第28話「もはや運命」
京子が「それは……」と言って俯いてしまった。
「京子が言うように、体の調子が悪くなった時って普通はステータスにある状態を見るだろ? でも俺は不調の原因を調べる為に、自分のステータスを開示してほしいなんて誰にも頼まないんだよな。ステータスを見られて何か言われるのはもう嫌なんだ。だから、開示出来なくなるのは逆に嬉しいしよ。──どうせ俺には仲間なんか出来ないって思ってたから、って言うか仲間のなの字も考えたことないかも? まぁ、足を引っ張るとかは置いといて、京子が仲間になってくれるんだったら、それは俺にとっては願ってもないことなんだ。京子の『
俺の話を聞いていた京子の目から、涙が溢れた。
「ぐすっ。──私は、この『
泣いている京子の肩に手を置いた。
「死んでどうするんだよ。京子はまだ仲間を作れる可能性があるけど、俺なんか価値が0円なんだぞ。誰が無価値の人を相手にすると思う? こんな俺でも前向きに生きてるんだから、腐っちゃ駄目だろ。だいたい6年生が4年生の俺に励まされてどうするんだよ……全く」
俺達にとってこの出会いは、奇跡的と言っていい。
今日ここで俺が京子に出会う確率は、天文学的な数字だと思う。
あの時こうしていたから、あの時あんなことを考えたから……今まで起きた全てのことが必要で、どれを除いてもこの出会いは生まれなかっただろう。
奇跡的な出会い……だが、もし二人が出会えたことが奇跡ではなく運命なら……。
いや、これはもはや運命かもしれない。
それを確かめる術はないが、出会えたという事実、お互いに出来ないと思っていた仲間が同時に出来た事実。
その事実だけで、俺は十分運命だと思える。今迄に起こった事がこの出会いに必要だったのではなく、この出会いの為に今迄があったんだと。
── そう考えてみると、愛刀に出会えたのも運命を感じるなぁ。あの日、あの場所でお父さんの話を聞いてなかったら、家宝の刀を探す事もなかったんだよな。こうなってくると、まだ運命的な出会いがあるかもしれないぞ。
そんな事ことを考えながら、京子の肩から手を離し。
「はい、手を出して」
握手を求めた。
「俺達は今日、いや、今から仲間だ! お互いに支え合い協力して頑張ろう! 京子、よろしく!」
京子が涙を拭い、俺の差し出した手を両手で握る。
「ええ、ありがとう。私、嬉しい……。──私達は今から仲間ね!
すると、京子の手から熱気が伝わり、体の芯から温かくなってきたというか、心地の良いものが体の中に届き、力が溢れてくる。
瞬間、一度だけ心臓が大きく脈を打った。
「え? なんだこの感覚は……。なんか、ゴブリンを倒した時と似た感覚だ。京子の手から何かが伝わってきた感じがしたんだけど……気のせいかな?」
京子が笑顔で答える。
「ふふっ。気のせいじゃないわよ。──あのね、仲間にならないと言えない事があってね……だから隠していた訳じゃないんだけど……。
確かに、そろそろ辺りは暗くなりそうだ。
「京子の家に入ってもいいの?」
「誰もいないもん。それとも
「俺の家は、ここから自転車で小一時間くらい掛かるんだ……。それに、中はヤバいよ?」
色んな意味で俺の家に行くのは止めておこうという事になり、今後は京子の家を2人の拠点にすることになった。
「さあ、入って」
京子に背中を押され少し緊張気味に頭を下げる。
「おじゃましま〜す」
俺の家と比べると狭いが、綺麗に片付いている。家に入るなり、前を歩いていた京子が立ったまま動かなくなった。
突然振り返り、神妙な面持ちで話し出す。
「ん? ちょっと待って……。
「そうだけど、それがどうしたんだよ」
京子が大袈裟に仰け反り、驚きを表現している。
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