第40話「伊織の瞑想」
沈黙を破ったのは
「各々の組織で緊急対策本部を立ち上げてくれ。考えていても何も見えてはこない。未知の脅威には、まずは触れないことにしよう。栗山町に踏み入って調査することも禁止する。栗山町上空も侵入禁止にしろ。触らぬ神に祟りなしってやつだ。──国民には、新種のウイルスで町が汚染されたとでも言っておく。この話に信憑性を持たせるのと、マスコミなどを栗山町に入れさせない為に栗山町を囲っている山の外周をバリケードで覆ってくれ。あ〜、臨時国会を開いて予算を通さねばならんな……独り言だ、気にするな。──それと、事が起こったときの為に、すぐに動ける実行部隊を編成することを忘れるなよ。被害を拡大させない事を大前提とする。以上だ」
「「「「了解しました!」」」」
皆が席を立とうとした時、北海道支部長の
「もう一ついいですか?」
「それは大事な話なんだろうな?」
高牧長官が部下の
「もちろんですよ。──話をする前に、一つ確認させて下さい。栗山支部の
「河井の報告では、
「分かりました。──え〜、皆さんも知っているように、
悪事という言葉に杉本警察庁長官が反応した。
「
「杉本の言う通りだ。この間、神竜と河井が2人で白いエネビ玉を俺のところに持ってきた。イメージが悪かった人間が国の為に頑張っているんだぞ? 私も杉本と同じ意見だ」
それに対して
「その新しい資源ですよ。──仮に『グレアス』とでも名付けましょうか? その『グレアス』を外国に横流しして儲けてるんですよね」
皆が円卓を叩きながら立ち上がった。
「「「「馬鹿な!」」」」
「馬鹿な、といわれてもね……。本当なんだからしょうがないじゃないですか。──あっ、因みに相手はアメリカです」
「なるほど……。それで合点がいった。アメリカが新しい資源のことをほのめかしながら、ワシに探りを入れてきていたんだ。もちろん知らぬ存ぜぬではぐらかしていたんだが……」
高牧長官が、自分の部下の不祥事に頭を下げた。
「総理、申し訳ありません。私の監督不行き届きです」
「いや、それはしょうがないで済ませておこう」
伊織総理の言葉に、杉本警察庁長官が。
「ですが、この噂が広まれば世論が黙っていないでしょうな。日本UAF不祥事発覚! 新資源をアメリカに横流しか? なんて事になりかねない。そうすれば、高牧の責任問題にもなるやもしれませんな。だが、今高牧に抜けられると困るので、何か手を打った方がよろしいかと」
「その不祥事を上司の監督不行き届きにもっていかない方法……。世論の目を分散させる程のインパクトのある話題が必要……」
「伊織の瞑想が始まりましたね」
「ああ。これが始まると、安心するな」
杉本警察庁長官と高牧長官が目を見合い話すと。
「伊織総理は頭の切れが半端ないですからね」
社長の
「どうです? 何かいい案が出そうですか?」
「河井を悪者として上司の高牧が頭を下げた後に、神竜を持ち上げて英雄にする。──国民に忌み嫌われている神竜が国に貢献し、未知のウイルスから栗山町の町民を守ろうと己を犠牲にして亡くなった……。これはインパクトがあるだろ。これで世論の目は神竜へと向く。この筋書きでいこうか。──今日は10月28日か……私と高牧とで本日の夜に緊急会見を行う。その場で記者を相手にした方が上手く誤魔化せるだろ。取り敢えず河井を拘束してくれ」
杉本警察庁長官が言う。
「了解しました。大至急河井を拘束します」
「A級の河井がいなくなるのは痛いが、しかたないな。抜けた磯良支部の支部長を誰にするか……」
高牧長官が頭に手を当てていると。
「
「
高牧長官が渋っていると、伊織総理が高牧長官を指差した。
「高牧、若いで纒めるのはよくないぞ。いい人材はどんどん上にもっていけ。その方が成長が早い」
「了解しました。では、磯良支部の新支部長に
その言葉に伊織総理が大きく出る頷いた。
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