第32話「感電したら価値が上がるかも?」



 ── 家は電気が通ってなかったから電話が通じなかったのかもしれないな。



 そう思い、電気があるなら家の電話が使えるんじゃないかと訊いてみた。


 すると、京子がテーブルの上で頬杖を付き、側に置いてあったスマホを親指と人差し指で挟みブランコのように揺らしながら話す。


「試してみたんだけど、このスマホと同じで繋がらないのよ……。たぶん電話線も切られたんじゃないかしら?」


「そっかぁ……。電気があっても線が切れてちゃ無理だよな」


 町が壊滅したくらいだから、電話線が切れていても可怪しくはない。だけど、子供ながらになんか引っ掛かる。


 何というか、今回のモンスターの襲来に人が関係しているような気もしないでもない。

 だって、いきなり大群で襲って来るなんて可怪しすぎるだろ?



 ──と思ったところで、人がモンスターを操って指揮をとるなんて考えられないし……。自然的な災害と考える方が正解かな。



 竜巻に例えるなら、上手い具合に家のある所を通ったとしてもそれは自然現象であって、人が竜巻を誘導など出来ない。


 今回のモンスターの襲撃も、今までモンスターが現れなかった分大群で現れた……という解釈が正しいのだろう。


 毎日一体のモンスターが百日間現れるのと、全く現れなかったモンスターが百日目に百体現れるのは、同じ確率だから。


 難しいことを考えると眠たくなるので止めた。お茶も飲んで落ち着いたところで、京子が話し出す。


貴史たっくんにステータスを見せてもらったから私のステータスも見せてあげたいんだけど、私は10歳の誕生日に自分のステータスを見た時に『隠滅』ってスキルが気になってね、興味本位で発動しちゃったの。

そうしたら自分のステータスを見れなくなっちゃって……。私のもう一つのスキル『情報漏洩』なら当時の私のステータスを映し出せるから、それでいい?」


「全然いいよ」


 京子が『情報漏洩』を発動すると、何も無い空間にステータスが浮かび上がった。


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 名前  ─ 朝川京子あさかわきょうこ

 価値  ─ 1,500円

 ランク ─ E

 職業  ─ くノ一

 状態  ─ 良


 総合力 ─ 50


 スキル ─ 情報漏洩じょうほうろうえい

     ─ 隠滅いんめつ


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 俺は京子の10歳の時のステータスを見て驚いた。


 ステータスの内容に驚いたのは勿論だが、京子が『情報漏洩』で開示した京子の10歳の時のステータスが俺にも見えた事にも驚いた。


 京子が俺のステータスを見た時は、俺にはその文字が見えなかったのに、今は見えている。


「さっきまでは京子がスキルを発動しても俺には見えなかったのに……今は見えるぞ」


「ふふっ、見えるでしょ? 私と仲間になったから貴史たっくんにも見えるようになったのよ。色々と聞きたいでしょうけど、ちゃんと順を追って說明するから焦らないで聞いてね」


 焦ってはいないが、初めて尽くしで少し興奮している自分がいる。興奮している理由の一つが、京子のステータスだ。


 普通10歳になると価値は1,000円に上がるらしい。兄も姉もそうだった。

 普通はだけど俺が聞いた話では、京子のように10歳で価値が1,500円とステータスに表示される人が稀にいるらしい。


 10歳でこの価値はレア中のレアだ。


「京子って凄い人なんだなぁ。もしかして、両親も凄い人?」


「ん〜ん。お父さんは普通の会社員で、冒険者登録もしてないわ。お母さんも普通の主婦よ。──でもね、前にお母さんに聞いたんだけど、私がお腹にいる時に黄色のエネビ玉を入れてたエネビンバーターが壊れてお母さんが感電しちゃったらしいの。もしかしたら、私の価値が高いのはその感電が原因じゃないかって言ってたわ。──お父さんには内緒らしいけど……」



 ── 感電なんて、普通なら死んじゃうんじゃないかな? そんなに酷い感電じゃなかったってことか? もし、感電のせいで京子の価値が高いんだったら、俺も感電したら価値が上がるかな?



「感電かぁ……。理由はどうでも、価値が高いのは羨ましいよ。──感電ねぇ……」


 京子が胸を張ってふんぞり返っている。


 そして話題は京子のスキルに。


 お互いのステータスはもう見る事が出来ないが、京子のスキルはさっきのように情報を映し出す事が出来るらしい。


 京子が、「私が映し出す情報は、仲間だけにしか見る事が出来ないの」と、付け加えた。


「まずは、コレね」


 京子が『情報漏洩』と口にすると、『隠滅』の情報が空間に浮かび上がる。



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 スキル ─ 隠滅いんめつ


 詳 細 


 ①発動した時点で自分と仲間のステータスが二度と開示出来なくなる(発動後に仲間になった人も然り)


 ②一度発動すると効果は永久に持続し、解除することはできない 


 (鑑定眼で見える情報はここまで)


 ・仲間になりたいと願うと、口が勝手に①と②の説明を始める(仲間になるには素手で握手しないといけない)


 (以下の情報は仲間になった人にしか口に出来ない。仲間になる前に說明しようとしても、口が開かない)


 ・『隠滅』が発動されると『神の加護』と『超回復』(超回復は本人にのみ)が付与される。仲間になった人もその恩恵を受ける。


 ・仲間から外れてもその人のステータスは二度と開示出来ないが、神の加護の恩恵は解除される。そして、このスキルの情報が頭から削除される


 ・このスキルは一度保持すると手放せない。


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「情報量が凄いな……。ややこしくて頭が痛くなってくるよ」


 京子がこの『隠滅』について詳しく説明してくれる。



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