ずかしさと焦燥感で紅潮していた。


「ええっ、そうなの?」

ミナの声は思わず上がった。


「だから、依頼料を払うお金がないんだね。」

フィルニアはただうなずいた。

その瞳からは絶望感が溢れ出していた。


「それなら、私が依頼を引き受ければいいじゃん!」

ミナは瞬時に決断を下した。


ミナは、冒険者ギルドを出て外を歩く。

そして、ミナは書店に入っていった。


ミナは、フィルニアに尋ねた。

「君の故郷はどこ?」


「ここから南の森の中を進んだ所です。」


ミナは、書店で魔物辞典を探して、購入した。

そして、次に探した本は、魔法の入門書だ。


「やっぱりこっちの世界に来たら、魔法は使えるようになりたいよねぇ。」

と、静かにつぶやいた。


「こっちの世界?」

フィルニアは、ミナの言葉に反応した。


「いや、何でもないよ。

 ところで、フィルニアさんは魔法は使えるの?」


「あっ、はい。治癒魔法が使えます。」


「そうなんだ!今度教えてよ!」

ミナは興味津々で言った。


「あっ、えっと、エルフの治癒魔法はちょっと特別なんです。

 こっちの王都の魔法とはやり方が違って・・・。」

フィルニアは、説明に困った様子を見せた。


「まぁ、いいわ。治癒魔法が使えるのってすごく頼りになりそう。」

ミナは、嬉しそうにフィルニアを見て笑顔でそう言った。


ミナは、フィルニアを連れて王都の通りを歩く。


「ねぇ、一緒にランチでもしながら話を聞かせてよ。」

ミナは、明るく、そう言った。


「あっ、はい。」

フィルニアは、困惑していた。

ミナとは対照的に、心の中では故郷のことが心配でたまらない。

また、騙されやしないかと。

こんなところでランチなんて楽しんでいていいのだろうかと。

でも、フィルニアには、頼れる人は他にいない。

ついていくしか選択肢はなかったのだ。

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