第24話.軍隊にようこそ。10

街道上で鹵獲された巨人は05と名付けられた。

王国軍とは国境を挟んで睨み合いと成った。

我が隊は街道上にテントを張り、即応体制で山の中。

一個中隊が駐屯している。

地味に補給歩荷が大変だ。

その王国軍の目の前で、04が引き上げられた。

稼働する巨人05が手に入ったので工兵少尉殿と僕で…。

巨人を動かしているのだ。

無論、よちよち歩きしかできないので、動く錘として…。

同程度の重量物なので、滑車とロープで04は街道上まで引き上げられた。

王国軍の目の前で。

敵は国境の向こうで罵声を上げるだけに留まった。

相手は真っ先に軍使を送って捕虜の返還を申し込んでいる。

此方は拒んだ、今回の戦闘での新鮮な遺体の引き渡しには応じた。

どうやら、生きてる捕虜は何処か別の場所で交換するのが通例らしい。

相手と交換する捕虜が居ないのに返還する事は無いらしい。

面白い事に、先の戦闘の捕虜の中に、操者がもう一人居た。

一人は05の操者で、もう一人は04を動かす為の操者だった。

04にたどり着く前に、谷でムッ久に捕縛されたのだ。

04用の水晶の複製を所持していた。

早速04に装填したが動かない…。

工兵士官の話では初期設定動作が必要だと答えた。

やり方は製造した工房しか知らないが…。

04の操者は工兵士官が質問尋問しても答えなかった。


結局、巨人05は04を引き摺り、何とか山を越えて駐屯地外で各坐した。

足の関節が故障して歩けなくなった…。

せっかく操縦練習で普通に歩けるように成ったのに。

巨人(05)は這って橇(丸太)には乗せたので、このまま工廠に引き渡すことで了解を受けている。

工廠は04の鹵獲水晶を持ってくるそうだ。

水晶をセットしないと解らないが恐らく動くと思われる。

無事に鹵獲品と捕虜の後方への移送も終わり…。

駐屯地に新しい牧草サイロが四つ並んだ頃。


国境の配備兵から伝令が有った。



受け取った少佐殿の顔は困惑だ…。

「なに?本当か?」

「はい、軍使からの手紙を預かっております、王国語の新聞も。」

手紙が差し出される。

軍用手紙を急いで解き、内容を確認する少佐殿、急いで王国語の新聞を広げる…。

「いかがいたしましょうか?」

「いや…。未だ司令本部からの連絡は無い。奴らは何と言って居る?」

「軍使に来た少尉は、国境から軍を下げるので其方もお願いします…。と。お互いに偶発的な戦闘は止めにしてほしいそうです。」

「我々が国境を越える気が無いのは相手も解っているハズだ…。」

悩む少佐殿…。

胸のメガロニクス撃破徽章が光る。

「兵に知らせますか?」

「いや、未だだ、司令本部の返答を待て。この場での話は軍機とする。」

わけが分からなかったが士官達の様子がおかしいのは直ぐに解った。

恐らく何らかの知らせが有ったのだろう…。

数日でその理由は解った。

国境付近の兵が帰還して、少佐自らの兵の臨検が行われた。

「諸君、現在、我が帝国ライヒとフルードゥ王国と戦闘は終結し、王国とは停戦協定が結ばれた。」

整列した兵の前で少佐殿が宣言する。

「「「イ、イェーィ!!」」勝ったんですかぃ!!」

驚き、少し遅れて意味を理解し、喜ぶ兵士達。

えー戦争終わり…。

「残念だが、只の停戦だ。コレからの戦闘は軍から手を離れ、政治家と外交官に引き継げられる。未だ警戒態勢は維持されるが…。この駐屯地は領民軍に移管される。諸君!喜べ家に帰れるぞ!!」

