第18話.軍隊にようこそ。4
顔を知らない兵が増えて駐屯地内は活気付いてる。
毎日、朝から馬の世話で忙しいが、馬の食べる量や品目、塩の量を記録している。
伍長からは、季節により飼葉の量を聞き出した。
その為、今後の越冬の為に必要な物資の表と一覧、予想を木の板に纏めてクルーガー騎兵少尉に報告した。
騎兵少尉は一読した後サインして”中隊長殿に回せ。”言われた。
無論、身形を整え、中隊長殿に報告した所。
「クルーガー少尉は何か言ったか?」
「いえ、何も。」
「そうか…。(サイン書き書き)主計課に回せ。」
えー。たらい回しかよ…。
「了解しました。あの。主計課とは…。いえ。我が軍の編成表は何処にいけば見えるのでしょうか?」
「なに?主計課の場所を知らんのか!」
「はい、申し訳ございません。」
「お前は何を…。いや、まて。そうだな…。仕方が無いか…。お前は中隊内の事しか知らんのだからな。」
激高しようとして直ぐに思い直す中隊長殿。
誰も教えてくれないからね。
編制表は以前に騎兵少尉殿に聞いたら”知らん。”と言われた。
馬房の仕事が忙しくて最近の士官は新しい顔の騎兵少尉としか会話をしていない。
「考えておく。場所は伍長にでも聞け。」
木の板を受け取り敬礼する。
「はっ!ありがとうございます。ガリル・イエーガー見習。主計課へ向かいます。」
暇そうな顔の知らない伍長を捕まえ、主計課の新しいドアの前に立つ。
「表札あるやん。」
思わず呟く。
建設中は見た事あるが稼働してから初めて入った建屋だ。
毎回、身形を整えるのが面倒なので立ち入るのを避けていた。
後で、全てのドアの表札を確認しておこう。
ノックをして返答が有ったので入室する。
「ガリル・イエーガー騎兵見習です。馬房の物資備蓄の件でご報告がございます。」
解らないので入口で叫ぶ。
並ぶ机の一人が席を立った少尉だ。
机の前まで進んで繰り返し敬礼する。
「主計課馬事担当のボリス・フォン・シュモラー 少尉だ。」
「越冬に必要な物資の備蓄を計算してまいりました。馬房からの要望でございます。」
木の板を差し出す。
一読して、いきなり怒り出す主計少尉殿。
「必要量は分かった。が、先ず書式が違う。なぜ正式な紙で出さん!?」
わーお、困った。
正式な紙が有るんだ…。
「物資欠乏の折り、前回の越冬時の代用品が余っております。防諜も考え…。いえ。初めは騎兵少尉殿に報告するメモ書き程度の要望書だったのですが。」
正直に話す。
少尉と中尉がサインしてしまったので、公式な文章に成ってしまった。
サイン文化って熟れないわー。
言い訳に呆れる主計少尉。
「コレでは何をどれだけ調達して良いか分からん。」
「はっ!未だ越冬も正式に決まっていないのは理解しております。」
「越冬は決まっている…。まあ、確かに何人越冬させるかは決まっていない。」
「はい、ですので。現状の頭数で越冬させるにはこの程度の物資が必要です。一頭分の平均数も有りますので、そのまま頭数を掛ければ出ます。」
すごく…。多いです。(飼葉の話です。)
「…お前が計算したのか?」
「はっ!馬房の消耗量を計量しております。直ぐにでも計画を立てて、少なくとも初夏から作業を始めないと間に合いません。夏が終わるまでに飼葉を収納する専用建屋が必要です。」
「それは、工兵の仕事だ。」
「はい、それも含め資材を調達せねばなりません。あと、塩の様な町で調達する物や、ココでは製造出来ない物品および道具類、釘や桶の様な物資の発注が必要です。」
桶職人は村に居ないからな。
「解った…。参考にしておく。桶は…多いな。第一中隊に作れる兵が居たはずだ。手配しておく。」
え?マジか、すげぇな桶職人居るのか…。
なんで
「ありがとうございます。」
良かった、報告は完了だ。
手から報告書が離れたら仕事完。
下がろうとする。
「おい、騎兵見習。その姿は何とかならんのか?」
隣の机の少尉が
え?なに?制服はちゃんと(毎日ではない)洗ってるし、ほつれた部分は直してるよ。
「はぁ。」
毎日、頭と顔は洗って身体は水で拭いている。
馬の匂いはしない。(鼻が馬鹿になっている。)
「頭髪も整えろ、見習の俸給は安いのは解るが。最低限の身形を整えろ。」
え?僕に俸給出てるの?
「はっ!申し訳ございません。現在、余っている被服は王国軍の鹵獲品しかないのですが。」
これ、一張羅なんだぞ。
流石に王国軍の制服を着て歩くのは…。(死体からの剥ぎ取り品)
馬房での作業服と下着は鹵獲品を使っている。
「仕立ての出来る兵を紹介しよう。解けば何とかなる。」
そりゃ凄い、この世界では何処で服売っているのか判らなかった。
「俺は被服担当のジャコモ・フォン・シャハト少尉だ、連隊の士官として恥ずかしくない姿で無いと俺が笑われるのだ。困った事が在れば相談しろ。」
「はい、ありがとうございます。」
現在、叱られている、が。解決策は教えて貰った。
「支度金は出ているのだろうから。生地を帝都から取り寄せてやっても良い。まあ、直ぐに着れなくなるのだろうが、何処に出ても良い服を最低限一着は用意しておいけ。コレは士官の義務だ。」
「了解しました。」
色々叱られる前に主計課から撤退した。
士官は身形を整える者なのか…。
こんな装備では大丈夫ではないのだ。
それより…。
支度金?
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