第17話:侵入、ハステレイル領

龍と別れてから森や切り立った崖を駆け上がったりすること10…辺りは既に真っ暗になっていた。

「……やっと境界線に着いた…」

確認するように結界にけんを差し込む。

「……通り抜けも問題無さそうだね」

カツカツカツ…

(よし…ハステレイル領に侵入完了…それにしてもルートが逸れてる…領主の屋敷に直行するには直線上に人との遭遇が多くなる街道沿いか…)「とりあえず、下山しようかな…」

周りは真っ暗なので至近距離や下る方向に誰かが居ない限り異形と気づかれることはない。


ズザザザザザ……タッ…!シュタッ…ズザザザザザ…


そして、下山する事恐らく30分後…危なげなく降りきることが出来た。

「……山下りの次は森かぁ」

火の異形の力で指に炎を灯しながら進んでいく。夜の時間は魔物の行動が活発化するとお姉ちゃんから聞いたので無駄な戦闘を回避する為に獣の異形の力で気配を感知しながら進んでいく。

(……この暗さ、お姉ちゃんと初めて会った時に似てる…あの時はお姉ちゃんの顔全然見えなかったけど………………お姉ちゃんに何も伝えずに出たけど、終わらせるならこれしか無いから……)

━…現実逃避のような諦めのような強迫観念サバイバーズギルトに近しい覚悟を再確認して真っ暗な森の中を進んでいくと…


グルルルルル……と唸り声が聞こえた。


「………」(考えに耽ってたから察知し忘れてたけど狼型の魔物が……5匹かな)


闇夜の森に10個の目の光が浮かび上がる。


(今、脚以外は人間だから獲物として選んだかな…)「いいよ、かかっておいで」

炎を消して暗くするが夜目は獣の異形の力で効いてるので支障は無い。鉄の異形の力で魔剣ヴェトラス改め獣剣ヴェトラスを2振り出現させ構える。


ワォ!

全員が獲物を取り囲むように散開する。


「………」(待ちかぁ…けど、それはそれで…試せるかな!)

ダッ…!ガチャン!ブン!ブン!


キャン!キャン!


ザザッ…

獣の異形が何故『獣狩りの獣』と言われたのかが分かった。獣系にはが可能という事だ。今思えば、ワイバーンとの戦いも体当たりと噛みつきが不発になるように技を微修正されていた感覚があった。


━ワイバーンも獣判定となると初代の戦場での奮闘っぷりは凄まじいの一言になるだろうね━


(…もしかしたら、ただただ判定がガバガバなだけかもしれないけど……使いこなせるようにならないとね)


グルルルルル………タッタッタッ


(……生き残りやすいタイプみたいだね)

散開し様子見した瞬間に仲間が2匹やられた時点で威嚇しながら踵を返して逃げてくれるなら無理に追いかける必要はない。

「……自然が勝手にしてくれるかもだけど…奪ったなら最後まで、だよね」

20本ある鉄の触手を2本になるように合一させ…

「…いただきます」

バキッゴキッ…メキメキッ…グシャ…

肉や骨の砕ける音が触手からする…

「………ご馳走様でした」

血は痕跡として残ってしまいそうだが、仕方ないと割り切るしかない。

(………どれだけ異形どうぞくが居るのかは結局分からなかったけど、取りこぼさないようにしないと…)

ハステレイル領の当主が居る屋敷がある街へ駆けるように向かっていく。


~大教会~

(……ハステレイル領とバイナリアーク領の境い目でまた侵入反応…ですが、攻撃行動の作動することは無かった…)「それがまさか異形とは…これは由々しき事態ですね…」

水晶と水が張られた大杯に映された光景を見ながらかつて聖女と言われた教皇は考える。


━━早急な対応と救済はいじょをしなければ、と━━


異形は生まれながらに罪を背負い悪であり、忌み子であると少女は教えられてきた。そこに何の疑問も抱くことは無かった、のも聖女の仕事であると少女は認識した。

そして、少女は異形を含む魔物を救う奇跡ころすちからを身に宿した。この奇跡は教皇の関係者の立場に寄って効力が変わり教皇に近しい力を宿している『』、その二聖者それぞれ直属の3人である『』が上澄みであり全領に存在する教会の神父や信徒の奇跡の効力は低いが領と領、領と魔族の住む領域を隔てる結界の維持を担っている。

(それでも足りないとなれば……『王国聖騎士』に頼むとしましょう)


━王国聖騎士━

レドガーは王国騎士と(外伝では)名乗っていたが本来は王国聖騎士であり『聖烈刄』、『無尽聖弓』、『城塞聖盾』、『聖槍』の4人が存在する。


(……まずは二聖者に指令を出しておきましょう、おそらく六徒が行くことになるでしょうが…)

教皇は二聖者の元に向かうように部屋から出ていく。


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