第29話.士官学校へようこそ。1
第三軍団で戦時准尉として働きながら。
士官学校の情報を仕入れた。
暇そうな
喫茶で文字通り茶飲み話で必要な情報は集まった。
年寄りから自慢話を聞くだけだ。
初めは固いが自己の境遇を話すと途端に砕ける士官が多い。
年寄りは自慢話が好きだ…。
年配の万年少尉や中尉は騎兵見習いからの叩き上げなので話は直ぐに集まる。
どうやら、見習い上がりの戦時准尉は候補生学校へ行くのが道らしい…。
昨今の騎兵は騎兵学校出の生徒が多い様子だ。
しかし、候補生学校は士官学校内に戦時開設の場合が多いらしく今はクラスが無い。
騎兵科の士官学校からでは工兵士官への道は険しい。
困難な進路に…。
困った顔になると、途端に縁談の話に突入するのには困った。
多くは”俺の姪っ子(一桁歳)の婿にどうだ?”とか、”メガロニクス搭乗員で行き遅れだが…。姉さん女房も悪くないぞ…。(上官)”という謎の勧誘を受けた…。
初めは理解できなかったが…。
貴族の
戦闘を経験した少尉が、この先生きのこっている時点で可笑しいらしい。
普通に命を刈っているだけだ。(命の遣り取りがデフォの猟師基準。)
食べる為ではないが仕方がない。
第一軍団の
「お前の撃破徽章は本物か!!」「この!下賤な」
「はい、皇帝陛下の名に置いて受領しました!確実に敵メガロニクス搭乗員を殺傷しました。」
「…え。女の人殺したの…。」「「ざわ..。ざわ…。」やべぇヤツじゃん。」
「敵でございます!顔も覚えておりません。」
「いや…。」「女を殺すのは…。」
「敵は女としても軍属の兵、士官でございます。敵兵ならば是を制圧する必要があります。」
「「「えー。」」慈悲はないのか?」
そんなもん生き残ってから言えよ。
「敵王国軍士官を殺傷して多くの戦利品を取り上げました。」
敵士官から奪った剣を掲げる。
血を吸った剣の威力はすごい。
簡単に准尉たちは道を開けるようになった。
なお、士官学校の数は多く、概ね、
但し軍籍を持っている場合は…。(後で苦労する事になった。)
後は下士官学校というのも併設されている。
此方は、所謂、伍長や軍曹の専門教育科目で兵科専門下士官の育成学校だ。
どうせ工兵士官を目指すならメガロニクス課程がある学校に行きたい…。
しかし、メガロニクス課程が在るのは南方の方が多い…。
主戦場が南方だからだろう。
帝都の近くにも士官学校は在るが…。
クルーガー騎兵少尉の話では高貴な貴族の子弟が殆どだそうだ。
どうも合いそうに無い。
クルーガー騎兵少尉も”止めておけ。”と忠告してくれた。
「では、ハーヴェスブルグ士官学校は如何でしょうか?」
「ハーヴェスブルグ士官学校…。知らんな。」
「南方のニューライヒ領の士官学校です。普通(歩兵)と工兵、メガロニクス課程があります。」
「ふーん。ああ、あそこは騎兵学校が別にあるからな。」
考える素振りのクルーガー騎兵少尉が続ける。
「騎兵は騎兵学校へ行くが…。確かにお前なら騎兵学校は合わないか…。」
勝手に納得する騎兵少尉。
「一般(士官)を目指そうかと思います。」
「うむ、そうだな。ソコまで離れれば中央貴族の柵も無いだろう。悪くない考えだ。」
「はい…。ではニューライヒ連絡所を訪ねようと思います。」
さっそく、帝都のハーヴェスブルグ士官学校の連絡所に向かう。
正確にはニューライヒ領の帝都の事務所だ。
この程度の私用でも軍馬を使える。
乗馬して建物前で降りる。
当初は皇帝陛下の御璽を受ける様に対応する地方官僚。
「入学用の書類を取り揃えたい。」
戦時准尉の姿で要件を言うと…。
緊急呼集を受けた部隊の様な慌ただしさで奥に通された。
「第三軍軍団、オーウェンドルフ連隊所属…。ガリル・イエーガー戦時准尉殿…。」
身上書を確認の為読み上げる…。
貴族の官僚。
どうやら軍務経験は無いらしい。
読み上げる軍籍票では動員伍長の時から軍に居た事に成っていた。
身分は騎兵見習だった…。
僕の出身は生まれた村だが、どっか知らない貴族の従者扱いだ。
書類をでっち上げたのだろうか?
