⑦這い寄る混沌
「つまり、加藤はニャルラトテップによって、この世界をメチャクチャにするために呼ばれたってことか!」
泰彦の素っ頓狂な声が響いた。
事体はそんなことではとどまらないだろう。しかし、その事体をまるで呑み込めないでいる者がいた。
「いや、何もわからないんだが。その、ニャーニャーニャーって何よ?
勝手な用語出して、話し進めるのはやめろ」
信介だ。信介には初めて聞く言葉ばかりで、ただ混乱するばかりだった。
実隆と泰彦は顔を見合わせる。そして、頷き合った。信介を説得せずに先に物事を進めるのは難しい。
「いろいろあってなあ。何から説明するべきか」
実隆が嘆息すると、泰彦が嬉々として話し始めた。
「ニャルラトテップ。這い寄る混沌。
クトゥルーは知ってるでしょ。あれらは
そう言いながら、泰彦自身が恐れを抱き始めたように見える。その顔色は見る見るうちに青ざめていった。
「普通、外なる神が人間なんかに関わることはないんだ。存在としてのスケールが違い過ぎるから。人間がプランクトンだとかウィルスだとかを認識しないのと同じだよ。
けど、ニャルラトテップは違う。顕微鏡を駆使した技師みたいなもんで、人間や有象無象の知的生物に接触し、直接、間接問わずに破滅へと追い込んでいく。だから、関わるのが最も危険な邪神といわれているんだ」
泰彦が一息に喋り切った。それに対し、信介が疑問を呈する。
「で、そいつの作った世界から加藤が派遣されてきたっていうのか? うーん、俺には加藤が悪いやつとは思えんけどな」
信介の言葉は重い。加藤に対しての判断は軽い気持ちで口にしたものではないだろう。これまでの彼の言葉や行動をしっかりと観察し、その上で言葉にしたのだ。そのことは泰彦も実隆も重々承知していた。
「いや、それがニャルラトテップの恐ろしいところで、悪意のない人間だろうと、破滅へと続く道筋を構成する一人にされてしまうんだ。なんなら、核兵器もニャルラトテップによって
ここで、実隆が口を挟んだ。
「あのさ、言っときたいことがあって、俺にはもう一つ意識がある。それがさっき喋ってたろ? なんか、変なこと始めてやしないかな」
確かに、実隆のものとは思えない発言があった。
恐怖を体現するだとか加藤を殺すだとか不穏当な発言をしている。
実隆の指摘に反応したのは加藤だった。
その肉体はまた変貌を遂げていた。腕が鞭のようにしなり、全身に風のようなものを纏っている。戦闘態勢に移っていた。
「それなら、大量に来てるよ。アケルケイラだっけ? イスの大いなる種族の生体兵器。あんなに多いと、正直不利かなって思ってる」
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