第13話.戦場にようこそ。10

第一報の報告の為に単独で本隊へ帰還した。

士官宿舎の中尉殿に伝令を伝えると…。

指揮官室の中は勝利の歓声と、後始末の作業量で頭を抱える工兵少尉で混沌としていた。

「では、メガロニクスは最低2機鹵獲したのだな?」

興奮を押し殺し怖い顔で念を押す、中尉殿。

「はい、他、2機は雪崩で谷に落ちた為に雪の中で不明です。」

「中尉殿、コレは掘り出す必要があります。」「銅褒章…。いや、銀褒章ものだぞ。」

鼻息、荒い士官達。

「どうやって、持って帰る?メガロニクスで山越えはできないぞ。」

「その前に操者が居ません。」

工兵少尉が答える。

「操者の手配は付けよう。だが、二、三か月は掛かる。」

思わず答える。

「その頃には、雪が溶けて全部、沼に沈みますね。」

頷く工兵少尉。

中尉殿考えて答える。

「分解して持ってこれないのか?」

「大まかには分解が出来ます…。しかし、可成りの人員が必要です。」

工兵少尉が答える。

駐屯地ココで復元できるか?」

「手、足、胴程度に分解するなら…。あまり、細かく分解すると、復元が難しくなります。」

「敵の工兵装備も鹵獲したのだろう?」

「なら、メガロニクスに馬車20も加わり山越えですな。」

軍はメガロニクスの鹵獲に固執している…。

やはり高額なのだろうか?

「あの、捕虜が数名は居るのですが…。」

「ああ、心配するな。兵舎は余っている…。」

倉庫に成っている夏用の兵舎を使う心算らしい…、まだ寒いのに。

「檻ぐらいは直ぐに作れる。」

同意を求める中尉殿に求められた工兵少尉は微妙な顔で答えた。

「資材が在れば。」

「敵の施設には幾つか起重機が在りました。伐採道具も有るはずです。」

「そうだな…。ソレを利用しよう。」

「簡単に言うが…。使えるかどうか解らんぞ。」

「何方にしても…。現地に行ってみないと解りません。」

日没までに攻撃隊の第一陣が戻って来た。

天候悪化も在って雪まみれだ。

重傷者は少数で担架で運ばれた、意識はあるので治るのだろう。

他は軽症で自力で歩ける怪我人が殆どだ。

あと、捕虜が20人程度居た、内、女は2人だ。

軍医殿が怪我人の治療に当たっている…。捕虜も。

捕虜の様態は殆どが低体温症の様子で、サウナに収容されている。

交戦時の兵ではなく、後から掘り出した方の兵士が多い様子だ。

『殺してやるー。』

一人元気に暴れる女性の兵士…。20代の中程だ。

もう一人は低体温症で顔色が白い。

双方、毛布で簀巻きにされて拘束されたままサウナに収容された。

「女の兵士も居るんですね。」

帝国軍では見たことが無いので驚く。

「ああ、メガロニクスの操者は女が多い…。士官で、敵も味方も殆ど女だな。」

苦々しい顔で答える工兵少尉…。

「え?」

そんな事、教本には書いて無かった。

「メガロニクスの操縦は煩雑な工程の繰り返しだ、機織り機の要領だな、古来から女の操者が適している。」

「そうなんですか?」

驚きの連続だ。

「元々、メガロニクスを作ったのは魔女で、腕力が無くて薪割が面倒だから作ったゴーレムが元だ。昔話だぞ?聞いて無いのか。」

「知りませんでした…。」

その魔女は何で普通に薪割機を作らなかったんだ?

「うーん、動員伍長は何も知らないで…。対メガロニクス戦闘を組み立てたのか…。」

呆れる工兵少尉殿。

「教…。外見から特定しました。巨人は面白そうですね。」

教本の話をすると怒られそうだ。

「ココまで運び込んだら、乗ってみるか?恐らく復元したら試運転が必要だ。」

「よろしいのですか?」

「山から運び出す必要がある。俺は操縦出来ないが…。工廠で基本動作の研修は受けた。教えてやろう。」

「ありがとうございます!」

喜ぶ僕の肩を優しく軽くたたく工兵少尉殿。

「だから運び出す方法を一緒に考えてくれ。」

「えっ!」

苦笑いの後に溜息を付いて工兵少尉が立ち去った。

巨人を山の中から運び出す…。

「アレを運び出すのか…。」

できらぁ!

イヤ無理だ。

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