困惑気味の…。
多分偉い役人の読み上げに頷く。
「戦争が続けば士官に成って居ただろうが、戦争が終わってしまい学校に通う羽目になってしまった。ハーヴェスブルグ士官学校に入学したい。」
士官の様に話す。
「それは…。お気の毒に。申し訳ございません。候補生も受け入れているのですが常設ではないのです。」
椅子を勧められるので座る。
「そうか、仕方が無いな。まあ、生きているだけ儲け物だ。」
冗談だが笑わない役人(光るメガロニクス撃破徽章)
「しかし…。何故、我が学校に?」
「普通科(歩兵)とメガロニクス操縦課程と下士官だが工兵課程がある。騎兵服は身体に合わないので歩兵士官か工兵士官に転科したいと思っている。」
騎兵少尉の心得。
偉そうに身体を崩し足を組む。
この時、ブーツに汚れが在ってはいけない。(監修:クルーガー騎兵少尉)
「なるほど…。」
可笑しな話だが僕は
学校に通い歩兵士官で卒業しないと一般士官に成れない。
同時に工兵課程を受講すれば工兵士官を名乗れる。(過程を受けなくても騎兵と歩兵を名乗っても良い。)
「解りました…。書類を取り揃え、解る者を用意します。来週この時間に取りに来てください。」
うん、良かった。
騎兵少尉っぽく偉そうに返す。
「ああ、よろしく願う。」
後日書類を取りに来たら学校関係者から直接解説が在った。
親切な物だ。
「確認でございますが、貴官は現在、戦時准尉であるが、軍籍上は伍長である。よろしいでしょうか?」
「ああ、そうだね、慣例上、戦時准尉を名乗っている。」
「はい、理解しています…。冬には自動的に准尉に昇進する事に成ると思いますが、在学中は全て伍長の階級章を付けて欲しい。」
「何故ですか?」
階級は曖昧だが身分を偽る事が出来ない。
紳士は自己を偽ることが出来ない。
そう教育された。
「講義を行う教員が全て軍籍という訳ではないのです、一般の教員が准尉待遇なんです。」
実務的な問題か。
「ああ、なるほど。」
如何であったか考える。
前の世界では階級では無く講師と言う立場に敬礼する物だと聞いていた。
その弊害だろうか?
「校内だけの処遇なので、学園の外では准尉の階級章と戦時昇進徽章を付ける事になります。」
無言に付け加える学校の関係者…。
面倒だな…。
無言の執務室の中…。
「解りました…。其の他徽章は?」
一転ほっとした顔が一瞬で困惑に変わる。
「それは…。」
学校関係者が返答に困っている。
「皇帝陛下より授かった徽章は帝国に対する貴方の献身を示すものである。公の場合は必ず付けなければ成りません。」
横の一番偉い役人が口を出す、強い口調だ。
気圧される学校関係者。
答えて掛かる。
「うむ。」
入学に係わる書類にサインする。
全ての書類は揃っている。
連隊からの推薦状に、軍籍の書類。
全て受け取る役人。
「はい、確かに承りました。入学日、三日前から前日までに寮に入って下さい。」
「了解した。」
伍長なら下士官の制服を調達しなければ…。
お古で良いだろ。
外出するときは騎兵服を着よう。
簡単に考えていたが僕は面倒な立場に居る事をこの時知らなかった。
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