第23話:オルトナ領にて②

山賊の残党とリーダーを捕縛し、色々な処理をし終わるのに一日を要した。

~翌日~

「……朝か」

昨日フード付きのコートを羽織った教会の関係者が街中を歩き回っている音と気配があり、怪しまれないように宿屋の部屋を借りることにしたのは正解だった。

時計を見ると約束の時間まではあと五時間くらいだ。

今日限りなので、宿屋のカウンターで鍵を返却し街に出る。

(…ゆっくりする事なんて考えたこと無かったな…)

朝になったばかりで店のほとんどは開いてない故に暇だ。

(…山賊の根城に行こうかな)

正門を通り抜け、山の方に向かう。

ちなみに根城の場所は昨日山賊の六つの部隊を片付けた後に……

……

………

「ね、根城の場所は言ったぞ!か、解放してくれるんだろ?」

「うん、ちゃんと解放するよ」

触手で拘束していた山賊を谷間の上で解放した。

▂▅▇█▓▒ (’ω’) ▒▓█▇▅▂うわぁぁぁ!!

………

……

明日を生きたいと思っている人間を害する山賊に慈悲は無し、興味はなくとも狩る時は狩る。

(……人の気配も少なくなってきた、一気に行こう…)

人目のつかない場所に隠れ、本来の姿に戻り根城に向かっていく。


━何故、山賊の根城に向かうことにしたのかそして何故聞き出したのかはこれから判明する。そして、予想外の待ち構えている者も…━


~オルトナ領:山賊の根城~

(……闇と毒の異形どうぞくが存在してたなんて…)

「………あなたもあの人たちのようにが欲しいの?」

根城の最奥で、二重に███を持ちながら死ぬことなく今まで生きてきたその異形しょうじょが居た。

「…もう、君が知ってるあの人たちは戻ってこないよ」

「…そうなんだ……お兄さん、外ってどんな所なの?」

「…………僕や君が今の姿で過ごすことは無理な世界だよ」

「そっか…」

寂しそうな顔をしてその子は俯いて(いるように見える)しまった。

「…お兄さんは?」

「み、三つ!?」

「うん、三つ見えるよ」

「……ま、先ず最初の質問から答えr…」(人の気配…それも3人か!)

「お兄さん、確認してきて……嫌な感じがする…」

「もちろんだよ。戻っきた続きを話すよ」

「うん…」

毒の異形しょうじょが居る場所に通じる扉を鉄で固め、気配がする外に向かう。


~根城:入り口~

(…山賊は全員始末したはずなんだけど……誰だろう…)

入り口の物陰から外を見て何者か確認する。あの子が言っていたのと感じた通りに3人だった。

(……あの格好は教会関係者だけど見たことない服装だシスター服って感じでも無さそうだし……)

ここまで教会と宗教としての名前を聞くことも見ることも無かったので合っているかも定かでは無いが、本能が初めて怒りではなく怨みのような敵意を頭の中に発しているのはそう言う事なのだろう…


「隠れているのでしたら出てきてもらいましょうか。」

「我々に敵意を向けていると言うことは山賊の生き残りか…のどちらかですね」


「…………」

バレてるなら姿を見せるべきだろう。物陰から外に出る。


「やはり、異形でしたか」

「目撃の報告と結界の通り抜けの調査で来てみましたが教皇様の予想通りですね。」

「勇者様にもお声掛けしたのですが、『予定と昨日の戦闘でやめとく』と拒否されてしまいましたが我々だけでもには十分でしょう」


「…救うだと?」

聞き捨てならない言葉が耳に入った。大昔にも散々利用しておいて今もなお『救う』と言っておいて教会の正しさの為に利用しているのと何ら変わりない。

「はい、異形は生まれながらに悪であり呪いであり今は我々3人ですが六徒や二聖と教皇はその使命を持ってあなた方を救うために動いております。」

本能が怨みに染められそうだが理性を持って返す。

「………異形どうぞく異形どうぞくの手で打ち倒してこそ自浄作用がある。それでもか?」

「そういう者を育てあげたとてそれを続けてくれると確証はありますか?」

「ハステレイル領の領主みたいな場合もあるしなー!」

━これはどちらも正しい、育て上げる時の抑圧やその異形ものがどう在ろうとするかは誰にだって分からない。だが、それでも虐げて良い理由とはならない魔族であれ異形であれ人間であれ生きているのであるのならば…━

「……これじゃあ、お互いに傲慢で平行線か。救いは自分で見つける物だ、他人から押し付けられるものじゃない」

「……では、今回見逃す代わりですが1つ条件を呑んでもらっても良いでしょうか?」

「…内容による」

、ですね」

「おい!ミネア、こいつがそんな事呑むと思うか!?」

「人の命を害する人間への攻撃を擬態時には可とするんだったら呑む」

「…元々山賊はそこに含んでいないので良いですよ」

「わかった、その条件を呑もう」

「破れば執行対象として救いますからね。2人も良いですか?」

「……ミネアが決めたならそれで良い」

「はぁ…仕方ねぇな。ここで見たことは忘れとくかー」

「それじゃあ、お引き取り願うよ。怨みで思考を染められたく無いからさ」

「それは大変ですね。では、これにて失礼致します条件は守ってくださいね」

「言われなくても最初からそのつもりだよ。」

そう言って少女が居る部屋に戻る。

自分がしてきたことを話す吐く為に…

怨みが後ろ髪を引いてくるが、無駄に争う必要が無いならそれで良いだろうと結論付け異形しょうじょの元に戻る。

扉を固定していた鉄を外し扉を開けて

「お兄さん…無事だったんだね」

「話し合いで解決したから良かったよ。今すごく頭痛いけど…」

「…大丈夫なの?」

「落ち着いてきたから大丈夫だよ」

「そっか…」

「それじゃあさっきの話の続きといこうか。僕が何のために…自由になったかを」

「うん、聞かせて」

僕は自分の出自、実家でされた事、起きたこと自分がした事を語り…最後に目的を語った。

「最終的な目的は…傲慢かもしれないけどただそれだけだよ…」

「…そうなんだ。……2つ目の質問なんだけど…」

「ごめん、それに関しては良く分からないんだ……」

「うんん、大丈夫だよ」(魂が教えてくれたけど…お兄さんには教えない方が良いね…)

「…それじゃあ、僕は約束があるから行くね。」

僕は立ち上がり町で勇者と約束した場所に行こうとするが…

「…待ってください!……私にも終わりをください…」

異形少女に引き止められた。

「……その言葉は本心から言ってる?」

「はい、もちろんです」

まっすぐとした目でこちらを見てくる。

「………わかった。本当なら姉さんの所に連れて行く方法も考えたけど…君の意思を捻じ曲げてまでする事じゃないもんね……」

「あなた自身を責めないでください。辛くても何時だって近くに私たちが居ますから…」(と考えてしまうのは何でだろう…)

慰めの言葉は今の僕にはと言われたようでとても救われたような気がする。

「……ありがとう。君に会えて良かった…そして、さよなら…」

「忘れないでください闇に堕ちても光に焦がされても私が居ます今の気持ちを見失わずに頑張ってください……………」

言い終わりそれ以上喋らなくなった異形彼女の首を僕は一振りで切り、すかさず二十本の鉄の触手を1本に纏め…異形彼女

(……求められたとは言えこんな事しか出来ないのは本当に気持ち悪い……吐けないのに吐き出しそうだ)「…君の献身も言葉も忘れないよ」

そして僕は誰も居なくなった部屋の異形彼女が居た場所に落ちていた短刀を拾い上げ、町に戻ることにした。

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