第23話.軍隊にようこそ。9
勝利の喜びは一瞬にして失われた。
「怪我人を下げろ!」(((カサカサカサカサ)))
「隊形を整えろ!!」(((カサカサカサカサカサカサカサカサ)))
少佐殿が命令を下しているが…。
何も準備していないので撤退するしか方法が無い…。
何か使えるものは無いのか…。
巨人はうねった街道上ゆっくりと前進している。
側面を見せた。
巨人が何かを背中に背負っている…。
起重機だ!
あの
稜線を超え、降りに掛かり
「馬車を倒せ!退路の時間を稼ぐ!」(カサカサカサカサカサカサカサカサ)
「障害物を!ロープを張れ!!」(カサカサカサカサ)
少佐殿は教本通りの撤退を指示している。
背中の荷物が重いのか、
「くそ!間に合わない!!」(カサカサカサカサ)
「メガロニクスが障害物を突破したら各自散開、拠点を目指せ!見習は何処だ!退避の笛を吹け!!」(カサカサカサカサカサカサカサカサ)
ちゃっかり、少尉殿が馬に乗っている。
荷馬車の馬を奪ったのだ。
退避の鳥笛を拭く。
汗に濡れた牧草を脱ぐ。
散開を命じられたので生きる為に斜面を降り…。
いや、登ろう、未だ手が有る。
前進した
手斧と火打石で牧草に火種を落とす。
「くそ!退避だ!下がれ!」(カサカサカサカサ)
中隊長殿の命令が聞こえる。
ミシミシと音を立てる倒れた荷馬車…。
二つに分かれたムッ久の抜け殻を
ムッ久の抜け殻に白い煙が立ち炎が起きた。
胴体に、背中の起重機に向けて投げるが、足元に落ちて白い煙を上げるムッ久。
「なるほど。煙幕か!」(カサカサカサカサ)
誰かが叫ぶ。
「おい!偽装を脱げ!」(カサカサカサカサ)
「くそ!この草の塊とはおさらばだ!!」(カサカサカサカサ)
じりじりと退避していたムッ久達が脱皮して兵が草藁を
「おい!もっと火を!!」
「松明持ってこい!」
巨人の足元に草藁の山が出来るが…。
炎の勢いは弱い。
逃げ出したムッ久が走り戻って来て脱皮している。
一旦退避したハズの馬が戻っていた。
馬が駆けると少佐殿がムッ久を投げ捨て…。
「喰らえ!」
手から火が出た…。
わースゲー…。
火吹き男(手から)を見ている様だ…。
途端に草藁が猛然と燃え始める。
「いいぞ!!」
「こんなのもうやらねぇぞ!!」(カサカサカサカサ)
「このクソ草にもう用はねぇ!」(カサカサカサカサ)
燃える炎の中の巨人に罵声を浴びせ、ムッ久の抜け殻を投げ込む友軍。
…。
妙にテンションが高い。
白い煙が壁の様に立ち昇る。
炎の中で蠢く巨人。
炎を見て喜ぶ兵隊さん達…。
そんなに
暖かいのに…。
「ざまぁ見やがれ…。」
「お、おい!」
巨人が荷馬車を破壊して突破した。
「退避!退避!!」
「おい!逃げろ!」
稲わらの灰と屑に塗れた巨人は障害物を突破。
火の粉をまき散らしながら…。
三歩進んで、横に倒れた。
やはり、エアコンついてない。
ハッチ周りから白い煙を立てるいる。
恐らく操縦席は煙に巻かれている。
素早く巨人に駆け上り。
散々操作した腹の下の開閉ハッチレバーを引く。
動作を確認して下がる、ハッチが開く間に弩弓を操作。
白い煙の中から、操縦席の女に構えるが…。
「”げほっ!げほっ!!うぇっ”」
涙目だった。
「動くな!おかしな素振りをしたら殺す。両手を上げて投降せよ。水晶に手を触れたら殺す。」
「”ゲホゲホ”」
多分、美人なお姉さんだが涙に鼻水、涎で台無しだ。
「此方の指示に従え!」
困った、聞こえない様子だ。
僕は王国語が解らないので…。
今までの事例で殺そうかどうか迷う。
「良くやった
少佐殿が馬でやって来て降りる。
ムッ久を脱いだ兵隊さんが巨人の横をすり抜けて往く。
気が付けば街道上に新たな敵が…。
王国兵が並んでいる。
「”ゲホゲホ、い、イエーガー!”」
えずく操者。
「”降伏しろ!両手を頭の上に置け。”」
剣を抜いた少佐殿の指示を受け…。
片手から火が出てる!!、
大人しく操者が従い、巨人からゆっくり降りる。
「”官姓名を名乗れ!”」
軍曹が降りた女士官の尋問を行っている。
進む帝国軍にじりじりと後退する王国軍。
「街道上の敵は一個中隊以下。」
伝令が走って来る。
「そうか!一撃で葬れるな!国境まで進んだら止まれ。国境は越えるな!!」
倒れた巨人の前から離れない少佐殿。
「見習、コレで二つ目のメガロニクス撃破章だな。」
「え?いえ。一個在れば十分ですよ。」
「お前が火を着ければメガロニクスが行動不能に成ると考えたのだ…。良く気が付いたな。」
操縦席は自然換気方式。
煙で燻されると中の人は大変なんだ。
「はい…。整備に散々付き合わされたので。王国軍の巨人の構造は解っております。」
「そうか。」
「あー、ほら。少佐殿が手から炎出した…。」
「ああ、アレか魔法だ。俺は一応魔法が使える。大した使い道は無いと思っていたんだが…。」
アレが魔法か…。
「便利ですね。巨人を倒したのですから。」
教えてくれないかな…。
「いや…。そうか。解った。コレをくれるのか?」
焦げた巨人を示す少佐殿。
「名声は連隊の物ですから。」
戦闘に参加したのでボーナスは出るハズだ。
「で?お前は何を望むのだ?」
「知識ですかね…。工兵士官に成りたいのです。」
「お前は騎兵じゃないのか?」
「騎兵は馬を持ってないと…。工兵なら将来軍を抜ける事に成っても腕だけで一生喰って行けるハズです。」
「確かに騎兵は貴族の者が多い平民には辛いかもしれんが…。軍を抜けても何処かの領民軍が常時騎兵士官の募集しているぞ。」
へー騎兵士官って食いっぱぐれないのか?
「そうなんですか?いえ…。実はどうやったら工兵士官に成れるのかも知らないんです。」
「なるほど。」
「何せこの世の事は何も知らないので…。」
転生したら猟師の息子だった…。
「解った。俺に任せろ。但し、貴様の素養が無いと士官に成れんぞ。帝国はそんなに甘くない。」
「はい、私の技能を磨き、帝国と郷土の安全の為に使います。」
少佐殿に敬礼する。
返礼で答える少佐殿…。
後日、少佐殿にメガロニクス撃破徽章が授与された。
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