第27話.帝都にようこそ。2
帝都に着いてからは目の回る様な忙しさだった。
覚える事が多すぎる。
日常業務で追い立てられる様な日々だ。
理由は解っている。
「来週は皇帝陛下との軍団謁見ある!各員、身成を整えろ。」
様は第三軍が宮廷の庭で並んで前を皇帝陛下が歩くだけだ。
普段から兵の臨検は行っているが、晴れの舞台なので特に念入りに…。
騎兵服は何着か兵に作ってもらったので一番Eヤツを用意してある。
何故か緑色で元が王国軍士官服だ。
騎兵は赤や黄色が好きなので妙と言えば妙だが。
紫や黒の騎兵もちらほら居るので特に問題ない。
(後で知ったが軍団によって色が決まっている場合もあるそうだ。)
迷彩と言う考え方が無いので目立つ方が良いらしい。
騎兵靴(帝都で買った)も届いて、準備が整うと。
当日はのんびりした物だった。
日が高くなって帝都の大通りを行進。
沿道は見物客で一杯だ。
旗を持つクルーガー騎兵少尉の馬の後に着いてゆっくり進む。
ご婦人の黄色い声援に笑顔で答えるクルーガー騎兵少尉…。
堀に掛かった橋を渡り、城の門を潜ると。
白い石畳の横に横隊で整列させる。
馬は最前列で皆、ピカピカの軍服だ。
クルーガー騎兵少尉の後ろに並ぶ。
後は黙って通過するのを待てば良い。
通過すれば終わり。
剣の
その手筈だ。
「皇帝陛下の御なりー!」
「右向け!右!」
一斉に兵が動く。
宮廷の玄関先で軍団長が皇帝陛下と何かを話している。
最後尾に近いので何を話しているか不明だ。(拡声器が無い為。)
恐らく戦果の報告だろう。
「左向けー左!」
方向を変えると。
城兵により石畳に赤絨毯が敷かれる。
その先に金ぴかな馬車が来て止まった。
16頭引きの大きな馬車だ。
帝国の紋章が入って居る。
号令で捧げ刃が掛かる。
剣を抜き正面に自分の顔が映る。
馬車に向かってゆっくりと赤絨毯を進む皇帝陛下…。
始めて見たが、白髪交じりの髭で杖を付いて居る。
60後半位だろうか…。
結構歳に見えるが、昔は体格が良かったのだろう。
一歩、後ろには軍服姿の将軍の階級章と色々な勲章をぶら下げたガッチリした体格の男…。
その後ろに軍団長と連隊長が最後だ。
将軍の歩き方が騎兵だ。
顔を動かさず正面上を見て騎兵式敬礼で通過するのを待つ。
目の前を通過する…。
後は肩口に剣を戻せばよい。
タイミングを計る。
いきなり歩みを止める、皇帝陛下。
クルーガー騎兵少尉も困惑気味だ。
じっと騎兵を見る皇帝陛下。
何時、剣を戻せばいいのだ?
「はて、子供がおるな…。」
立ち止まり呟く皇帝陛下…。
「そうですな。父上。騎兵では珍しくもありません。」
将軍が答える。
ああ、話の在った皇太子殿下か。
「いや…。それは昔の話だ、騎兵服に着せられておる。」
やべ!新品は大きなサイズしかなかったのを見咎められている!
「恐れながらガリル・イエーガー戦時准尉でございます。連隊の子です。」
連隊長が師団長の
「ほお…。昨今珍しいな。」
「はい、ガリル戦時准尉、名乗れ。」
連隊長から催促される。
どうすりゃいいのよ。
「はっ!ガリル・イエーガー戦時准尉であります!」
手綱を片手に剣の背を肩口に充て斜め上を見る。
「なるほど…。その歳で剣を持っておるのか。」
馬上では見下ろす形になるので、視線を合わせない。
これでも一応は最敬礼だ。
「はい、王国製の鹵獲品であります。戦利品であります。」
「うむ…。それは勇猛だ。良く努めなさい。」
「はい!了解しました。」
そのまま歩き出す皇帝陛下。
「おまえも騎兵に成った時の姿を思い出したぞ…。」
皇太子殿下に語り掛ける皇帝。
「私はあのような、ふてぶてしい小僧ではありませんでした。」
気分を害した顔になる。
「ふはははははは、いや…。そうだったかな。」
進む。
話は聞こえなくなり。
軍団長が僕を睨むが連隊長は安堵の顔だ。
馬車に乗り込む皇帝陛下と皇太子殿下。
軍団長と連隊長が敬礼で出発する馬車を見送る。
そのまま、軍団長訓示が行われ。
戦時編制解除が宣言された。
僕は戦時准尉では無くなった。
正式には伍長待遇の騎兵見習で軍籍は第三軍:戦時准尉。
階級章はそのままで良いそうだ。
なんとも中途半端な存在である。
まあ良い。それよりも…。
学校だ!!
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