④太古の邪神
加藤は呼吸を整えると、ぽつりぽつりと話し始めた。
先ほどまで、死闘を演じていたらしいが、信介にはそのこと自体が今一つピンときていない。対戦者が、姿が見えないどころか、認識すらできない相手だったからだ。
「
そんなけったいな姿をしていたのか。信介はそう思うが、そんな怪物が暴れていたのだとはいまだ実感できない。
「そんな奴がいたのか。全然わからない。でも、加藤はそんな奴が見えたのか?」
信介は何の気なしに言った。
第六感だとしたら視力とはまた違う感覚であるはず。そんなことは意識していないが、なんとなく違和感があったのかもしれない。
「見えているよ。ただ、確かに目で見ているのとは違うかも。なんていうかな、姿が頭の中に直接浮かんでくるんだ。それが、カエルみたいな姿だったりするんだよ。
第六感が何かって全然よくわかってなかったんだ。これ、子供の時から自然に見えているからさ。でも、信ちゃんの反応を見て、これが第六感だってわかったんだ」
加藤がそんなことを言う。信介はそんなものなのかと思うほかない。
「でもさ、あそこにあった木、俺が垂れ下がってたあの木が消えたのはわかったんだよね。
俺はみんな、あれが見えていると思ってたからずっとスルーしてたんだけど、そんな反応した人いなかったんだよ。でも、信介は消えたのがわかった。信介は信介で、なんか変なんじゃない?」
加藤から突き付けられ、信介は言葉に詰まる。
信介に尋常じゃないものがあるとしたら、かつて房総の山域で自分に入ってきた
あるいは、幾度か接触した
いや、そんなことはない。
信介はその因縁を断ち切るように、加藤の言葉を否定する。
「俺はいたって普通だ。たまたまだろう。
そんなことよりも、加藤。聞いてもいいか、お前の肉体はどうなっているんだ? あの見えない奴の仕業でああなったのか?」
今度は加藤が言葉に詰まる。
「うーん、あれは元からというか……」
加藤は言葉を澱ませるが、そこに第三者の声が遮った。
「それは加藤、お前が邪神の眷属だからじゃないか」
それは超時間の監視者によって身体を乗っ取られたはずの
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