⑦パーティ加入

 物凄い剣幕でまくし立てる信介の言葉を、実隆は顔色一つ変えずに受け流す。


「ああ、言ってなかったか。それはすまん。

 だけどさ、俺たちが行くことで助けられる命があるんだよ。それを見過ごすわけにはいかんだろ」


 実隆はさらりと言ってのける。一呼吸置いてズレた眼鏡を直すような仕草をすると、その眼鏡がキランと光るようだった。

 彼の物言いに信介も言葉をぐぬぬと詰まらせる。信介とて助けられるものを見捨てることが本意であるはずがない。


「ちっ、その話は本当なんだろうな。それに、助けることを目的とするのはいいが、あくまで優先は俺たちの命だ。撤退の判断は俺にさせてもらうからな」


 苦々し気に吐き捨てた信介を横目にして、実隆は泰彦に語り掛けた。


「それで、加藤はどうなの? 何か特殊な能力がありそう?」


 その質問に、「うーん」と泰彦は頭を悩ませたように唸り、やがて返事をする。


「俺が人間じゃなくなったことに、すぐ気づいたよ。人間とは異なる感覚があるらしい。視覚や聴覚ともまた違う感覚みたいだから、おそらく人間にはない第六感のようなものと思う。

 第六感があるということは加藤もまた人間じゃない。けど、そこまで人間離れしてるわけじゃない」


 そして、一呼吸を置く。


「やっぱり、前に話した通り、魔人なのだと思う」


 泰彦と実隆は意味ありげにアイコンタクトを取った。そして、実隆はさも予想通りというように頷く。


「そうか。だとすると、あの得体の知れない怪物たちのどれかと混ざり合った存在ということに……」


 何かを考え込みつつ、得心するような表情だ。

 これは加藤にとって遺憾だった。


「ちょっと待ってください。勝手に決めないで。俺は魔人なんかじゃ……」


 しかし、その言葉は実隆によって制止された。


「まあ、別に結論を急いじゃいないさ。これから、しばらく一緒にいるんだ。そのうちにわかってくることもあるだろう。

 そんなことより、とっとと出発しようぜ」


 そういうと、実隆は駅の外に出るよう三人を促す。


「おい、お前が遅れてなきゃ、もっと早く先へ行ってるんだよ」


 信介が文句を漏らすが、泰彦はニコニコした笑顔のまま、実隆についていった。

 加藤もまた、その歩みを進めることにする。


 四人組の山岳隊パーティに加わることになった。目的地は裏高尾だと聞いている。ピクニック感覚の山行だと思っていた。

 しかし、そんな甘い道行ではないことは、加藤も薄々と感じ始めている。

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