第24話:オルトナ領にて③
~オルトナ領:町の噴水広場~
「約束の場所はここみたいだけど…何処に居るんだろう?」
人が多いので話し声の聞き分けも嗅覚は情報量が多いので使えないので、あの子がどこに居るかキョロキョロしていると…
「あ、居た居た。ガオウは時間ぴったりになるように行動するタイプなのね」
後ろから聞き慣れた声で話しかけられた。
「…待たせてごめんね」
「十分前に来てた私が早すぎるから別にいいのよ」
「そっか…それじゃあ、案内よろしくねアリステラさん」
「ええ、任せなさい要望通りの場所よ」
歩くこと数分、
「ここなら確かに静かだね」
「探すの大変だったのよ…あ、すみませんー予約していたアリステラなんですけどー」
「いらっしゃい、予約の通り1番奥の2人席空けてるよ」
2人で1番奥の席に座る。1番奥である為、こちらからも入り口からも見えにくくなっていて壁向こうに気配も無いので、安心出来る。
「……飲み物頼んでからにしようか」(…見るからに会ってから緊張してるみたいだし)
「ええ、そうしましょうか」(口調が固くなってる…こんな事ならもうちょっと人と話すことに慣れとくべきだった…)
飲み物を頼んでから来る数分の間一切会話が無く静かだった…
「ご注文の紅茶お待たせしました。」
「「ありがとうございます」」
「では、ごゆっくりどうぞ」(タイミングぴったりだったな…)
紅茶をひと口飲んで話を切り出すのを待ってみる。
「…………」カチャカチャカチャ…
前言撤回、こちらから切り出す方が良さそうだ
「そんなに肩の力入ってたら何も進まないから切り込ませて貰うけど、僕に何を聞きたいのか聞かせてもらっていいかな?魔法で音を外に盛れ出さないようにしてるからそういう事だろうと思ってるけどね」
「っ………」
正解だったようだ
「…あなたは闘技場で戦った異形くんなの?」
「ここでの事は誰にも言わないなら良いよ」
「もちろん、そのつもりよ」
「わかった。さっきの質問の答えだけどその通り、闘技場に居たのは僕だよ」
「やっぱり見間違いじゃなかったんだ…」
アリステラさんの緊張が解けたような雰囲気を感じた。
「…何で僕だって分かったの?」
「眼で分かりました」
「眼?」
「私は高圧的な人、人を道具として見てる人、領民を家族同然のように見て自分の立場に誇りを持つ人、と言う感じにその人の名前と眼を紐付けして覚えてるんです。」
それならバレても仕方ないなのかもしれない。
「そうなんだ。」
「…逆にあなたから私に質問はないの?」
逆に質問を求められてしまったけど、実家や姉さんの情報に繋がる質問はしない方が良さそうなので…
「…教会に対してどう思ってるの?」
「教会?…あー、ケアトル教ね。差別が当たり前になってるのは個人的には嫌ね。外からここを狙ってる魔物とか魔族が居るから仕方ないのはあるけど…あとフィアンマブル領には教会が一切無かったのは不思議だったけどね」
「確かに不思議だね。」
ケアトル教…最終目標はケアトル教の大教会の偉い人をぶっ飛ばすこと。の筈なのだが…それ以上の事をしないといけないような気がしてならない。
「あと、レドガー様と同じ王国聖騎士団の弓使いのアンドレイさんもケアトル教には嫌な顔しているわね。」
あのぶっきらぼうな顔をしてた弓使いも嫌な顔をするのか、と思った。
「質問はそれくらい?」
「うん、僕としては十分なくらいだよ」
「そう…最後に名前教えてもらってもいい?」
「…ガオウ、それ以上でもそれ以下でもないよ」
フィアンマブル家との繋がりは伏せる。
「そう、ガオウって言うのね。また会えたらそう呼ばせてもらうからね」
「…その次があったらいいけどね。それじゃあ、またいつか」
「ええ、また今度会おっか」
自分の代金を机に置いて店を出る。
「…頼んだのに1口も飲んでないなんてガオウって生命維持の為に何してるんだろ…」(………次があったら、か…)
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