第25話:タイトラス領へ

~オルトナ領:街中~

「…次の目的地はタイトラス領か」(……あれ以上勇者と話すことなんて僕にはない…)

自分のやる事を頭の中で再反復させて北に向けて街道を歩いていく。

……

………

~オルトナ領・北の山岳の麓の林街道~

林の中は山賊を一掃したお陰か人の気配は無く、動物や魔物の気配を多く感じる。けど、気配がしても魔物が襲いかかってくる様子は一切無いのが不思議だが魔王が手を回しているのだろうと予想して人の気配が少ない方に向かっていく。

「………人の気配も無さそうだし、一気に行こう」

擬態から本来の姿に戻り、山の急斜面を矢が上に向けて放たれるようにかけ登って行く。

そうすること数十分…山の頂上に到着したのと

「…ちょっと強いけどいい風だね」

とは言うが、人が立って歩けないくらいには風が強い。

はるか遠くにタイトラス領の領主の屋敷が有りそうな城壁のような高さの壁が小さく3つくらい見える。

「…最北端に近い場所に城壁の街、そこ以外は南に行くにつれてポツポツと村と町がある感じなんだ…」

思っていたより広く西に向かえば1日でクレタゾール領に入れるが、北に向かえば移動に5日は最低でもかかりそうだ。

(けど……)

異形どうぞくを探知する羅針盤が北を示している。確かめに行くしかないどんな事になっていたとしても…幸せなのならばそれはそれで安心出来るのだから。

そう思いながらタイトラス領側の山肌を蹴って急降下下山して侵入する。

~魔王城~

「準備の程はどうなのだ?」

「伝達用の魔道具、兵站含め順調に進んでおります。」

「うむ、疲れているものには適宜休みを与えるように伝えよ。」

「はっ、承知しました。…所で我が王が気にかけている少年は今どのような状態でしょうか?」

「今は北部のタイトラス領に入ったばかりだ。」

「それにしても…真実なのでしょうか、フィアンマブル領にかの女神の怒りが落ちるなど…」

「私としても半信半疑だが、記憶として存在しているのと彼奴ガオウがこちらに敵意を向けぬようにする対策も必要だが、進捗はどうだ?」

「そちらも滞りなく進めております。」

「良き働きであると言う言葉と褒美を取らせておくが良い。」

「承知致しました」

「下がって良いぞ」

「それでは、失礼いたします」

臣下が下がったのを確認し、玉座の横にある机に置いた宝玉を見やる。

(……フィアンマブル領を守る事が魔族の存続に繋がるとは皮肉なものよ…ガオウの為ならば痛くも痒くもないがな…)「ふっふっふっ…♪」

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鉄の異形 比奈名鬼雅大 @Karume569

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