第19話:領主の屋敷にて…
~ハステレイル領:領主の屋敷付近の街~
「………」(たどり着いたはいいけど…な、何だこの重苦しさ…)
現在、太陽の高さからして午前10時程で普通なら商店などが開いていく時間なのだが…この街にはそんな気配は一切なく、建物内から会話と思しき話し声と覚悟が集中した圧を感じた。
(確か…姉さんが結婚した相手がこの領主の弟だったかな…躊躇わず殺しちゃったけど姉さん達はあの後大丈夫だったのかな………けど…圧力をかけられてるなら今日終わらせればいいか…)
今歩いている大通りの先に屋敷が見える。街の人々が行動を起こす前に事を成すために足を早める。
~領主の屋敷・門前~
「…この屋敷に何用ですか?」
「これから反乱が起きるので早急に離れることをおすすめします……」
止められるとタカをくくっていたのだが離れることをすすめられるとは思わなかった。
「ここの領主と異形に用がある」
「「!?」」
「し、少々お待ちを……」
◆
「あの旅人、何も知らないのか?」
「領主=異形なのは他に知られててもおかしくないのにな…」
「どうする、通すか?」
「反乱が起きる前に済むのなら良いが……よし、通そう。被害が減るならそれでいい」
◆
(ひそひそ話してても丸聞こえなんだよねぇ…)
「お待たせしました。お通りになっても構いませんが、先程も言ったように反乱が起きますので早急に済ませていただきたいと思います」
「分かりました。あと屋敷から爆音が聞こえたら反乱の遅延をしていただきたいのですが良いですか?」
「…………?」
「………分かりました、出来る限りしましょう」
「ありがとうございます。」
「では、開けますね」
ガチャン…キィィ…
開いてくれたので屋敷の敷地内に入っていく。
コツコツコツ…
(それにしても異形=領主とは思わなかった…弟も居たのにどうやってなったんだろ……)
敷地内にも庭師やメイドが居るが楽しいという雰囲気は無く、怯えているように思える。
(……後天的な異形の発露でこうなったのかな?)
と、考えながらギィィ…とゆっくり扉を開ける。
カツカツカツ…
こういう事があるから人間だろうとそうでなかろうと並外れた力を本能のままに振るえば行き着くのは孤立と孤独と破滅だ。
(…音で場所は分かってるし、開幕から高火力でいこう。)
カツカツカツ……
そして、屋敷内を歩くこと数分後領主の部屋前に着いた。
(……行こう)スッ…
バンッ!
扉を横蹴りで勢いよく蹴り開け、部屋に突入しながら鉄機変換で両腕を龍の顎にして部屋の主に向け……
キュィィィン…
「は?」
ドゴーン!
◆
同時刻、屋敷の門前の門番はと言うと…
「おい!あの光なんだ!?」
「へ?」
領主の部屋から光がカッ!!と漏れたのを見た次の瞬間……ドゴーン!と爆発音と爆発と火炎が領主の部屋の壁を消し飛ばした光景を目にする。
「「……………」」
「反乱の遅延するぞ!あれは巻き込ませたらダメだ!」
「あ、ああ!」
(さっきの旅人、異形に用があるって言ってたが何者なんだ…!?)
◆
「…………」
プスプス…と直撃を免れた壁から焼き焦げた匂いがする。
「クソが…いきなり攻撃するなんて卑怯じゃねぇのか?」
「見てから避けれる場所に移動する時点で人間じゃないんだな、あんた」
「はっ…そんな事知った所で意味はねぇんだよここでてめぇは消えるんだからな!」
ドガッシャーン!
建物内に居るにも関わらず雷が僕に落とされる。プスプスと廊下が焦げる音がする
「雷・電気の異形である俺に人間が勝てる道理はねぇんだよ。」
「……確かに人間の一般人なら勝つことは難しいだろうね…人間ならね」
「なっ…てめぇ何で生きてやがる!?」
「何でって……あんたと同じ異形だからだよ!」
「それでも、ダメージはある筈だろ。一切無いのはおかしくだろうが!」
「言葉を返そうか、そんな事を知る前にあんたはあんたの力を喪うからな!」
有無を言わさず、外に飛ばす為にさっきと同じように
「ちっ……ミョレイル!」
ドガーン!
