第20話:魔王との邂逅

時は遡り、ハステレイル領主との戦いから1日後…

~ハステレイル領北部~

「よっと…」スタッ

南部の方は森の割合が多かったが北に近づくにつれ岩場の割合が増えてきた。

(……そういえば魔物に会った事がほとんど無かった…何でだろ)

何故か魔物に遭遇する事がほとんど無く、ワイバーンの縄張りに入ったか狼の群れに遭遇した2回程度だ。

(まぁ、会ったら会ったで倒すだけなんだけど…)

ピョンピョンと岩場を跳ねるように進んでいく。

周りには誰もいない、居なくて当然だ。人間でもなく魔物でもない時点でどちらからも良い感情なんて与えられることは無い。

「貴様の姉以外は、じゃろ?」

「そうそう、姉さんだけだy……え?」

「待ってたぞ、フィアンマブル家の異形よ。」

「………誰?」

姉さんと同じような背丈で腰までありそうな長さの白い髪と青色の瞳と頭に存在感のある角を生やし胸の辺りに赤い眼のような宝石がついてる少女が隣に居た。

「人間が呼ぶ名で言えば…魔王じゃの」

「ま、魔王…」

「フルネームで言えばレクスラ=ネフィラムだがな」

「そんな魔王が僕に何の用?」

「現時点での貴様の力量を見に来た。

「……」

「そう力むな、どんな結果を貴様が見せようが貴様の姉が居るフィアンマブル家関係手を出さん。お互いの初代の約束は未だに生きているのだからな」

「…?」

「おっと、無駄口を叩いてしまったな。ここでは色々と戦いにくいであろう着いてこい」

「………」

逃げても追いかけてくるだろうという確信があるので魔王について行くしかない。

……

………

「ここでいか…」ブンッ!ブンッ!

「……えっ…?」

連れてこられたのはなだらかな斜面の岩肌場所。何故だった、のかと言うと魔王が手を振った瞬間にまっ平らな岩肌となったのである。

「さぁ、始めるとしよう。どこからでもかかってくるがい」

「………」(全力でいこう…!)

地面を強く蹴り鉄機変換で竜の顎にし火竜砲を至近距離で放つ。

チュドゴーン!パラパラパラ…

「領主の時とは比べもんにならんくらいの殺意で来とるな…それだけ警戒しているのは魔王として嬉しい限りじゃの…♪」

全くダメージが有るようには見えない。

「………」(当たる一瞬で魔力で防御壁を作ってたか…)

「…次はこちらからいくぞ、歯を食いしばるがよい…!」シュンッ…!

「!!」(速すぎる捉えきれない…!)

それは普通ならば純粋なパンチなのだが使う者が普通ではない場合、普通の定義が飛び抜けるのだ。

風を裂くようなスピードだが魔力を使わないのストレートパンチがみぞおちに一撃叩き込まれる。

「づっ…」

痛みはなくとも衝撃だけは殺しきれなかったのか身体が震える。

「耐久性も十分じゃの、朽ちることも折れることも砕けることも無いと言うのは単純ながらも強い力よな」

「……満足したのか?」

「防御面は満足じゃが、攻撃面はの評価は保留じゃの」

「…そうか」

「もう行ってよいぞ、後これもやろう。」

魔王から投げ渡された物をキャッチして見てみると…

「……方位磁針?」

「異形探知用の魔導具じゃの、領主=異形の血を引くとは限らんこともあったじゃろ?」

炎の異形たちのような場合も無くは無いと言うことを言っているのだろう。

「そうだね、有難くもらっておくよ」

「うむ、貴様の成すべき事に手助けが出来たようで良かった。それではまたいつか会おうかの」

「二度と戦いたく無いんだけど…」

「それだけは無かろう、貴様の最終目標は我の目的に近いからの」

そう言って周りの景色に溶け込むように魔王の身体が透けていった。

「……魔王の最終目標に近い…」

魔王の目的が何なのかは結局分からず、僕はオルトナ領に向かうことにした。

~魔城~

「おかえりなさいませ、我が王よ」

「出迎え御苦労、少しの間1人にさせて貰うぞ」

「了解致しました。」

……

………

~魔王の自室~

「………」(や、やっと…話しかけれたー!地下室でお父様が兜さんって言われて話してた時からずっと見てたけど見知らぬ人への塩対応も、怒って炎が赤から紫になる所も最高〜!)

ベッドで足をバタバタさせ、時折ゴロゴロ転がる姿から魔王の雰囲気は一切無く恋する少女がそこに居た。

そう、兜さんの正体は先代魔王が遠隔会話魔法で語りかけていたからであり、ガオウが『あなたも喋らなくなったね』と言っていたのはレクスラが遠隔でも話すのが無理なほどに堕ちていた。ベタ惚れである、もう一度言おうベタ惚れである。

なお、当の本人ガオウには一切その気が無くこの先魔王の行動に困惑を示すことになる。

そして何故、先代魔王があのような事をしているのかもまたおいおい分かるだろう。

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