第6話.戦場にようこそ。3

不思議な事に帝国軍が真っ先に作ったのが厩舎だった。

馬は大事らしい。

兵舎が形になって監視塔もできると。

次の案件に入る、食料の補充だ。

簡単な話だ、兵隊が狩猟にでる。

猟師イェーガーでガイドのガリル氏だ。こんな成りだが伍長待遇なので留意せよ。」

軍曹の紹介で兵が皆嫌な顔をする。

「紹介に預かったガリルだ。キミ達は兵隊だが山では一歩先に死が待っている。たぶんボクの言うことは三つだ、動くな、黙れ、下がれ。よく覚えてくれ。」

言葉を交わした兵は皆、嫌な顔をする。

仕方がない、僕は兵達の全てより若い。

だから兵隊たちより優秀で無いと理解するまで僕を信じないだろう。

白く染まった山に、兵隊達を引きつれ入る。

直ぐに兵隊の足取りが乱れる。

仕方が無い、こいつ等は獣の耳を持っていない…。

騒々しい新兵を従え、斜面を進む。

鹿や、イノシシ、熊は無理なので。

罠の巡回と鳥を獲って帰る。

小休止で立ち止まり、兵が軍用の地図を書いて居る。

僕はアドバイスする聞かれた事を話すだけだ。

軍は一応このあたりの地図を持って来たが、僕が記憶で書いた地図とかけ離れているので検証しているのだ。

途中に薬草になる草や腹の足しになる木の実を集める。

猟では諦める事が多いが大人が多くて手が空いているので拾える。

これは重要だった用だ。(後で軍医に感謝された。)

帝国軍は蛋白質の必要最低限量を理解している様だ。

今日分の食料を腰に下げ、駐屯地に戻って来た。

残った兵士が刈った草原に火を付け焼けた炎を見守っている。

即席の農地にする為だ。

後は軍馬を使い村で借りた重量鋤で起して蕪の種を撒く。

「まったく!土いじりがイヤで軍に入ったのに…。」

煙を見上げ、兵隊がぼやいている。

「軍人は生き残るのが仕事だ。」

後ろから声を掛ける。

「え?いや、すいません。コレは。」

一往、伍長待遇なので敬礼する一等兵。

結構。若い。(僕よりも10歳は上。)

「農業も猟師も軍人も生き残るのが仕事なんだ。皆、相手がちょっと違うだけなんだ。」

「おう、良い事を言うな、動員伍長。お前らも生きる為だから仕事の手を抜くなよ。」

軍曹殿が出てきて僕も敬礼する。

民間人だけど伍長待遇なので僕も偉い人下士官以上に敬礼しないといけなくなった。

数日もするとぼちぼちと罠に鹿が取れ始める。

止めと解体は兵隊がやる。

大人が遣るので速い。

革は貴重だ、皮をなめして防寒コートを作る為だ、帝国軍の装備は防水布のコートだ。

到底冬山で動ける装備ではない。

出来れば三割75人分のコートが欲しい。

雪の中で動けなくなる。

三交代だと三割ほしい。

兵舎の乾燥室とサウナは稼働している。

端切れでも貴重な燃料の薪は壁と屋根だけの第二兵舎をどんどん埋めて行く。

もうすぐ、将校用の丸太小屋も完成だ。

トイレ用の巨大な桶が4個出来た。

後は雪囲いと通路だけだ。

順調に育つ蕪を見ながら、保存用の塩漬けと燻製肉が出来る。

遂に村に初雪が降った。

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