「…………」
無力化は出来てないのはピリつく肌で何となく分かった。鉄機変換で人の腕のカタチにして剣を構え様子を見る。
「主人の声にすぐ来てくれる武器ってのは忠実で良いよな!」
領主を護るように宙に浮き魔法結界のような物を展開している。
(あの鎚が魔剣にあたる武器…)
「これがハステレイル領に受け継がれてきた魔鎚ミョレイルだ。さぁ、味わいな!」
ゴロゴロゴロ……グワッシャァン!
「…!!」
バキバキバキ!
(……あ、危なかった。雷と同じくらいの凄まじいスピードだった…)
「最初から避けられるたぁ腕が鈍ったか」
「そうじゃないかな!」…ダッ!
距離を詰め剣を振るう。
ガキン!
「良い剣の振り方だな。だが…!」
ギギギッ…!!カァン!
「っ……」(押し切られた……純粋な力の差か!)ズザザ…
「……はっ…領民共が反乱せずに門前で止まってるか…この領地から出ず、叫べばどうなるか知っていると言うのにな」
「…今までこんな事をしてきたのか?」
「どんな人間だろうが、結局空から落とされる雷には勝てねぇ。死にたくないなら俺の下で命令に従って過ごせ、これが異形としての俺の当たり前だ」
この
「…あんたもフィアンマブル家に婿入りした弟も奪うことでしか得ることが出来ないならあんたには破滅がお似合いだ!」
行き場を見つけたその怒りは赤い炎から紫の炎へ変質させ拳から噴出する。
「出来るもんならやってみやがれ!」バチバチバチ…
(鉄機生成:
「なっ……」
部屋の高さの3分の2に及ぶ鉄の車輪を生成しその場で回転させる。
「疾走しろ…」「っ…打ち砕け…」
『
『ミョレイル!!』
グォォォォォ!ピシャァーン!
紫炎を纏い回転する鉄車輪と雷鳴を轟かせながら飛翔する魔鎚がぶつかり合う。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!」
鉄車輪に力を込める必要は無いなんせ折れる事も壊れる事も無い魔剣を素体にしているのだから。
「この時を待っていた!」
「な、ナニィ!?」
鉄車輪と競り合ってる魔鎚の制御に力を割いた時点で鉄車輪の目的は押し込んでいく事を続けていく以外は達成している。
二十本の鉄の触手を出現させ、ハステレイル領主の身体にドスリとぶっ刺す。
「クソガキがぁ!」
雷を落とすが効かない、この鉄の身体に感電して停止する機関は無い!
『異形を喰らう異形として汝の力を我が元に、汝が
今回のハステレイル領主は異形である為、異形としての機関を持っている。即ち███を機関ごと
ガガガガ…
「俺の…力を返せ…!」
(雷・電気の███と機関の回収を完了)「断る。ミョレイル!」
魔鎚を呼び回収しつつ触手を領主の身体から抜き出血処置を瞬時に施し死なないようにして鉄車輪の車線上に放り出す。
「さぁ、奪われてきた者たちの怒りを受ける
ヒュィィィィン…グォォォォォ!
「クソがァァァァァ!」
と叫びながら最初に空けた穴から屋敷の敷地内にある水場に弾き飛ばされて着水する姿を見た後…その場から立ち去った。
◆
ザバーン!
「あっちに領主が落ちたぞ!」
「開けるぞ!」
門が開かれ、水場に向かって領民がそれぞれの武器を持って向かう。どんな犠牲を払っても打ち倒すという覚悟で……
━━この後、どうなったかを語らずともこの領の行く末は薄々分かるだろう━━
◆
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