第2話 シナリオセンター


 これもかなり昔の話ですが

某所にあるシナリオセンターというところに通っておりました


 そこには老若男女問わず職業も様々な人が集まっていましたが最大最強の共通点がありました


 それは映画、小説、漫画、アニメ、ドラマ、とにかくエンタメ大好きな人達の巣窟ということ


 パラダイスです


 そこに行けば楽しい話や興味深々な話、黙っていても知識が増えて朝までファミレスで語り合ったあの頃は人生で一番楽しかったと言っても過言ではないかも


 今でもあの頃にお題を出されて書いた短いシナリオを大事にとってあります。


 講習中のシナリオは講師の先生が添削してコメントを下さるのですがダメだしよりもやる気を出させるために優しいコメントばかりくれるので今でも読み返したくなります。


一緒に講習を受けている仲間の感想の方が正直キツイですw


 私が通っていた同期には小劇場の女優さんや脚本兼俳優さんもいて

特にプロの脚本家志望の年下君と仲が良くなりました。


 劇団の運営は大変らしくてアルバイトを何件もかけもって合間に脚本を書いて舞台も主催する。バイタリティーに溢れた好青年でした。


 シナリオ養成講座は半年で終わってしまうのですがその後はゼミという形で定期的に集まり出されたお題に沿ったシナリオを発表し合って感想を語り合う場が設けられ任意で参加できます


 そこには同期以外の方もいらしたので結構緊張しましたが年下君も居たので安心でした。


 ただ、一人、古参らしき男性のシナリオがどうにも毎回どこかで読んだことのあるようなお話で皆気が付いていると思うのですが気を遣って誰も指摘しません。


 ですが、尊敬する筒井先生の作品と酷似する内容に私が最初にプチっとなりました。

 感想を言う順番が私に回ってきたときに

「あ、えーと、凄く面白いんですが、筒井康隆さんの作品になんとなーく似ているなぁって思いました」とついに言ってしまったのです


 すると古参男性は明らかに動揺しながら

「筒井康隆さんはよく知りません」としらを切りました


 そうですか、ご存知ないんですか、あの独特の世界観を、せめて「時をかける少女」くらいは知ってますよね?私は全作品とは言わないですが結構な数読んでますんで、なんなら俳優として出ている映画も見てますよ

と、心の中で思いましたが流石にここまでは言えなかったので黙りました


 そして翌週の話です


 次に古参男性はある漫画と酷似した内容のシナリオを出してきました


 これがいけなかった


 古参男性がシナリオを読み上げた後にすぐさま脚本家志望の年下君が順番を待たずに立ち上がり

「それは「みゆき」の5巻21ページの〇〇のシーンとセリフだ!」


「みゆき」とはあだち充先生のラブコメです、私はアニメも漫画も読んだことないので内容までは存知ませんでしたがまるパクリだったようです


 しかし、私が驚いたのは巻数とページまで言い当てる年下君の記憶力でした


 私は真っ青な古参男性よりも年下君の蓄積された頭の中がどうなってるんだろうと

しばしポカンとしたあと、我慢できなくて横で爆笑してしまいました


 あだち先生の作品好きなのね~、だけでは語れない熱


 私も大好きな作品をこれくらい読みこまないとダメだなって今更ながらに思うのでありました。


 ちなみに古参男性は来なくなりました。


 彼はなんで自分で考えなかったんだろう、

シナリオは誰かの作品を脚本にする仕事も確かにあるけど

自分で考えたものがドラマや映画になったりした方が嬉しいと思うけどなぁ


 とか、偉そうに書いてますが私自身が何者にもなっていないのに

言えた義理ではないですね


 ただ想像するだけでも楽しいのになぁって常に現実逃避している私は思うのです


 シナリオの話を書こうと思ったら違う話になってしまいました

小説を書くのには参考にならないのですがネタとしてまた書くかもしれません




 

 ここまで読んで下さった方がいらっしゃいましたら

ありがとうございました。




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