第22話:オルトナ領にて①

オルトナ領の街が2つの山賊の集団に襲撃される3時間前…

~バスドラ領:谷~

「………」(…また山賊か、ここに来るまで4つの集団を見つけたけど…まぁ、気づかれてもここには来れないか)

今、僕はオルトナ領の山間部であるヒダリテ山脈とミギテ山脈が向かい合わせになる谷間の壁を鉄の触手を総動員して進んでいる。

━ちなみにこの谷間の深さは東京スカイツリーに匹敵してて横幅は三車線道路くらいあるよ(By前話の男より)━

(…けど、4つも山賊の集団が集まってるのは明らかにおかしいよね?)

と思い、地図を見る。バスドラ領は魔族が住む領域に近づいていく程に荒野になっていき王都側は1つの街道を除きほとんどが山に囲まれている。そのため、鉱山資源は豊富だが食料自給力が低く他の領地からの買い込みで賄っているため山賊の巣窟になる廃村があるのだとか…

そして、異形に関する事例が奴隷として外から連れてこられることを除けば無いのもこの領の特徴である。

(………何を狙ってるんだろ…それにしたって山賊が多すぎる…)

1つの集団に30人ほどが4つもあるのだ軍隊と言われても十分な人数だろう。

(…領の商業的な意味で中心兼領主の屋敷に近い街に急ごう)


そうして谷間の壁を移動して行くこと1時間半…


「まだ2集団居たの!?」

街に攻撃を仕掛ける山賊の群れを遠くの崖を滑り降りながら見ることとなった。

…正直言って、憎いのは人間ではなく教会であり大多数の人間に興味はないが……

『どんな立場であれ、傷ついた人や傷つけられそうな人に手を伸ばして助けたりしないと誰も見てくれないよ』

(けど、姉さんの言葉を裏切るようなことはしたくない…!)

その思考に呼応するように…

~オルトナ領:正門~

「…………」(守備兵が門前に居るとしてもこの人数は1人じゃ撃ち漏らしが出る…時間稼ぎが精々ね…)

「野郎どもやっちまえ!」

「く、来るぞ…!」

山賊たちが大挙としてこちらに向かってくる。

ルドガー様はタイミング悪く王都に招集されてしまったが、私に招集がかからなかったのはように思ってしまう。

(…けど、今はそんな事は考えなくていいここを守るために!)

地面を蹴り、自分の背後に氷の壁を作り上げ山賊の先頭に魔法で組み上げた風と火の刃を地を這わせるように放つ。

「あちぃーー!」

「ここから先には…行かせないから!」

「女1人で何が出来るってんだ!」

その返しはご最もだ。相手は三十人以上居るのだ、某炎の紋章のシュミレーションゲームの様に相手の命中率がゼロになる事は無いし英雄たちの影法師と共に死線をくぐり抜ける小説ゲームでも無い(まぁ、私は結末を見れずに死んでしまったけど…)辛さは何時だって隣にあったそれが私の現実ものがたりだ。

だからこそ更にこう返そう…

「諦めずに足掻くこと…!」

前世の事から奇跡も運の良し悪しも信用しないが信頼はしよう。

「なら、この人数相手に足掻いてみやがれ!」

数多の斧が私に振り下ろされるが、魔眼の前には全てが遅すぎる。武器を破壊し魔法をもって燃やし、剣で切り伏せていくこと体感十分くらい経った頃…

「づっぐぅぁっ…!」

山賊の半数を切り伏せたが、限界を迎えた魔眼の連続使用で頭に激痛が走り膝をつく。それに伴って氷の壁も砕け散った。

「けっ、あれだけ大口叩いて体力切れで戦闘不能たぁ情けねぇな」

「……まだ…終わってない…」

「いいや、終わりだもう片方も突破してるだろうしな!」

私に斧を振り下ろそうと山賊のリーダーが走り向かってくるが…

「いや、終わるのはあんた達だ。」

「誰だ!?」

最近聞いた事のある声と共に私とリーダーの間に青年が降り立った。

「……悪運が良いのかは分からないけどまた会うなんてね、名も知らない異形くん」

「……僕は君に会ったことは無いし異形じゃないんだけど…」

青年は私には会ったことは無いと言うが…その眼とその奥を間違えることは出来るはずがない冷たさの中に見えた、覚悟とほんのちょっぴりの優しさを見間違えだと思いたくないが……この世界だと異形とバレるのは迫害対象になってしまうというのを忘れていた。

「…私の見間違いだったみたいね。救援ありがとう」

「おい!無視して話すんじゃねぇ!」

「後で、間に割って入って助けてくれたお礼するわね」

「それじゃあ、人があまり居ない場所でお願いしようかな」(細剣じゃなくて片手剣なんだ…)

「良いわよ」(剣じゃなくて槍を使ってるのね…)

「1人増えたところで何だ!まだまだこっちには居るんだぞ!」

「その6部隊、全員谷間に叩き落としたよ」

「なっ……」

山賊のリーダーの顔が青ざめていく4部隊の数は分からないけど、全員叩き落とされたインパクトは凄まじいだろう。

「リーダーだけ半殺しで捕縛いくわよ」

「分かった」

そして、後ろに居る衛兵と防衛兵に声を張って言う。

「裏門の被害見てきて!場合によっては加勢と残党狩りになるってことの報告もお願い!」

「分かりました!」

やる気維持のために残党狩りの流れに持っていかせる。

「それじゃあ、終わらせようか」

「ええ!」

そして、一方的な残党狩りが始まった。

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