第4話.戦場にようこそ。1

山を降りる道を進み、村を見下ろす尾根に出た。

集落のある盆地を見て驚いた。

村の外に沢山の人が居る。

馬車も馬も居る。

何かのお祭りなのか?

親父と一緒に山を降ってすれ違う男に驚いた。

「父ちゃん、兵隊だ。」

「ああ、そうだな…。アレは帝国兵だ。御領主さまの兵では無い。」

村に入り、忙しそうな村長に親父が話を聞く。

横で聞くに、どうやら帝国軍国軍が進駐して来た様子だ。

コチラの事情を親父が話すと村長は可成り苛立っていた。

「只でさえ戦争が始まって軍が来て食い物に困っているのに!!お前らの住む所はないぞ!」

「いや…。軒先でも良いのだ。義兄さんに話を通してほしい。」

「その帝国の兵士を村に宿泊させろと言ってきている。屋根は余ってない!!帰れ!」

「そんな!」

言い放たれ追い出された…。

そりゃない、今まで村に何度も貢献してきたのに…。

親父は熊も、狼も追い払ってきた。

「父ちゃんどうしよう?」

「こまったな…。家に帰るか…。」

毎年の雪の量を考えると動けない猟師が越冬は脂肪餓死フラグでしかない。

村の外で、親父と二人、呆然と腰を下ろす。

歩く兵達の装備は薄手の防水布のコートだ。

鎧は着て居ない。

装備もおかしい。

士官の服は生前は歌劇でしか見ない、肋骨ロープボタンだ。

馬車の数を数える。

鉄砲を持って要る兵隊は居ない。

やはり、この世界に鉄砲は無いのだ…。

皆、サーベルと槍、小弓を持っている兵も見えた。

「おい。家に帰るか?」

急かす親父の声に正気に戻る。

今更帰っても家に食料の備蓄は無い…。

ソレは自殺だ。

「ダメだね…。何とかするよ。」

兵隊に劇を飛ばすヒゲの房付きに注目する。

あの人は下士官でも上の方だ…。

多分話が分かる。

一通り、怒鳴り声が終わった下士官に声を掛ける。

「隊長さん、隊長さん。ガイドを雇わないか?」

声を掛けた下士官は怒りの目で振り向いた。

ココは芝居を打つ所だ。

「この先、国境までの山を全て知っている猟師だ。指揮官殿にご挨拶をしたい。」

僕を見下ろすと驚いた顔に変った。

そうだろう、鉄砲も無い世界に地理を知る人間は貴重なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る