第4話「6歳と10歳の誕生日」
本来スキルというものは職業に付与されるもの。
それとは別にスキルを身につける方法もあるのだが、産まれて間もない赤ちゃんにスキルを与える親などいないし、そもそも赤ちゃんがもう一つの方法でスキルを保有することなど出来ない。
その方法は、自分の意思が必要だからだ。
スクリーンに映写するように浮かび上がるステータス。その文字や数字の色は通常白で表示される。
これが常識。
だが俺の場合は、ステータスの文字や数字の色が赤だったと父が言う。
何から何まで、まさに前代未聞。
ステータスの赤い字が異次元の強さをイメージさせ、尚且つ産まれながらに持つ『最強』というスキル。
俺の価値が0円なのも化ける前触れかもしれないと、両親はそう思ったらしい。
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─ 何気ない家族の会話 ──
「日本UAFかぁ、格好良いなぁ。俺もお父さんみたいに、支部長になるぞ!」
「バッカだなぁ
兄は去年6歳になり、誕生日の定期検診で価値が600円になっていることが分かった。
「きゃははっ。智也兄の次は私が支部長になるんだもん。なんたって私も価値が600円なんだからね!」
兄が先に6歳になり次の年に姉が6歳になると、姉も価値が600円に上がっていた。
「二人共いいよなぁ……。──俺なんて価値が0円だもんな」
兄と姉を羨ましそうに見てすねていると、父が声を掛けてくれる。
「はっはっはっ。何をすねているんだ
父に褒められ、兄も姉もデレデレとしている。──いや、訂正しようクネクネだ。
「
父はそう言いながら俺の体に手を当て、高く抱き上げてくれた。
「
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物心がついた頃には、俺のステータスのことを色んな人が噂していた。
そして、俺は当たり前に悩んだ。
「俺の価値って0円なのか?」と……。
両親が俺のことを話しているのをよく耳にしたが、その内容から察するに俺が超大物になるだろうと、果てしない妄想を膨らませているようだ。
両親の期待とは裏腹に、俺は不安でたまらなかった。
あまりにも期待されていることに、段々とプレッシャーを感じるようになっていく。
6歳の誕生日を目前に控えた折に、俺は両親に疑問をぶつけた。
「なんで6歳の誕生日がそんなに大事なの?」
両親はその質問に微笑み、母が分かりやすく教えてくれる。
「──あのね、子供を産むと出生届を出さないといけないんだけど、日本UAFではその出生届のデータを管理しているらしいの。だから、6歳と10歳の誕生日が間近に迫るとハガキが送られてくるのよ」
「なんで?」
「それはね、6歳の誕生日には『定期検診』を受けないといけないからなのよ。6歳の誕生日がくると、日本UAFの職員が価値を確認しにくるの。なんでも、素質のある子供を探す為なんだって」
俺には少し難しかったが、母の話す内容はこうらしい。
日本UAFの職員にスキル『鑑定眼』でステータスを開示してもらい、価値を確認してもらう。
6歳では価値が600円になることが殆ど。稀に700円や800円になることもあるらしいので、そういった子が素質ありとしてチェックされる。
6歳の誕生日は定期検診と称したステータスの開示のみ。
10歳の誕生日が大事な理由は、スキル『儀式』にて職業を決定するから。
職業が決定すると、その職業に因んだスキルが一つ付与される。
そして、価値に見合ったランクと総合力が表示され、全てのステータスが構成される。
総合力とは、攻撃力・防御力・素早さ・知力の4項目の数字が合計されたもの。
なので、どの数値が高いかは見た目で判断できない。自分よりも総合力が低い相手でも、攻撃力が異常に高ければ一撃で殺られてしまう可能性もある。
10歳の『儀式』が終わり素質があるとみなされれば、日本UAF訓練センターで特別な訓練を受ける資格を与えられる仕組みだ。
因みに『鑑定眼』というスキルを持っている人は日本UAFの職員以外にもいるが、日本UAF以外の人は職業がまだ決まっていない子供のステータスを開示出来ない。
10歳の定期検診で職業が決定されるまるまでは、日本UAFの職員以外ステータスの開示が出来ないようにロックされているからだ。
ステータスをロックしていなかった頃に、価値が高い子供の誘拐事件が多発。
日本の未来を心配した政府と警察、日本UAFとで協議を行い、スキル『ロック』を持つ者を呼び実験を行った末にこのシステムを完成させた。
以上の理由で、俺の6歳の誕生日に行う『定期検診』の時のステータス開示を、皆が楽しみにしていた。
もしかしたら、6歳では普通600円程の価値が、万を超えてるんじゃないか、と。
── 期待外れの価値だったらどうしよう……。
まだ幼かった俺は、周りが期待すればする程不安になっていった。
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