第21話.軍隊にようこそ。7
その後、頻繁に王国軍の偵察隊が発見された。
今まで有った様な国境での偵察で無く。
越境が行われている。
無論、コチラの監視を知ってか知らずか…。
小隊単位での侵入を繰り返している。
毎回、目的地が有る様子で。
地図を見ながら、移動して。
到着すると何か作業を行って撤退している。
恐らく発見されるまで繰り返す心算らしい。(既に発見されている)
情報が集まると、士官が集まっての会議で…。
なお、階級が一番下の僕も参加させられている…。
良いのかね。
「敵は目的地まで進出の間も何らかの作業を行っています。そんなに時間を掛けていません。」
歩兵指揮官が報告する。
「そして、鹵獲品の中に同じ道具を見つけました。おい、見習。」
言われたので用意していたブツを出す。
「はい、コイツです。」
遠目で見たが間違いない。
鋼鉄のバールの様な物…、取っ手が丁字で先っちょが尖っている。
取っ手の下には鉄の円筒形の錘が貫いて動くが、抜けない様にピンが下に有る。
「ソレは地面の固さを調べる道具だ…。」
工兵少尉が話す…。
あ、ホントだ先っちょに目盛りが振って有る。
全員が敵の発見地点と移動経路の書き込まれた地図を見る。
「と、言う事は…。敵は又メガロニクスを出す心算か?」
新しい少尉が呟く。
「それはおかしい。」
今の谷底は湿地、いや池に近い。
「巨人にとって最悪の足場だ。街道を外れている。」
「斜面ではメガロニクスの戦闘は不可能だ。出来るならソレこそネームドだ。」
「再侵攻で同じ経路を使うとは思えん。」
古参の少尉は否定的だ。
敵の偵察は傾斜の緩い場所に集中している。
大回りしているが目指す経路は谷底か…。巨人だ。
「発言をよろしいでしょうか?」
「なんだ?見習。」
「敵の目的はメガロニクスを回収する事では?発見した敵の偵察隊の経路は此方に向っていません。」
街道に巨人を出す間を調べているのなら意味は解る。
「うむ、そうだな…。」
「いや…。不可能だ。」
「
工兵少尉殿に尋ねる。
おそらく出来ると思うが、識者の口から出るのでは重さが違う。
「確かに操者が居れば登れるかもしれん。無論、
やはり、巨人が歩けるなら回収出来たのか…。
「停止作業をしてある。」
不機嫌そうな中隊長殿の声だ。
「はい、ですがあのメガロニクスは王国製です。」
「動かせるのか?」
「ソレは向こうも知りたがるでしょうね。」
「メガロニクスを調べに来るか…。」
「もう既に偵察済みかもしれません。停止措置で外した水晶は機体番号が解れば工房で複製できます。製造には時間が掛かりますが…。」
「どれほど時間が掛かるか?」
少佐殿が尋ねる。
「急げば一月でしょうか?遅くても三月で出来ます。」
「解った…。おい、見習。敵の監視所は雪解け後に改造されたと報告書に在ったが根拠は何だ!」
少佐殿の質問は最後は語気を孕んだ叱咤だ。
「はい!煙突は新しいもので石組みでした。あの場所は風が強いため、あの程度の石組みでは直ぐに崩壊します。」
「なぜ風が強いと解る!!」
「植物の植生でしょうか?」
「なに!」
「風が強いと木は曲がり育ちます。更に強いと地面に沿って生えます。伸びる方向で常時何方に風が吹くか遠くでも分かります。」
手の平で空中に書いて説明する。
「そうか…。」
良かった納得した様子だ。
少佐殿の表情は未だ固いが…。
別の大尉が発言する。
「監視所の敵の総数はどの程度であろうか?」
「三名単位で行動していました。拠点の広さから推定する兵員は最大40人程度。複数の監視点を持っている様子です。」
「恐らく王国軍の編成の
中隊長殿が助け船を出してくれた。
「監視所が敵の越境分隊を支援していると考えると…。最低一個中隊が国境の向こうにあるのか…。」
「山の中で戦闘はできません。」
「此方が姿を現せば恐らく相手も逃げます。」
「メガロニクスが有る限り何度でも越境してくるでしょう。」
「その都度、追っ払う程度ならできる。」
「わたしは…。」
連隊長が発言してガヤが止まる。
「私は敵を撃滅したいと考えている。」
困った事を言う少佐殿だ…。
士官達が顔を見合わせている。
誰も発言しないので茶化す。
「ならば、待ち伏せで、忍び狩りですね。
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