第33話.士官学校へようこそ。5
翌日、
「ああ、コレなら教材にメガロニクスの模型が在ります…。ガワだけですが、関節は新たに製作する必要があります。使えるハズです。」
ぞろぞろと工兵見習い共が集まってくる。
「操縦席のお飾りは以前、倉庫で見ました。水晶の有無は不明です。」
「水晶は…。大きな物は無理ですが加工室にくずが転がってます。」
「なんだ?何の話だ?面白そうだな。」
三年生も集まってきた。
「作れそうか?」
見渡す生徒達の目色で熱意が解る。
工兵を目指す少年は元々漫然な”物作りが好き”という気持ちを。
軍の呼びかけにより、ただ闇雲に色々な技能と知識を身に着ける為に志願する。
在野の職人は専門性が高く、狭い範囲で何年も繰り返し安定した高度な技能を要求される。
工兵は広く浅く、出来栄えと品質が保証されるのなら何をしてもよい。
どんな方法でも結果が出ればよい。
色々な方法で取り合えずでっち上げる能力。
拘ってもよい、結果が時間までに出来れば…出来なければ無理矢理だ。
正式品は不可能だが所詮、教材の員数外装備、問題が起きるまでは使える。
部材さえ揃えば予算内なら自由に遊べる。
作って遊ぶのは問題ない。
無駄な労力でも知識と経験を蓄える。
つまり、
「見栄えを気にしなければ…。後は材料ですね。」
「メガロニクスの模型は合っても…。関節の紋章が小さくて自重で動きませんよ?」
「動けば良い。最悪、上からロープで吊り下げて…。操り人形だ。操作感覚が大差なければ良い。」
「それならできると思います。」
「滑車の先に重りを付けて釣り合いを取れば…。」
いや、応力に追従できない。
ロボットの手足が動けば速度と遠心応力で重心が変わる。
ソレに追従できないから転倒するのだ。
「いや、恐らく重心の変化を実際の巨人と同じにしないと意味がない。」
複雑な形の質量中心の求め方だ。
応力質量計算も係る。
コレを安価な
「はあ?」
工兵見習い達は理解できないようだ。
前世での話なので簡単に纏める。
「恐らく、彼女達は糸を紡ぐ指先で…巨人を動かしている。すべての感覚を使って操作している。」
この世界では女のカンで全て済ましている。
あの冬山で全ての操作を失った女は叫んでいた。
あの言葉は今でも思い出せる。
何言ってるのかは知らないが。
「でも、あのいけ好かない女共の為に作るのは…。」
やはり、お嬢さん方の態度でヘイトが溜まっている様子だ。
「おいおい、完成してしまえば俺達が別に使っても良いんだぞ?」
微調整までは工兵の仕事だ。
その為、工兵は
つまり、工兵の実習道具で言い張れる。
「面白そうだな…。専門教官に申請しよう。教材の制作だと言えば何とかなるだろう。」
ポンチ絵から材料が集まり始め…。
既存の資材を使うので採寸から始まり。
分担して製図を行う。
色々とアイデアを出しあう下士官候補生達。
多少の混乱は在ったが…。
丸太の組まれた下に人の背丈より小さな
ロープは張られ滑車に支えられた丸太の下、関節が弛緩した小さな巨人の模型。
動作試験は散々行った。
工兵見習い達も操縦は面白がっていたからな。
工兵課程のメガロニクス操縦教官は士官学校と共通なので。
今までも操作上の問題点の洗い出し等で相談していた。
完成した小さな
「おもちゃみたいね…。」
早速、操者席に座ってもらう。
座席の感覚を確かめ水晶に触れる指導教官。
途端に動作モニター席の水晶が光りだす。
「起動確認!」「稼働開始!」
モニター席に着く少年工兵達が状況報告を上げる。
「了解!稼働準備!」
この小さな巨人を動かすには数人の生徒が必要だ。
あぶれた生徒達が動作中の水晶をのぞき込む。
操縦に座った教官は数歩、歩いて止めた。
「悪くないわ。」
「「「イェーイ!!」」」
教官の許可に喜ぶ下士官候補生達。
「使えそうですか。」
直ぐ隣の動作モニター席で教官に尋ねる。
今の一連の動き、各関節への魔力の動きは木板に墨で記録された。
「そうね…。歩く感覚は同じね。走っても良いけど…。揺れないから地面の感覚が解らないの、正直。気持ち悪いわ。」
多分、操縦者は音や
「工兵の訓練や操縦者の初期訓練程度なら問題無いでしょうか?」
「…。初期の背床操作過程…。程度から歩行訓練までなら有効かしら?」
意外と短いな。
メガロニクス初期過程は仰向けに寝た状態から手足の関節を動かし、起き上がるまでが初期の合格過程らしい。
それ位までは工兵生徒も行う。
つまり完全に工兵の教材だ。
木板の記録が終わり押し出される。
落ちた木版に各部の関節の動きの全記録が記載されている。
コレを読むのはパンチカードの紙テープを読み取る技能が必要だ…。
将に異世界のスキルだ。
解っていないのに”ほう、コレは…。”と呟けば、大佐辺りが適当な命令を下すだろう…。
(´・ω・`)これは…?(わかってない)
(#◎皿◎´)なんだと!(わかってない)
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