外伝①

ガオウがバイナリアーク領の街から逃亡してから8時間後…

~フィアンマブル領への関所~

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

「水飲むか?」

「はぁっ…はぁっ…ください……」

「ほれ、飲め」

水の入った皮で出来た水袋を渡す。

ゴクゴクゴク……

「はぁー……ありがとうございます」

「まさか、休み無しぶっ通しで走り切るのは予想外だったな…」

「死ぬかと思いました……」

「そういう時は休めよ…」

「馬車で休むから良いんですよー」

「なら、来るまで寝ておくか何か食べとけ」

「は〜い」

そして、2時間後…

「レドガー様、馬車の準備が出来ました。」

「ああ、分かった。いくぞ」

「置いていかないでくださーい!」

ガタゴトガタゴト…

「フィアンマブル領ってどんな所何ですか?」

「フィアンマブル領はな…今までは特に感じることも無かったんだが貴族の間じゃ奴隷を真っ向から否定した上で領地の発展・拡充を成して伯爵の地位を得たその政治の手腕は優秀と言わざるを得ないな。」

「…すごい人ですね」

「ああ、俺が幼い頃に描いていた世界をあの領主様はその手で領地内とは言え成した尊敬に値するよ。」

「レドガーさんの幼い頃…」

「あん時は何も知らない子供だったからな…」

「あ、見えてきましたよ!」

「この領地は目に焼き付けとけよ」


~フィアンマブル家の屋敷~

「お待ちしておりました。レドガー様、アリステラ様。執事のバルセでございます。」

「…当主殿はどちらに?」

「実は……今、寝室にて眠っておられるのです…」

「「ね、寝坊!?」」

「いえ、そうでは無くてですね…」

「先日の夜から先程までお産でした」

「えっと…こちらのメイドさんは?」(いつの間に執事さんの隣に…)

「突然、失礼致しました。私はメイド第一部隊通称メグラ隊隊長レーベでございます。以後お見知りおきを」

「よろしくお願いします」

「メイド部隊の鍛錬などをしてお嬢様が起きるまでお待ちください」

「では、そうさせて貰うとしよう」

「メイド部隊の鍛錬法、学ばせ頂きます!」

「レーベ案内の程を、私はお嬢様の体調を見て来ます」

「承知しました。では、御二方こちらへ…」

「ああ、分かった」

「分かりました!」

レーベさんに促されるままに案内され…

~フィアンマブル家の屋敷・鍛錬場~

カンッ!カンッ!ヒュィィン……ダダダン!

「ラストスパートだ、全力降り絞って走れ!」


「うわぁ…すごい……」

「ほとんど女性だな…」

「フィアンマブル家はバルセを除いてメイドばかりです。男性陣はここで数年鍛錬とつきたい職につく為の教育をして街などで働いております。」

「有事の際には武器を持って守れる範囲は守らせようって事だな」

「ご察しの通りです。」

「ん?アリステラはどこ行った?」

「既に混ざって鍛錬してらっしゃいますね」

「はぁ…仕方ねぇな……」


「それでは、対戦よろしくお願いします!」(向こうは短剣ってことはスピード勝負かな)

「……よろしくお願いします」(持ち方が細剣っぽい…スピードでどこまで追いつけるか…)

シュンッ…カン!ヒュン!カカカカカン!

((…この人、早い!))


「…あいつ、どんどん本気のスピード出してねぇか?」

「お互いに相手の方が早いと考えているでしょうね…まぁ、私の方が速いですけどね」

「…そうか」(これマジで言ってるな…)


カン!ヒュン…!ガガ…ブン!……シュタッ!

「中々、速いですね…」

「速すぎません?本当にメイドですか?」

「メイドです。」

「……そっかぁ…」(世界って広いなぁ…)


その後、バルセが来る1時間の間模擬戦を勝敗関わらず何連戦も行うアリステラの姿があった。メイド達の間で噂になる程に…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る