第12話 ある不動産屋さんのお話 2

 ある日の事でした。


 可愛いおじいちゃん常務が私を手招きします。


「私さん、ハンガーって分かる?」


「ハンガー?いわゆる衣文えもんかけの事ですか?」

 私はてっきり服をつるすハンガーの事だと思って昔風に言い換えました。


「それがね、知り合いの娘さんが100万円もするハンガーを買ったというんですよ」

 常務が不思議そうに首をかしげながら言います。


「100万円ですかっ!象牙でできているとか?純金で出来ているとかですかね?」

 そりゃ豪勢っすねーっと心で思いながら返事をしました。


「僕もね、聞いたときにそう思ったんだけど、どうも違うらしいの」


「なんでしょうね?」


「なんかこう、外国語で違った意味のものとかないかなと思って」


「じゃあ、英語の得意なSさんに後で聞いてみますねっ」と返事をした後で


はた、と思いつきました。


「常務、それってもしかしたら、版画ではないでしょうか?は・ん・が」


「はんが?」常務はきょとんとしてます。


「浮世絵とか、ほらほら」と手で四角く枠を作って見せてみる。


 常務はそれを見てハッとしたような顔をした後

くるっと社長の方に椅子を回して、


「社長、今日のお昼は何処にいきましょうかね」と話を変えました。


 あれっ、と思いましたが

私も今の出来事はなかったことにして自分の机に戻りました。


 しかしながら、どうしても誰かに言いたくて

Sさんだけにこそっと話しました。


 Sさん、大爆笑してたので私は満足しました。


 常務、ごめんなさいですw









 

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