第24話 依頼
タブレット端末上に表示された資料を、隅から隅まで見逃しがないように目を通していく。
テーブルの上には
「先に資料を渡したのは失敗だったかな……熱々のうちに食えば良いのに」
「これが私のルーティンなんだから、良いでしょ」
「作り甲斐がないんだよ、そういうの」
「いつものご飯はすぐ食べるじゃん……その、いつも、おいしいと、思ってるよ」
「デレた?!」
「ブリーフィング前にふざけないで」
「透が急にデレるからなのに……そう思うよな、
「……トオルは真面目、なのですね」
「まぁ。……これから、人の命を奪う事だからね」
そうして8頁程にびっしりと記載のあった資料を確認した後、タブレットをテーブルへと放って、そこでようやく目の前のトーストにかぶりつく。同時には決してやらない。これも、私なりに考えてみつけたやり方だ。
「確認終わったみたいだな。食べ終わったら、口頭で動きを擦り合わせよう」
「了解。……美味い」
「だろー? だからさっさと食べておけば良かったのに。
「ありがとうございます、でも、わたしはさっきの夕食でお腹いっぱいです」
「……私はさっき吐いちゃったから。食べ過ぎとかじゃないから」
「まぁ透の場合はいくら食っても……よし、じゃあ始めるぞ」
「わたしはここにいても良いのですか?」
「家族がどんな仕事をしているのかは知っていた方がいいだろう。身の安全の為にも、その振り方について考える上でもな」
そう言ってから薫子さんが手元のノートPCを操作すると、リビングに備え付けられたプロジェクターから、白い壁面に画像が表示される。
壁には男の写真や、背丈、体重、利き手、所属などさまざまな情報が映し出されている。
「標的は牛田四郎、年齢は44歳。所属は三雲製薬の第三開発研究部。依頼理由は、違法薬物の精製、及び販売だ。この販売ってところが、依頼者の怒りを買った」
「それが理由になるの? クリスタルとかエクスタシーとか散々出回ってきたでしょ」
「取引相手が拙い。相手は国内だけではなく、東アジアで手広くやっているバイヤーだ。ただでさえ国の恥である上、それをこれ以上広める訳にはいかないと判断した様だ」
「ふーん」
クリック音が響いて、また画像が切り替わる。表示されているのは、この後話す依頼遂行時の地図などだ。
「4月30日、21時に標的とバイヤーで商談がある。故に、遂行日時も同様にこの日の21時からとなる」
「一応聞くけど、標的が会社にいる時とか、自宅にいる時にやらないの?」
「わかってるとは思うが、これは『見せしめ』だからな。バイヤーの目の前で暗殺する事に意義がある。アタシたちに話が来たのもそれが理由だ」
「まぁ、その理由なら私たちが動かない事は滅多にないからね。もう一つ、バイヤーは狙わなくて良いの?」
「あぁ、あくまで標的は牛田のみ。バイヤーは生かす事で、対外的な恣意行為になる」
要するに、ただでさえ違法行為を行なっている標的。そしてソイツがその違法行為で作り上げたものを国外へ流出させようとしている。
それを阻止しつつ、バイヤーへは『この国で下手な事をすればこうなるぞ』と脅しをかけ、その恐怖を向こうの国へ持って帰ってもらう事が目的だ。話が早い、わかりやすくて良い。
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