第14話「とあるダンジョンでの出来事」
─ 数年前
とあるB級ダンジョンの空洞内 ──
「──もう、あんな研究をするのは嫌なんです! 僕は何も喋りませんから……お願いです、助けて下さい!」
ここは、B級ダンジョンの地下3階にある空洞内。
白衣を着た男が大声で叫び、助けを乞うている。
「何も喋りませんって言っても、逃した後に喋ったのか喋ってないのか確認のしようがないだろ? そんな事も分からないのか? 佐山博士さんよ」
機関銃を持った男達に縄で縛られた3人が、ダンジョンの空洞内の壁に背を向け座らされている。
1人目は白衣を着て助けを乞うている男、名は佐山。2人目は佐山の妻で、白のブラウスにロングスカートを着用している。3人目は佐山夫妻の息子。黄色い帽子に体操服姿。
「確認は出来ないでしょうが……。あんな研究をしてどうするんですか? あんな物を開発しようとするなんて、人の所業じゃない!」
佐山博士の言葉に、温度差を見せる機関銃を持った男。
「まぁ、何とでも言えよ。どうせお前達は死ぬんだ、最後くらい吠えさせてやるよ」
機関銃を持った男と同じ迷彩柄の服を着たもう一人の男が、ハァハァと息を荒くしている。この男、何故か持っていた機関銃は離れた所に置いているようだ。
それを見た機関銃を持った男が。
「おい、何興奮してんだよ……」
興奮という言葉にさらに興奮する迷彩柄男。
「──いや、こんな男にもったいない女だよな……。どうせ殺すんだし、こいつらの前でやっちゃっていいか?」
「お前ほんとに変態だな……。ちっ、ほんじゃあっちでモンスターが来ないか見張っとくから、さっさと終わらせろよ。──あっ! 俺、牛丼特盛な」
機関銃男がモンスターを見張りに空洞を出て行く。
「特盛でもなんでも奢ってやるよ〜。へへっ、さぁお姉ちゃん俺と楽しもうか〜」
迷彩柄男がベルトに手をかけ、佐山の妻に近寄りながらそう言った。
「おい! ズボンなんか脱いで何をする気だ!」
佐山博士が迷彩柄男に凄むが。
「へへっ、丁度お腹から縛られて、胸が強調されてるね〜。──ふんっ」
「きゃー!」
迷彩柄男が、佐山の妻のブラウスのボタンを引き千切り胸をはだけさせた。
「やめろー! このケダモノ!」
「叫べ叫べ。余計に興奮するぜ。──へへっ、いいおっぱいしてる〜。その下着も邪魔なんだよな〜」
迷彩柄男が佐山の妻の胸に手を伸ばしたその時。
「おい! ママにさわるな〜!」
佐山夫妻の息子の声に、佐山の妻の下着を剥ぎ取ろうとしていた迷彩柄男が反応した。
「威勢のいい僕ちんだな。ママのおっぱいは僕のだ〜、ってか? 僕ちんにはちょっと早いけどオジサンが保健体育の授業をしてやろう。しっかり見とくんだよ〜、へへっ」
「やめろー! 小さい子供になんて事を言ってるんだ! くそっ、こんな縄……」
迷彩柄男が声のする方へ目を向けると、佐山博士が足を縛られたままの状態で立ち上がっており、迷彩柄男に向かって飛びかかった。
「おりゃー!」
スッと避ける迷彩柄男。
「馬鹿かお前は」
「痛っ! う、うるさい! よ、避けるなよ! クソっ、妻に、妻に手をだすなー!」
「お〜……。ゾクゾクする。──もう我慢できんぞ。また邪魔されたら鬱陶しいから、ちょっと大人しくしてろ」
迷彩柄男がそう言うと腰のガンホルスターから銃を取り出し、転倒している佐山博士まで歩き右太腿の側で引金を引いた。
小さな爆発音が空洞内に鳴り響く。
「ぎぃやぁーー!」
「あ、あなたー!」
夫に向かって叫ぶ妻。
「ははっ。それでもう立てないだろ? 嫁さんが感じてる姿をそこで見てろ。──さあ、待たせちゃってごめんねぇ〜」
今一度女性の胸に手を伸ばす迷彩柄男。
「やめてー!」
縛られているので、為す術がない佐山の妻。無駄でもそう叫ばずにはいられない。
すると、空洞の外から機関銃を撃つ連続音が聞えてきた。
「ちっ、モンスターが出やがったか。さっさと終わらそう」
迷彩柄男が女性の髪を掴みその場に押し倒した。
「きゃっ痛い、止めて! いや! ──あ、あなた……助けて!」
助けを求める女性のことなどお構いなしに、横たわる女性の上に跨がる迷彩柄男。
「いただきま〜す!」
胸に手をやろうとしたその時。
「ぎゃーー……」
断末魔のような叫び声が聞え、慌てて空洞の入口に目をやる迷彩柄男。
「んなっ!?」
すると、モンスターがゾロゾロと入ってくる。
「くそっ、遊び過ぎた! あの野郎死んだのか? ──くっ、こんなとこで研究者なんかと一緒に死んでたまるかー!」
迷彩柄男が離れた所に置いていた機関銃まで走り、手に取りとモンスターに向かって乱れ撃った。
「うおーー!」
「ギャワァーー!」
「グウォーー!」
だが、機関銃等で倒せる数ではなく、直に弾が切れガンホルスターにある銃を構えるが。
「や、やめろ……む、向こうへ行け!」
「ガーー!!」
「お、お母ちゃーん!」
助からないと思ったのか、銃口をこめかみに当て引き金を引いた。
また小さな爆発が響き、一瞬で息絶える迷彩柄男。
すると、モンスターが縛られている3人に目を向ける。
「ギャワァーー!」
「怖いよ〜! パパ、ママーー!」
「タケル……ごめんね……」
「俺のせいだ……すまん二人とも……愛してる!」
子供が泣き叫び、佐山博士とその妻が命を諦めた。
「ガーーー!!」
モンスターに襲われる寸前で。
「静まれーー!」
どこからか聞こえたその一言にモンスター達が口を閉じ後退したかと思いきや、空洞内からゾロゾロと出て行った。
佐山博士と妻、その子供の3人は身を寄せ合い固く目を閉じている。
「おい、何をしておる? 目を開けろ」
命を諦めていた佐山博士だが、殺されるどころか耳に優しい声が届いた事に驚き目を開けた。
声の聞こえた方へ視線を向けると、黒い目をした銀髪の美しい女性が立っている。
見た瞬間驚いていたが、直ぐに冷静を装った。
「貴方は……私達を助けてくれたのですか?」
「如何にもそうだが……貴様は
佐山博士が首を左右に振った。
「何とも思いません。貴方は目の色が違う私達を助けて下さいました。それなのに、私が貴方の目をどうのと言うことはあり得ません。貴方は私達家族の命の恩人なのですから」
銀髪の女性が口角を上げる。
「ふっ、
「はっ!」
ラックラッキーと呼ばれた男が佐山家族の縄を解き、佐山を肩に担いだ。
「おい、女と子供は歩けるだろ? 後を付いて来い」
佐山の妻が礼を言う。
「あ、あり、がとう……ございます……。どう……どうお礼を言ったらいいか……」
「気にするでない。ただの暇潰しだ。散歩をしていたら目に入った……だから助けたまでだ」
すると子供が。
「きれいなおねぇさん、ありがと〜ございます!」
「ハッハッハッ、大人よりも偉い。さあ、腹が減ったであろう。怪我の手当てが済んだら食事にしよう」
佐山夫婦は涙を流しながら、ひたすらお礼を言った。
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