第19話.軍隊にようこそ。5
色々と顔なじみの下士官達からの話を総合すると、どうやら兵士には一人づつ預金口座の様な物があり。
俸給と年金はソコに振り込まれる様子だ。
兵舎の物販の購入品はソコから引き落とされ。
通常、慰安所を開設した商人は代金を連隊に請求して、主計が清算しているそうだ。
無論、全てが揃っているハズの兵隊暮らしにも小遣いが必要なので毎月定額で軍票が支給されている。
ソレを清算するのが主計の仕事らしい。
昨年から越冬した中隊が既に、動員した物資や手間賃を…。
手間賃や
軍票では無い、後払いは、金額で可成り揉めるのが通常らしい…。
鹵獲品の
しかし、
そして村への協力金は領主に支払われている。
多分、親父達…。いや、村人は知らないのかもしれない。
村の人たちは損していない心算なので黙っていた方が良いだろう。
何せ、村人はお金持ってないし、今までも村の中ではお金でやり取りしていないのだ。
村長位は知っているかもしれない…。
でも、今後、代官との交渉を有利に出来るのなら誰も不幸に成らないのだ。
困った事に、俺の口座通帳(概念)を誰が持っているのか解らない。
今までの生活に困らないがこれからの生活に困る。
その機会が直ぐに訪れた。
親父と村長が駐屯地に来たのだ。
主計の建物の影に立つ親父を発見した。
「親父!!」
「ひゃ!おお、ガリルか…。どうした?」
慌てる親父…。
コレ…。何か隠している時の親父だ。
「いや…。何か言いたい事がいっぱいで何から話そうか…。ああ!支度金だ!!」
「ソレはな…。すまんガリル。借金が有って使ってしまった。」
「借金!?」
ソレは知らなかった…。
今までお金は見た事無かったから…。
「ああ、税金を…。な。村長に借りてた。」
そりゃ仕方が無い。
「なんだ…。そうか、借金か、払いきれた?」
そりゃ親父が山から下りたくない訳だ。
「十分だった、ソレで残りをな…。使ってしまったんだ。」
「何に?」
「支度金だ…。」
「え?だから支度金?」
「お父さんなあ…。再婚する事成ったんだ。」
「再婚!誰と!?」
まあ…。親父の歳なら有りか…。
「ほら…。お母さんの従妹の…ネリー叔母さん。」
「ネリー叔母さん!!」
確か、一昨年前に旦那さんが流行り病で亡くなった。
まだ幼い娘さんが居たはずだ。
そりゃ仕方が無い、畑も有るのに男手が無い家なんて大変だ。
「ああ、そう…。おめでとう。
「夏や…。農閑期にやる。」
「そうか…。」
親父の再婚の支度金で俺の支度金は消えた様子だ…。
後、税金。
えー、僕どうするのよ?(耐えた)
「ガリル。お前はもう立派な兵隊だ。大人に成ったのだ。父はもう必要ない。お前の人生を歩むのだ。」
親父の両手が俺の方に掛かる。
「えー。」(耐えられ無かった。)
主計の建物から村長が出てきた。
「終わったぞ…。お、ガリル殿。」
村長が俺の名に殿付けるなんて明日は雨か?
「村長、お久しぶりです。」
「村長、どうでした?」
「上手く行った、言い値で払って貰えたよ。兵隊さん向けの (安)
どうやら、休暇の兵士が村で飲み食いするのでツケを清算しに主計に来たのだ。
「良かった…。蜂箱を増やせますね。」
「ああ、兵隊さんも増えたらしいからな。食料の注文も受けた、作付けを増やさないと…。今年は大変だ…。手が足りない、代官さまにも交渉に行かないと…。」
どうやら村は戦争特需の慰安所で潤っている様子だ。
なお、軍ではカフェも居酒屋も売春宿も全て名称は”慰安所”だ。
違いは軍公設の慰安所(甘味処)か民間の慰安所(屋台)程度だ。
無論、設置するには軍の許可と品質や値段の指導が入る。
「親父…。」
村長との表情を見るに…。
親父の家庭は上手く行っている様子だ。
「ガリル。すまん…。」
「ああ、良いよ。僕、もう軍人だし…。」
軍服を着ると大人判定のこの世界だ。
親父はもう既に別の家庭を持っている。
僕は軍で稼げば良いだけだ。
しかし。
僕、本当に軍隊に売られてた…。
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