第28話 売られた喧嘩は買いまっせ

 私は気が強いです。


 体は小さいくせに気だけは強いのです。


 最初に就職した職場は女性が多くてそれはそれは人間関係が大変でした。

先輩にもイジメられていたのに同期の女性にも苦手なのが一人おりまして、もう大変。


 彼女は今流行りの女性版ざまぁに出てくるような嫌な女の典型です。


 仕事はしないけど自分磨きには一所懸命。人の手柄は自分の手柄。


 いい男は全部自分のもの。誰かと話していたら当然割って入る。仕事の話してるんですけどと言っても聞かない。


 ある時、彼女が私に言いました。


「知ってる? 私ちゃんって皆に嫌われてるんだよ。皆が私ちゃんの事嫌いって言ってた、ぷぷ」


 いつもは適当にあしらって無視するんですが、その時の私は虫の居所が悪かったのかキレました。


「皆って誰? 今すぐその皆から署名貰ってこい! 住所、氏名、電話番号、捺印したもの100人いたら認めてやるよ! ほら今すぐ行って来い!」


 彼女は怯みました。


「だって、だって、本当に言ってたんだもん」


 なにが もん だよ、デカい図体してかわい子ぶりやがって


「だからぁ、誰が言ってんの? あんたの仲良しさんなんでしょ、今から事務所回って貰ってこいよ」


 キレているので言葉が乱暴です、我ながらちょっとどうなのと思うレベルに。


「だって、だって」


 彼女が泣きそうになったので私は少し落ち着きを取り戻しました。


「署名用紙の一番上に、私は〇〇〇子が大嫌いです。ここに署名します、ってちゃんとタイトル書いてから署名してもらってね、なんなら私が作ってもいいよ」


 そこで彼女は完全に黙りましたが、私より背が高く見下ろしてるくせにひ弱そうにする彼女、これ以上やると私がイジメているみたいに見えるかも。


 もういいやって、私は黙ってその場を離れましたが、何故かこういう人達に絡まれやすい私はきっとなめられているんだろうなと思います。


 そんなこんなで、意地悪な女が男を寝取る話とか執拗なイジメをする漫画が苦手なのです。よく広告で見るのですが、リアルでいるんですよ、ああいうの。マジ怖い。


 ちなみにこの彼女、いろんな恋愛遍歴のあと、取引先の会社の御曹司と婚約して結婚式の招待状まで出したそうですが(私には来ていない)直前に他の男とデキて破談したそうです。


 その他の男というのが、女慣れしていない実直なイケメンだったとか後輩から聞きました。

 御曹司はお金持ちだけど容姿が悪かったから本当は嫌だったんじゃないかと後輩が言っていましたが真相は分かりません。


 後輩も件の御曹司の結婚式に招待されていたらしく、いろいろと準備していたのに台無しになったのと今までの彼女の行いを知って縁を切ったそうですが、彼女の立ち回りがいかに上手かったのか、長い間よくバレなかったもんだと私は感心したもんです。


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