第6話:異形とは…

「……どれから読めばいいの?」

『そうだな……これを読むといい』

カタカタと音を鳴らして本棚から1つの本を机の上に置いた。

「よいしょ…っと」

兜を机に置いて少し頑張って椅子に座り本の題名を見る。

「……なんて読むの?」

『言葉が少し古いからな読めぬのは仕方ない。題名は【生まれいずるフィアンマブル家の異形について】詰まるところ貴様や貴様が産まれる前にこの家に存在していた異形についての事だ』

「…そうなんだ」

『読み聞かせとなるが…確認するが寝るなよ?』

「眠たくならないから大丈夫だよ」

『了解した。』


これを読む者にこの家の初代として異形についてここに記そう。この記録は教会に知られれば家と共に抹消される危険性を秘めているため門外不出とする。

ごちゃごちゃ理論の説明をしても理解はしてくれないのは分かっている為、結論から言おう。

』これだけで分かってはくれないのも予測済みだ。

何故、祝福された者の総称が異形とされたのか…その原因はこの世界全体で信仰されている大教会が5年前の『異魔人大戦』にて祝福された者たちを利用するだけ利用して大戦終結後に祝福された者たちに更なる祝福のろいを与えた。この大戦の名称の時点で始まっていたのだろうと思っている。世論誘導は貴族として爵位が低い私たちに止める術は無かった……


「異魔人大戦っていつあったの?」

『350年前だ』

「…そんな前なんだ」

『続きを読むぞ』


その祝福のろいの表向きは「子孫を残せる」と言う物だが、私の妻とは既に子供が出来ていた。ちなみにだが異形なのは私ではなく妻であるし大戦時に背中を預けた仲でもある。

話が逸れたな、祝福のろいの本当の効果は…『人より少し長い時間を生き子孫は出来るが母胎が死ぬ』、ここに来てこれを読んでいる者が異形か、母親が死んだ事を知っているのであれば理解は容易いだろう。

私たちは回避出来たが恐らく曾孫辺りにこの祝福のろいを与えられていると私は思っている。子孫が見ているのならば謝らせてほしい、すまない貴方の母親を守れなかった……


「…………」

ここに僕が居る時点で祝福のろいから逃れることは出来なかったのは嫌でも解る。

『…まだ聞くか?』

「うん、僕に出来ることがあるなら先ずはそれを知らないとだから…」

『良かろう』


祝福された者とは何者なのかと言うと、この世界の人間・魔物が魔力で魔法を使うのに対しての総称である。彼ら彼女たちは、時間・獣・焔・嵐・鉄などと言ったような力としては大まかに分ければバラバラであるが共通することがありであることだ。ちなみに長命と言っても長命な種族は森人であるエルフや吸血鬼に比べれば短いが人よりは長い。

さて、各人の力の詳細は…全員分は無理だったが私たちと同じように貴族となった男と妻と同じく祝福された者である友達の2人と妻の力を次ページ以降に記そう。


次のページをめくると精巧な人物絵と共に様々なことが描かれていた。

「…綺麗な人」(目の色がお姉ちゃんに似てる気がする…)

『この家の初代で【鋼鉄女傑】と言われた女性だ』


クレア=フィアンマブル

祝福:鉄

やれる事はとても幅広く武具の即時生成から身体を覆う鉄膜であらゆる魔法や攻撃を無効化する防御力も併せ持ち、私も実際何度も助けられた。祝福された者の中で最も飢餓や疲れを気にする必要がなく、ことも出来るが彼女曰く「あの大戦時にそんな事するのは先が短いと判断した祝福者のみにしかしない」との事だが子孫の役に立つのであればいいと思い記させてもらった。


「……殺し喰らう…これが異形を殺す力?」

『ああ、貴様の姉はこの部分も見えないだろうが…気にする必要はない』

「…そっか」

『次に行くぞ。次は……【時間奏者】だな』


レベリオ=クレタゾール

祝福:時間

時間の観測、加速、遅延、逆再生、停止とシンプルながらに恐ろしい効力を持つ力を持っているだけではなく観測した数多の時間の分岐を瞬時に理解し選択する。「常人なら頭が持たないよ」とは彼の言葉だ。身体的特徴として背中に時計板が痣のように背中全体を覆うように現れている。


「クレタゾール……」

『今あそこは異形の力を道具のように利用して公爵の地位に至ってるな』

「…道具のように利用してる……」

『最後は……【獣狩りの烈女】だな』


ニミア=バイナリアーク

祝福:獣

魔族には獣型の魔族も居るのだが彼女と対面した瞬間負けとなり恐れられてる。高い身体能力と獣に対する特効を持ち匂いの識別と全てを噛みちぎり剥ぎ取る歯と爪を持つ獣を狩る獣。妻曰く平時はゆったりしているが戦いの際はスイッチが入り無言と苛烈になる。


『…今、こっちは獣同然の扱いしかされてないな』

「…こういう時何て言えばいいんだろうね……」

『報われない、と言うべきであろうな』

「報われない……」

『これから汝はどうするつもりだ?』

「どうするって……」

『ずっとここで何もせず姉が犠牲になり己が身を朽ち果てさせるか?』

「……どうやったらそれを…避けれるの?」

過去に生きていた祝福された者が今、異形と言われ虐げられている世界と大教会の在り方を否定しろ。その為に強くなるがいい』

「強く……」

パキンと何かにヒビが入った音がした。

『母体として優秀な姉を見殺しにしない方法もここにあるやもしれんな』

「……そうだね…」

『我は…既に亡き主の為に、お前は姉と異形たちの為に』(殻を破ったとなれば…計画を立てておかねばな…)

「うん…!」
















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静かに終わりへの刻まれていく……

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