第21話:勇者の独白

~オルトナ領・防衛団詰所~

「…………」

今、勇者の卵である私アリステラはオルトナ領の防衛団詰所に来て防衛団の皆さんと稽古兼鍛錬の真っ最中である。

「やぁぁぁ!」

「……」

練習用の剣が真っ直ぐに振り下ろされてくるが…私の目には灰色のスローモーションで見えるのでゆっくりと剣の射程ギリギリになるように下がる。

そして、スローモーションで見えていた灰色の世界はまた色を取り戻し練習用の剣は空振りし…

パコォン!……カランカラン…

私が剣を飛ばして終わる。

「…アリステラ様は見てから避けるなんてすごいですね」

「レドガー様に叩き込まれたので…」

説得力のある嘘を吐く、知られない方が目立つことは少ないはずだから。

………

…………

誰にも知られていないし私しか知らない秘密がある。

私は……だ。

前世のことは良く覚えてる…病弱だった両親とは違う瞳の模様と色の性で健常者よりも身体が脆く長くは生きられないのだろうと医者は言っていた。

そして私は……その通りに高校を卒業する目前で家で静かに息絶え目を閉じた。

眼を開けた時、私は知らない空間に居て目の前に知らない男の人が居た。

「やぁやぁ、始めましてだね██████さん?」

「…あなた、私の名前を知ってるけど誰なの?」

「そうだねー…八百万の神様に仕え、個人・国・世界・夢・幻想を記録する者ってところだね。」

「そんな凄そうな人が死んじゃった私に何か用なの?」

「八百万の神様からの伝言を伝えにね、それじゃあ、言うよ。『君は本来ならば違う人が持つべきだったを与えてしまい人生を狂わせてしまい、申し訳ない事をした。そのお詫びになるかは分からないが君には別の世界で君が望む力と今持っている記憶をそのままに生まれ変わらせようと思うが、これは強制ではない。拒否権はあるしそうした場合は裕福な家庭を約束しよう』以上だよ。」

そして、私の目の前に2つの封筒が現れた。

「………どっちがどっちなの?」

「君から見て左が異世界、右が魂の漂白をして裕福な家庭に生まれ変われるチケットが入ってると思って良いよ」

「……………」

私は私の夢を思い出す…皆んなのように走り回りたい、キラキラしていたい…父や母のように誰かの為に頑張りたい…

私はいつの間にか左の封筒を手に取っていた。

「君は今、辛くとも輝ける星に手を伸ばした。その封筒を開けるといい」

言われるがままに封筒の封を開ける。そこには手紙が入っていた。

『こちらを選んでくれるだけの思いを決めてくれたみたいで良かった。誰かのために在りたいと思う君に異世界でそれを成すための力と肉体の下地を君に与える。努力した数だけ君はどこまでも強くなれる、幸運を祈ってるよ。』

「読み終えたかな?」

「うん、読み終えたよ」

「それじゃあ、道すがら説明するから着いてきてね」

「分かった」

促されるままについて行く

「君が生まれ変わる異世界は国は1つのみ国教があり君の世界で言う中世の建物が多くて魔物が存在している。」

「魔物……」

小説を読むこともありライトノベルの異世界転生系なども見たことがあるが大体似たような感じに思えるが国が1つとはむしろ世界としては狭いような気がする。

「どのように過ごしてもいいよ。勇者のたまごとして鍛錬するもよし民を率いる領主の娘でもよし。どう、生きたい?」

もちろん、決まっている。

「勇者になる可能性を秘めた可もなく不可もない家庭の娘に生まれ変わらせて」

「いいとも。最後に一言アドバイスをしようか、君がこれから生まれ変わる異世界での縁はどのような形や者であれど繋いでおいて損はないよ。

世界を星にする?どういうことだろう…

「僕からの選別もその時が来た時に渡そう。君なら使い方はすぐに分かるさ。君が求める力は人々の希望と未来の為にある事を願ってるよ。さぁ、ここから飛び降りたら異世界にたどり着き生まれ変わるよ。あと転生者なことは誰にも言ってはいけないからね」

「分かった。ここまで色々ありがとう」

「どういたしまして、君の転生先の人生に幸あらんことを」

「それじゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


━━『ここにまた運命の扉は開かれた』━━

…………

………

「………」

久しぶりにこの世界に来た時の記憶を思い出した。未だに世界を星にする、と言う意味は分からないけどレドガー様含む王国聖騎士団の面々とフィアンマブル家を除いて大多数のお偉いさんはあまり好きになれなかった……と考えているとカーン!カーンカーン!と警鐘を鳴らす音が聞こえ…

「警鐘!?」

「アリステラ様!2つの山賊の集団が街に襲撃してきました!」

「分かった。片方は私が担当する、防衛団はもう片方の足止めを頼んだ!」

「了解しました!」

守るべきものを護るために剣を手に取り迎撃に向かう。

━名も知らぬ異形に再開することも知らずに━

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