第20話.軍隊にようこそ。6

すったもんだのあげく…。

僕は軍人として生きる事に成った。

軍の定年は早いので、その後の身を立てる為には知識が必要だ。

若い内は良いが歳を取ると直ぐに放り出される退役らしい。

若い内に軍には才能が在ると見せかけて…。

教育を受けるのだ。

退役後に喰っぱぐれないように…。

出来れば年金が貰えるまで頑張れば、故郷で優雅に猟師生活だ。

なお…。中隊長殿は退役が決まっていたらしいが…。

越冬の成功と巨人メガロニクスの捕獲で宙に浮いてしまったそうだ。

4機目の鹵獲に執着したのも軍人年金の増額が見込める為らしい…。

兵の噂だ。

但し中隊全員に報奨金が分配される計算式があるので。

中隊全体に恩恵はあるのだ。

指揮官として覚える事の一つらしい。(鹵獲品の兵の分配方程式。)

最近の僕は、山の中を巡回している。

理由は増援部隊の山の偵察に道案内ガイドとして付いて行った時、王国軍を発見した為だ。

手隙の者が居なかったので偶々、久しぶりに山の巡回に出たら一発で発見した。

国境の山の稜線の向こうだったが、焚き木の煙空の揺らぎを発見。

その為、僕は馬房から一時、離れ。

長距離偵察に組み入れられたのだ。

歩兵少尉の指揮で三日かけて稜線の向こうが見える山頂部まで登山した…。

敵に発見されない経路を辿ったので時間が掛かったのだ。

そして見えたのは…。

「王国が国境近くに監視所を設置するとは…。」

初めて痕跡を発見したときは唯の野営かと思ったが…。

石を積んで、屋根を葺き明らかに建物を建てている。

あんな水のない所で良くやる…。

雪解けが進んだら飲料水は下から持ち上げるしかない…。

無論、雨水を集める事は可能だが、水槽の様な物は無い。

木の板にスケッチする。

「お、隠蔽した煙突を発見!ストーブか暖炉がある様子です。稼働しています。人数は…。外に三人。内部は不明。」

風が強い場所なのに良くやるな…。

「人数が推定出来る物はあるのか?」

新顔の少尉殿が質問する。

「不明ですね…。半地下なので広さも解りません。無理すれば40人位は行けますが最悪の寝床ですね。」

「作られた時期は?」

「不明ですが…。煙突は未だ新しいと思います。雪解け後ですね。」

「そうか…。以前には無かったのだな?」

「少なくとも私は知りませんでした。既に在ったかもしれませんが、未だ稼働していなかったと思われます。あそこで冬は越せません。夏用の樵小屋を改造したのかもしれません。」

理由が有って王国側が作った物である。

登山者の避難小屋程度は有ったかもしれない。

続ける。

「国境全体の監視にも向いた場所ではありません。巡回の中継所だと考えるのが良いと思います。それでも街道から随分と外れていますが…。」

もっといい場所に作るハズだ。

水場が有る場所とか…。

「何かを監視する為に作った物だと思うか?」

「国境監視網を作るなら…。以前、最適な場所を報告しました。予備陣地にしては辺鄙な処に有ります…。水を上げるにも交代も大変です。」

「ならば、あいつ等が監視したい物が有るのだ…。何が見える場所だ?探せ。」

「はい…。あ、更に三人発見。南の稜線から…小屋に向ってます。」

姿を…。流石に遠くて見えんな。

「あの尾根の稜線から来たのですね…。ああそうか…。」

「何か有るのか?ガリル見習。」

「アレですね。巨人メガロニクスですね。」

「なに?」

「あの山の稜線からなら4号機、我々が回収を諦めた巨人が見えます。そうだな…。街道の…。王国側ならあの山小屋が見えるハズだ…。天気が良ければ旗で交信できる。夜なら点滅信号でも。」

「そうか…。明日も監視して変化が無ければいったん戻ろう。」

「了解、天気は明日の昼間では持ちます。明後日は朝に成らないと判りません。」

「よし!天候の変化が有れば直ぐに報告しろ。」

「了解!」

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