②電話が鳴る
実隆の連絡先は公開されている。
山岳部の部長となった時、山岳部のサイトが更新され、直接の連絡先も載せることになった。いたずらのような書き込みが届くこともあれば、営業のような連絡、悪質な業者からのものも来る。しかし、それでも公開するに足るだけの実利もあった。
その加藤という高校生と連絡が通じたこともその一つのはずだった。
SNS上で少しの間、やり取りをしたのち、加藤には電話番号を伝える。直接電話で話した方が話が速そうだったし、その方が加藤も安心するだろう。そんな判断だった。
そして、電話が鳴る。
「はい、
電話を応答させると、少年の声が聞こえた。
「あ、あの、加藤です。電話番号教えてもらった……。え、えと、登山のサークルがあるって知って……」
少年らしい高い声だ。実隆も高い声だと言われるが、実隆のような甲高さはあまりなく、ふんわりとした柔らかい印象を受ける。
たどたどしい言葉が続いた。緊張しているのだろう。
年長者として導いてやらねばならんな。そう思いつつ、部活動のことや手続きのことなどを事細かに話す。相手が詰まっているとみると、丁寧に話しなおした。
そんな中、電話が鳴る。
「ちょっと待ってくれ。別の電話がかかってきた」
そう言って電話を保留にしたが、実隆は焦っていた。
おかしい。実隆の部屋に電話は一台しかない。だというのに、一体、どこで電話が鳴っているのだろうか。
電話に出る。どの電話に出たのか、自分でもわからない。だが、電話に出たという実感だけはあった。
金属がキンキンとかち合うような奇怪な音声が響く。それは言語かどうかも怪しいものだったが、なぜか言葉の意味が理解できた。
――聞こえるか。聞こえているな。
加藤と接触したか。その男は危険だ。相手は我々が行う。
その言葉を聞き、実隆はむっとした。
藪から棒に言うことを聞かせようとする態度が気に入らない。
「誰ですか? 一体、何を言っているんです?」
その神経質そうな口調がより鋭くなった。しかし、それに対して、キンキンとした音声は言葉を返してくるが、実隆の意向などどうでもいいとばかりの物言いである。
――我々は偉大なる種族。地球上に存在する、そして、存在した知性体の頂点に立つもの。疑問があるなら、後でいくらでも聞こう。まずは、その場所をどいてもらう。
次の瞬間、実隆は自分の意識がどこか遠くへ引っ張られていくような感覚を味わっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます