第7話:終わりへと刻む時間は刻々と…

~フィアンマブル家~

「治安維持と財政の管理って…拡がったりしたらから中々慣れないわね……」

弟であるガオウを地下で見つけ、その奥に部屋があるのを2人で見つけ知っていきつつ…その後、父上から当主としての席を譲られたり貴族間や収支や領地等、様々なことをしていたせいか4年が経つのはあっという間だった。

「お嬢様、お茶の用意が出来てますよ。」

「ありがとう、じいや。頂くわ」

「承知いたしました」

トポトポトポと、ティーカップにお茶を注ぐ音が部屋を包む。

「………」(最近ガオウは見に行くと鍛錬しているみたいだけど……やっぱり止めさせた方がいいかは分からないわね…)

「ガオウお坊ちゃまの事でお悩みですかな?」

お茶を入れたティーカップを置きじいやが聞いてきた。お茶請けの用意をした皿と共に防音結界を張る魔道具も机の端に置いてくれている。

「ええ、最近ガオウとあまり会話という会話をしてないのよ。しかも、お姉ちゃんじゃなくて姉さんって呼び始めて……」

ティーカップに入ったお茶を飲み、1口サイズのケーキをフォークで取り食べる。

「そういう歳頃なのです。……大教会の在り方を変える可能性があると思われます。」

「…そうかもしれないわね。(危ない橋を渡ることになるかもしれないことを考えると…)ねぇ、じいや…縁談の話はあるのかしら?」

「はい、もちろんですとも伯爵に陞爵した手腕と管理力は引く手数多でございます。」

「後で全部読むからメグラ隊に詳細に調べさせた情報もリストに纏めておいて」

「了解致しました。」

メグラ隊…フィアンマブル家直属の諜報部隊の名称でありレビティアが当主の席に着く時に発足させ適正のある身寄りの無い子供や貧民街の子供に帰れる場所として平均的な教育を施し平時はメイド部隊の一員として業務を行ってもらっている。適正の無い子供は同じく平均的な教育を行い里親を探し引き渡している。

「ふぅ…私はガオウと会ってくるわ、お父様への対応はいつも通り頼むわね」

「もちろんでございます」

執務室を出て1階に向かって降りる、ガオウの部屋は地下で部屋への階段自体が執務室からは遠いのが少々辛い。

チラッ…チラッ…

お父様に遭遇しないように警戒しながら地下へ向かう。

(…お父様の気配はないわね……)

カチャリ…コツコツ…

地下への扉を開け素早く入り階段を降りていく。

(……4年前は怖かったけど今はなんて事無いわね。あら、蝋燭が切れてる…後で補充しておかないといけないわね)

階段は長い間手入れしてなかったので所々蝋燭が切れて暗くなっていたが部屋に近づくにつれ明るくなってきた。

「……ガオウ?」

「姉さんか…伯爵への陞爵おめでとう」

自作と思われる鉄で出来た椅子に座って私への賛辞を述べた。

「あまり来られなくてごめんね」

「領主になったんだから忙しくて来れないのもこれからも更に忙しくなっていくだろうけど姉さんにはみんなが居るし何より…姉さんは優秀なんだからさ大丈夫だよ」

「……そうね、この家の当主としての責務は無くならないのだからね」

ガオウの言葉に違和感があったが今はそれを飲み込んだ言ってはいけないような気がしたからだ。

「…良い人は見つかった?」

「これから探すわ、優秀な私を欲しがる所は多いから」

「頑張ってね、姉さん」

「もちろんよ。あまり話す話題がないのは少し悲しいね」

「昔は色々姉さんから教えてもらったりしたからじゃない?」

「そうかもしれないね。お互い大人になった裏返しとも言えるわね」

「……そうだね」

「それじゃあ、また来るわね」

「うん、またね。」

コツコツ…と階段を登り扉をゆっくり開け廊下にお父様が居ないか確認して執務室に戻った。



「……(言いたいことはほとんど言ったかな…)…レーベ、居るかい?」

「メグラ隊レーベ、ここに」

「地図の新着はどう?」

「地形と建物の変遷はありますが大きく変わらない限りは来年に終わります」

「分かった。地図完成後の受け渡しが完了しだいレーベの任を解くよ」

「…了解しました。」

「任務とは関係ないけど…メグラ隊とお姉ちゃんのことは頼んだよ。」

「はい…では、失礼致します」

レーベの気配が消え、部屋に静寂が訪れる。

「……4年の間に兜さんは喋らなくなったから静かだね…」(地図が完成して…姉さんが子供を身ごもったら僕は僕の成すべきことを……)


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