「「「ヤッター!!」い、家に帰れる!」坊主の顔が見れるぜ!!」

喜ぶ兵士達…。

そうだね、兵士は家族が居るんだ…。


駐屯地内の兵達、士官達の会話は明るい。

「帝都に戻ったら…。」

「帰ったらどうするか?」

そんな話題が多い。

手紙を書く兵士も多く見受けれる。

ホフマン中尉は受け取った手紙の中に人事部の物が有ったそうだ。

内容は昇進と退役の日付だった。

「ハハハハハハ、帝都に戻れば私も退役だな…。最後に勝利で終わったのは良い事だ…。」

上機嫌の中隊長殿。

「おめでとうございます、大尉殿。」

「ああ、ありがとう。見習。俺の退役の日は春だ、ソレ迄は現役で大尉だ…。」

「このまま本隊は越冬するのでしょうか?」

「いや…。未だ決まっていない、司令部の指示待ちだ。例え越冬しても恐らく越冬隊の数は減らされるだろう。」

「私は、越冬を志願したいのですが…。」

「士官学校へ進まないのか?」

「何か、未だ軍歴が足りないそうです。先ずは下士官に成らないと工兵の学校へ行けないそうなので。」

「うむ…。そうだな…。確かに。基本徴兵期間が足りないな。先ずは候補生学校へ行き工兵科へ行け…。」

「候補生学校?」

「そうだ、戦時昇進の士官が通う学校だ。在学中は軍籍もある。卒業すれば少尉だな。書類は…。連隊長殿の推薦が有れば問題ないだろう。私からもお願いしておこう。」

上機嫌のホフマン大尉。

なるほど…少尉の壁は厚いな。

「はい、ありがとうございます。」

「俺が…。大尉か。まさか成れるとは…。退役すれば特進で最低でも少佐…。無理して軍大学へ進んでおいて良かったぞ。」

中隊内の兵も昇進と退役の話で持ち切りだ。

冬への備えは進んでいるが…。

皆、何処か浮かれている。

ある日、連隊長殿に呼ばれて連隊司令部に行くと。

士官が揃っていた、ホフマン大尉も居る。

クルーガー少尉もだ。

「ガリル・イエーガー騎兵見習は戦時昇進して。准尉となる。」

「はっ!ありがとうございます。」

昇進に関する書類を受け取る。

連隊長殿のサイン入りだ。

ホフマン大尉が述べる。

「待遇は伍長だが、戦時は准尉の階級章を付ける事。」

准尉って偉いのか?

待遇は相変わらず変わらないので解らない。

でも戦時ってもう戦争終わったよね?

「我が第三軍での久し振りの騎兵准尉ですな…。」

名前の知らない大尉が…。確か歩兵大尉だ。

「戦時准尉も珍しいですね。」

クルーガー少尉が指摘する。

「無い訳ではない。」

指摘されて、ちょっと機嫌の悪そうな連隊長殿…。

ああ、手柄撃破徽章を譲った事に対する少佐殿成りのお礼なのだろう。

ホフマン大尉が助け船を出す。

「見習の働きを見ればそろそろでしょうか?」

空気を詠んだ士官達司令部内が日和った。

「”連隊の子供”は昨今聞かないからな…。」

3号生学生しか居ませんからね。」

「イエーガー戦時准尉は第三軍の士官として相応しい立ち振る舞いを覚える事。」

ホフマン大尉が絞めて終わる。

クルーガー少尉と敬礼して連隊司令部を下がる。

馬房に下がる途中、クルーガー騎兵少尉が尋ねた。

「イエーガー准尉…。上手くやったな?」

「いえ…。コレは上手く行ったと言えるのでしょうか?」

俺未だ馬にもまともに乗れないのに…。

少し悩んだ末、命令を下すクルーガー騎兵少尉。

「うん…。そうだな…。まあ良いだろう。暇つぶしだ、明日から俺の剣と馬の訓練に参加する事。」

「はい、了解しました!」

え?剣?

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