第13話「馬鹿げたステータス」
裏工作で思い出したことがある。
そういえば、父は最近特にお金使いが激しい気がする。家に人を呼んでパーティばかりしたり、豪華な装飾品が付いた剣を何本も買ったりしている。
家に金の塊を持って帰ったり、現金を束にしたものをポンと机の上に置いてあったり……。
いくら家がお金持ちとはいえ、ここまでお金を無駄に使うことはなかったし、金塊や札束も見たことは無かった。
子供ながらに父が悪いことをしているんじゃないかと不安になる。
父も桂隊員も信じられなくなり後退りしていると、後から服を掴まれ「ジッとしていろ」と、父に言われた。
見上げると父が、桂隊員に顎を突き出していた。合図を送っているのか?
それを見た桂隊員が、段取りが決まっているかのように説明を始める。
「まずはスキル『鑑定眼』にて君のステータスを開示します。そして、職業を決定する為に、スキル『儀式』を発動します。そうすれば、ステータスの職業欄に希望……いや、職業が表示され、全てのステータスが構築されるという訳です。それだけなので直ぐに終わりますよ」
説明を終えると桂隊員が俺の前に立ち、目を閉じ両手を広げながら高く上げ、『鑑定眼』と呟きスキルを発動した。
すると、俺のステータスが何も無い空間に浮かび上がる。
ここにいる皆が、浮かび上がった俺のステータスに目をやった。
バタンッと音がし、その方向へ目を向けると母が倒れている。怒りの表情を浮かべた父が無言で母を抱きかかえてリビングを出ていってしまった。
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価値 ─ 0円
ランク ─ ━
職業 ─ 神
状態 ─ 良
総合力 ─ ━
スキル ─ 最強
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浮かび上がった俺のステータスは、6歳の時と変わらず価値0円。
ステータスの文字の色は青のまま。
スキルは『最強』で、まだ儀式を行っていないにも関わらず、職業欄には『神』という文字が……。
価値が0円で職業は『神』、スキルが『最強』。
馬鹿げたステータスだ。
日本UAFの桂隊員が囁くような声で言う。
「儀式を行う前に職業が決定されているなんて前例は無い。やはり君のステータスは神の
日本UAFの桂隊員が口にした生々しい言葉に恐怖を覚えた。
あの父ならその可能性もあると……。
俺はパニックに陥り、恐ろしいことを考えてしまう。
── お父さんに殺される前に、殺さないと……。
やはり、気持ち? というか、感情が不安定なのだろうか……。こんな恐ろしいことを考えたことなどなかった。
「なんなんだろう? 強くならないといけない? ような……。でも人を、ましてや家族を殺さないとなんて考えたことなんかなかったのに……」
どうすればいいのか分からず肩を震わせる俺に、そっと寄り添ってくれた人が。
誰かと思い見上げると、そこに居たのは佐山だ。
「今ここにいるのは良くありません。桂隊員が言うように、今の旦那様は危険です。一度地下室に入りましょうか。──大丈夫、私はいつも坊っちゃんの味方なので信じて下さい。それと、お腹がペコペコになるまでは、何があっても出て来ちゃ駄目ですよ?」
「お腹がペコペコになるまで? ──よく分からないけど、佐山がそう言うんだったらそうするよ」
佐山だけはずっと優しい。
俺は信用出来る佐山に促されるまま、地下室へ入る為にリビングを出て佐山と一緒に歩いた。
「──佐山はいつも歩き方が変だけど、脚が痛いの?」
佐山が家に来たことは覚えていないが、俺が物心ついた頃から佐山は変な歩き方をしている。
いつも聞きそびれていたが、思い切って聞いてみた。
「──これは……ですね」
俺の質問に、佐山が明らかに辛そうになったので「いいよ、返事は要らないから」と言った。
「いえ、大丈夫ですよ。──昔、辛い事がありましてね。その時に右脚に負わされた傷のせいなんですよ……。それで変な歩き方になってしまったんです」
「ご、ごめんなさい! ──余計なこと聞いて……」
佐山が頭を撫でてくれた。
「──坊っちゃんは優しいですね。その心を忘れないで下さい。そして、何があっても諦めちゃ駄目ですよ」
俺がいけない質問をしたせいで、佐山に辛いことを思い出させてしまった。それでも優しい声を掛けてくれる佐山。
その会話を最後に俺は地下室へと入って行った。
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