俺の価値って0円なのか?〜無価値の俺を認めてくれた最強の矛を携え、ステータスにある『最強』というスキルがまさかのチートだったので最弱から現代ダンジョンを蹂躙し、やがて無双していく〜

ライト

神竜家

プロローグ 前編


 秋が顔を覗かせ、夜になると少し肌寒くなってきた10月27日の深夜。


 空には人知れず光り輝く一つの星が。


 その星は、肉眼で確認出来る中では一番輝いて見えるシリウスよりも光り輝いていた。


 その輝きが段々と大きさを増してきたのかと思いきや、大きくなっているのではなく彗星の如く尾を引きながら地上を目指しきている。


 瞬く間に地上に急接近してくる、光り輝く星。


 その刹那、轟音と共に地面に衝突……と同時に、大量の土煙が舞った。


 光はやがて消え、暗闇に溶け込んでいくその星……ではなく、その物体は一本の刀。


 激しく回転した一本の刀が球状に光を放ち、彗星の如く見えていたようだ。


 鞘に収まった一本の刀、それは太刀。


 その刀のつかは、黒の柄糸つかいとで下地が見えないように巻かれており、菱形が四つ並んで大きな菱形を形成しているつばの色も黒。

 その四つの菱形で作られたつばの、対に並ぶ菱形が濃黒と濃黒・淡黒と淡黒でいろどられている。


 刀は鞘に納まっているので刀身は見えていないが、その鞘も綺麗な艶のある黒をしており、周りの闇を写し込み景色と同化している。


 そんな黒ずくめの刀が、鞘の切っ先側から半分ほど地面に突き刺さっており、闇の中で異様な雰囲気を醸し出していた。


 一本の刀が来た先は、福井県栗山町の田舎町にある一軒家の庭。


 その一軒家、木で作られた腰上の高さの柵がぐるりと家を一周しており、正面にあるこれまた木で作られた門を開けると、石畳が家の玄関まで連なっている。


 純和風の平屋。立派な瓦屋根に漆喰の壁。百坪の土地の中に建物と庭があり、その庭に一本の刀が降ってきたのだ。


 その家の表札には『神竜』の文字が……。





「何だ今の音は! 庭か?」


 神竜家の当主、神竜剣介しんりゅうけんすけが轟音に反応した。


「あなた! 静かにして頂戴。一々怪しい音に反応しないで。こんな夜中に外に出て、もし怪しいものが鳴らす音だったら危ないでしょ」


 剣介の妻、神竜清子しんりゅうきよこが夫の剣介をなだめる。


「うわ〜ん!」


 2人の声に驚いたのか、息子の神竜巌上しんりゅうがんじょうが泣き出した。


「おお、巌上がんじょうを泣かせてしまったな……。よしよし、大きな声を出して悪かった……5歳のお兄ちゃんが泣いちゃ格好悪いぞ。──ん? な、なんか、急に、眠く……な……」




 ❑  ❑  ❑




 時を同じくして、日本各地……いや、世界各国数多あまたの場所に現れた洞窟のようなオブジェ。


 繁華街に、交差点の真ん中に、人里離れた山奥に。街、郊外、都会、田舎、色んな場所にそれは出現した。


 その洞窟のようなオブジェには、縦五メートル横三メートル程の、今にも開き何者かが出て来そうな黒い鉄の扉が付いている。


 その大きな扉には金のノブが二つ付いていた。一つはその扉に相応しい大きなノブが然るべき場所にある。

 そしてもう一つのノブは、いわゆる人の家の玄関のノブと同じサイズ、同じ高さの位置にあり、よく見ると小さな扉となっていた。


 そう、人が出入口出来るだろう扉が、巨大な黒い鉄の扉に付いている。

 猫が出入出来るソレのように……。


 そして、その同時刻に全ての人類が、時計の針を止めたように動きを止め、数分間眠りにいざなわれ同じ夢を見た。


 夢の中では真っ暗な空間に自分一人が立っており、その目の前には小さな光の玉が浮かんでいる。

 その光の玉が暗闇に立ち尽くす自分に向かって話し掛けてきた。


『──お前にステータスとスキルを授ける。その能力で抗え……』


 光の玉はそう言い放つと忽然と消える。



 その日から人はステータスを手に入れた。ステータスには状態・ランク・総合力等の情報が表示されるが、その中にという項目がある。


 全ての人はと称した値段を付けられ、その価値に応じてランク分けされた。


 最低値は産まれて直ぐの赤ちゃんに付けられる100円。最高値はまだ知られていない……。




 ❑  ❑  ❑




 

 翌朝、神竜家の当主である神竜剣介しんりゅうけんすけが、昨日庭で聞こえた音の正体を確かめるべく外へ出た。


「昨日は変な夢を見たな、喋る光の玉……なんだったんだあれは。──ん? なんだあれは? あんなところに棒を刺した覚えはないぞ」


 剣介が地面に突き刺さっている棒状の物を見つけ、近くまで寄って行くと。


「あなた、それは何?」


 妻の神竜清子しんりゅうきよこが剣介の後から声を掛けた。


「これは……刀だ。太刀だぞ」


 剣介が、鞘に納まったまま切っ先側から地面に突き刺さっている刀の、見えている柄部分に手を伸ばし握ると。


「ぐっ……」


「あなた! どうしたの!」


「ぐわーっ、何だこの刀は!? 手から体力が持っていかれる!! クソっ、妖刀か? ええい、俺に従えーー! ──んっぷはぁ〜。落ち着いた? 俺を受け入れたか?」


 剣介が刀を握ったまま呆然としている。


「妖刀って……。あなた、大丈夫なの?」


「いや、柄を握った途端に力が抜けていったんだ……。だけどもう大丈夫だ。どうやらこの妖刀は俺を認めたらしい。──清子、慎二を呼んでくれ。俺はその間にこの事を日記に書き留めておく」


 剣介に言われるがまま、清子は従兄弟の慎二に連絡を入れる為に家に入って行った……。


「ふっ、よく分からんが、妖刀が俺を認めたとはな……。しかし、この時代に刀……か。折角手に入れた妖刀、さて……どうしてやろうか?」


 降ってきた刀を見つめ、剣介は口角を上げた。

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